アフターコロナ時代に求められる「システムの脱・3密」 IT部門の新しい在り方とはサイボウズの情シス部長が考える

COVID-19による全社テレワーク体験は「当たり前」だった業務に改善の余地があるという気付きにつながった。企業活動はマンパワーを前提とした昭和モデルからリモート主体の新しい働き方へと変化するだろう。今後IT部門に求められるものは何か。

» 2020年08月06日 10時00分 公開
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シリーズ:「攻め」だけが正解ではなかった! 「強い企業IT基盤の実現」とは何か

デジタルトランスフォーメーションへの取り組みが急務となり、企業は変化に対して俊敏に追従できる「強い企業IT基盤」を求めている。しかしツールを導入しただけで成功につながるわけではない。試行錯誤を繰り返したい事業部門と、既存システムとの整合性やセキュリティを確保したいIT部門の対立を吸収する仕掛けが必要だ。DX時代のIT部門に求められる基本戦略を読み解いていこう。

 2020年春、全世界の脅威となった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。国内でも2020年4月7日に緊急事態宣言が出され、ほとんどの企業が従業員や顧客をCOVID-19から守るためにテレワーク(在宅勤務)に移行せざるを得なかった。

 この数年、働き方改革の一環としてテレワークは普及の兆しを見せていた。先行して取り組んでいた企業は積極的に全面的な在宅勤務に踏み切ったものの、これまでと異なる環境での業務においてさまざまな課題に直面した。テレワーク移行のためのツールやシステムの整備という突然現れた大きな仕事によってIT部門のリソースが不足してしまった企業も少なくないだろう。

 COVID-19の一刻も早い収束を願うのは言うまでもない。しかし、COVID-19は日本人の働き方に対する価値観に一石を投じたことも事実だ。これを改革の契機と捉え、より生産性の高い働き方へのシフトが加速する可能性がある。

 言い換えれば、昭和の時代から続いてきた「従業員が会社という場に集まり、対面によるコミュニケーションを介しながら、マンパワーを集約して業務を遂行する」という在り方から脱却するチャンスだ。「アフターコロナ」あるいは「新しい生活様式」における企業活動には、これまで以上にITの力が必要になり、同時にIT部門にも新しい在り方が求められるだろう。

全社テレワークの緊急導入、いつまでも「マンパワー依存」では破綻する

 「COVID-19対応も含め、何かを改善するために新しいツールやシステムを導入したいという意見は、一般的にはIT部門に寄せられます。しかし『情シス』と呼ばれる人たちが多くいるわけでもないので、どうしても優先順位付けが必要になります。優先度が低いものは置き去りにされ、事業部門の不満につながってしまうかもしれません」

 このように分析するのは、サイボウズの鈴木秀一氏(運用本部 情報システム部長)だ。確かにWeb会議ツールの「Zoom」のような全従業員が必要とするツールやシステムの導入優先度は高くなる。しかし、特定の部門だけで使われるFAQシステムやプロジェクト管理システムのようなものは後回しにされがちだ。

 いきなりの全社テレワーク突入によって、事業部門において「取りあえず急場はしのぐけれど、このままでは近いうちに破綻する。はやく効率化したいよね」という声が高まっている。だがIT部門は休む暇もないくらい対応に追われ、余裕がない。

マンパワー依存の状態 マンパワー依存の状態

今度こそ求められる「昭和モデル」からの脱却

 このような問題を「IT部門の人材不足」で片付けてはいけない。それは表層的なものであって、根本的な課題は別稿「人材不足が真因ではなかった、IT部門がデジタル変革に踏み出すために必要なこと」で分析した通り、組織の在り方に起因するのだ。

 アフターコロナ時代のIT部門はどのようにあるべきか。鈴木氏は次のように語る。「特定の人や部門に頼った業務フローの改善、マンパワー依存という『昭和モデル』からの脱却を目指すべきでしょう。最も重要なポイントはIT部門だけでやるのではなく、IT部門と事業部門が協調して改善に取り組むことです。そしてIT部門は、事業部門が欲しいと思うシステムやアプリケーションを自分たちの手で作り出せる基盤を用意する必要があります」

 サイボウズには、事業部門が自らの手で必要な業務システムを生み出し業務を改善する文化が根付いている。IT部門はそれを実現するための基盤としてローコード開発ツール「kintone」を提供し、その活用を支援する。

 IT部門にとっても従来のような「事業部門の要望を受けて必要なインフラを準備する」「新システムの操作マニュアルを作ってレクチャーする」といった作業がなくなり、aPaaS(application Platform as a Service)環境の管理だけに専念できるという利点がある。

 協調によって得られた成功体験は、さらなる改善活動へとつながる。例えば同社はCOVID-19の影響で2020年2月28日に全社在宅勤務への移行が決まった。その直後から人事、総務、経理、法務、営業といった事業部門がそれぞれのニーズを満たす業務システム(アプリ)を作り出した。

 在宅勤務の課題をヒアリングするためのアプリ、出社しないとできない押印や印刷業務の代行を依頼するためのアプリ、COVID-19関連の相談窓口アプリなどが、IT部門の手を借りることなく生み出され、問題なく運用されている。

「システムを支える」部門から「ビジネスを支える」部門へ

 事業部門が自らシステムを作ると言っても、それはどのように実現可能なのだろうか。

 今でこそ事業部門がアプリを自作し、IT部門がそれを支える関係になったサイボウズだが、この状況になるまでには苦難の道のりがあった。鈴木氏は事業部門とIT部門が対等な関係になるまでの歴史を振り返る。

 kintone導入以前、サイボウズの情報システム部も他の企業と同様に「事業部門が上位、IT部門が下位」のピラミッド型組織の関係にあった。事業部門から寄せられる要求の全てに応えることができず、優先度が低いものは置き去りにされた。

 しかし、2011年にkintoneのサービスが生まれ、社内での利用が始まると、事業部門は次々とアプリを作成し始めた。kintoneを使えば、専門的なプログラミング知識がなくとも画面に必要な機能をドラッグアンドドロップで配置することで業務システムを簡単に作れるからだ。

 だが事業部門はシステム開発のプロではないので、システムで解決すべき問題なのかどうか、もしくはシステムで解決できる問題なのかどうかが分からない。また、システムが本来持つ力を最大限に引き出せないという状況にも陥ってしまった。

 そこで鈴木氏らはIT部門の方針の大転換に踏み切った。「システムを支える」部門から「ビジネスを支える」部門への進化だ。

 ビジネスを支えるとは、どういうことか。IT部門が業務改善のプロとして事業部門をサポートする。どの業務をシステム化できるかをヒアリングして、アドバイスする。これがビジネスを支える新たなIT部門の役割だ。さらにシステムの全体最適を俯瞰的に考えることもIT部門だからこそできる役割だ。

 そしてIT部門と事業部門が協調してプロジェクトチームを作り、業務の見える化を進め、システム化の優先度付けを実施し、事業部門が自らの手でアプリを生み出す。小さな成功体験でも構わない。このサイクルを回していくことで新しいシステム開発の基盤が完成に向かうのだ。

業務部門の業務システム化 業務部門の業務システム化

アフターコロナ、ITシステムの「3密」からの脱却

 取材の最後に鈴木氏は面白いことを言い出した。「これまでのITシステムの設計思想は『3密』だった」と言うのだ。

 従来型システムは、情報がシステム内に閉じられていて簡単にアクセスできず、それも社内という限られた環境からのみ許容される。しかも特定の業務フローと複雑に絡み合っていて環境の変化に対応できない。言われてみれば、ビジネスの俊敏性が重視される「今」のシステムへの要求事項に逆行している。

システムの3密 システムの3密

 アフターコロナ時代に求められるのは「システムの脱・3密」だ。リモートワークが一般化することで、対面(オフライン)での情報共有はやりにくくなる。誰もが、どんな場所からでも簡単に使える分かりやすさが重要だ。環境の変化はさらに加速するだろう。変化への対応力はこれまで以上に重要視される。

システムの脱・3密 システムの脱・3密

 「緊急事態になって、今まで以上にIT部門の重要度が高まっていると感じます。『紙』で問題なく業務が回せる、ITに頼らなくてもいいと感じていた人たちの意識が、テレワークならではの課題に直面して変化しました。IT部門にスポットライトが当たっているとも言えるでしょう。これを機会に事業部門から言われたことだけをやる組織から抜け出し、事業部門と足並みをそろえて業務改善を進められるような関係になれるといいなと思います」(鈴木氏)

 COVID-19という脅威によって、多くの従業員が半ば強制的に在宅勤務をせざるを得ない状況になった。その結果「自分の仕事はテレワークでも問題なさそうだ」という理解につながった人も少なくないだろう。今すぐには「アフターコロナ」モードへのシフトが難しいという企業もあるだろうが、来る新時代に向けた準備に取り掛かりたい。

 その時、kintoneは「システムの脱・3密」を実現するための開発プラットフォームになる。kintoneを活用したIT部門と事業部門の協調戦略をもっと知りたければ、同社が定期的に開催する無料オンラインセミナー「IT部門から始まる業務改革セミナー〜クラウド時代のIT部門はどうあるべきか〜」が参考になるだろう。

無料オンラインセミナー「IT部門から始まる業務改革セミナー〜クラウド時代のIT部門はどうあるべきか〜」

サイボウズは、IT部門向けのセミナーを複数日程で開催しています。詳しくはセミナーページの内容をご確認ください。

https://kintone.cybozu.co.jp/jp/josys_seminar/

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2020年9月10日