社員が使うロボットは、社員が作れ――三井住友海上が7カ月でRPAチームを育成できた理由【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(1/3 ページ)

RPAの難しさは、導入後にやってくる。その1つが、現場でロボットを開発、運用管理する体制作りだ。RPAの全社展開を目指す三井住友海上は、開発未経験の社員を集め、約半年でRPA専門チームを育成した。その方法とは。

» 2019年08月27日 07時00分 公開
[高木理紗ITmedia]

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 現場の業務負担を減らそうと、RPAを導入する組織や企業が増えた。確かにRPAには、定型業務を自動化し、労働時間を年間で数百時間削減――といった、分かりやすい効果を得られるメリットがある。ただし、いったん導入すれば、その後の運用管理や改修、トラブル対応、ロボットの継続的な開発など、社内に発生する“新たなRPA業務”をこなす人材が必要だ。

 一体、誰がそれをやるのか。ソフトウェアロボットの動作やプログラミング、現場の業務知識、ユーザーとのコミュニケーションなど、ある意味コンサルタントに近いスキルを持った社員を見つけるのは一苦労だ。実際、RPAを導入した組織の中には、これらの業務をベンダーやSIerなどに任せる例もある。

 しかし、あえてRPA未経験の社員を集め、専門チームとして育成した企業がある。三井住友海上火災保険(以下、三井住友海上)だ。同社は、RPAという用語が広く知られる前から、VBAやマクロなどを使って業務自動化に取り組んできた。同社は実際にどうやってRPAチームを育てたのか。今回、現場で活躍するデジタル戦略部 業務プロセス改革チームの倉本亜矢子さん、谷口真代さん、徳永加奈子さんの3人にお話を聞いた。

三井住友海上のWebサイト。顧客とのやりとりで社員が活躍する一方、ロボットもじわじわと活用の幅を広げている。

「社員が使うロボットは、社員が手掛けてこそ良いものができる」

 倉本さん、谷口さん、徳永さんの3人は、外部企業のソフトウェアエンジニアと協力し、現場からのヒアリングや、自動化する業務に合わせた要件定義、ロボット開発、動作検証、リリースなどを行う。また、ロボット開発、運用のガイドラインや、現場に向けたロボット利用マニュアルの策定をはじめ、ロボットの定期的なメンテナンスやトラブルが起こった際の改修も担当する。

 とはいえ、2018年4月にチームが発足した当時、3人にはRPA開発の経験がなかった。「ロボットが動作する画面を初めて見て、何がどう動いているのか分からず、面白さを感じる一方で『どうしよう』という気持ちもありました」と、倉本さんは語る。

チーム加入前は企業向けの営業を担当していたという倉本さん。現在、ロボット開発と並行して運用や開発向けのガイドライン策定にも取り組む。

 未経験の社員を、なぜRPA開発要員に育てることになったのか。同社はもともと、営業の第一線で活躍する社員の業務を中心に自動化していたが、現在は本社の経理部門や損害サポート部門などに向けてもRPA導入を進めている。外部から派遣されたソフトウェアエンジニアの力も借りる一方、「自分たちで使うロボットは、自分たちで要件を決めて作った方が、良いものができる」という信念があった。外部に任せるよりも、実際に現場の業務を理解している社員が開発した方が、要件などについて認識のずれが起こりにくいという。

 そこで、同社は「PCを一通り使え、機械やソフトウェアの操作に抵抗がない社員」を探した。結果として、営業部門で「Microsoft Excel(以下、Excel)」を使いこなし、同僚に教えていた倉本さんと徳永さん、本社部門でVBAを扱い、社内システムの主管部署として開発に参画した経験があった谷口さんの3人が抜てきされた。

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