2019年5月29日に開催された「de:code 2019」で、Microsoft Research Asiaの副所長である周明氏がAIと自然言語処理の最新動向を語った。
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社会のさまざまな領域で注目を集めている「AI(人工知能)」に関する技術。多くのITベンダーが今後の重点分野としてAIの研究開発に注力しているが、Microsoftはトップグループを走る企業の一つだろう。
2019年5月29日に開催された「de:code 2019」のブレークアウトセッションで、Microsoft Research Asia(MSRA)の副所長である周明(Ming Zhou)氏が「マイクロソフト リサーチのAI/自然言語処理研究 最前線」と題し、同社のAI研究に関する動向と、特に近年、急速に発展している「自然言語処理」の最新の知見を紹介した。
MSRAが北京で開設したのは1998年。周氏によれば、同社は「現在、米国外では最大級の研究開発組織となっている」という。現在MSRAでは、大きく分けて以下の6つのテーマに取り組んでいる。
各テーマの研究成果は、既にMicrosoftの製品やサービスの一部に取り込まれたり、企業の業務やサービスの改善に活用されたりしている。
MSRAは研究活動の中で、アウトリーチプログラムを活発に行っている。主にアジア地域の大学と共同で多数のプロジェクトを実施している他、各地から研究インターンシップを受け入れており、その数は現在6000人以上、卒業生は7000人を超えているという。また、大学プログラムのスポンサードや共同研究にも積極的で、日本においては、共同研究プロジェクト「CORE」を展開している。
周氏は、AI分野での成果として、2016年に画像認識分野のコンペティションで最高性能を記録した「ResNet(Deep Residual Net)」の開発や、「Stanford Question Answering Dataset(SQuAD)」で高成績を出した文章読解技術を挙げた。特に機械翻訳やOCR(光学文字認識)でのエラーリダクションといった分野において、「MSRAは世界最高水準の成果を生みだしてきた」(周氏)とする。
MSRAが開発したAIは、既に一部の機能が一般ユーザー向けにリリースされている。スマートフォン用翻訳アプリ「Microsoft Translator」もその一つだ。また、カメラアプリの「Microsoft Pix」には、撮影した写真をさまざまなタッチの絵画調に変換できるレタッチ機能が搭載されている。これは画家が描いた絵を学習して作ったモデルを、実際の写真と合成する「Style Transfer」という画像処理技術の応用例だという。
周氏は、ここ数年にわたって「de:code」のオープニングで何らかのパフォーマンスを見せてくれる「りんな」にも言及した。りんなもMSRAの開発する、さまざまな情報を総合的に解釈して自然なリアクションや会話を行う対話型AIフレームワーク「XiaoIce Framework」から作られた「ファミリー」の一つとのこと。
企業が自社のビジネスにAIを導入する例も増えてきている。周氏は、香港に本拠を置く海運会社「Orient Ocean Container Line(OOCL)」との共同開発を例として挙げた。海運ロジスティクスの分野にディープラーニングAIを適用し、運送コストの削減を目指している。また、グローバルで教育事業を行う「Pearson」による英語学習アプリ「Longman Xiaoying」に、MSRAによる言語処理の知見が取り込まれているという。
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