データ分析の「出口」に当たるセルフサービスBIのイメージが強かったQlikだが、現在の技術ポートフォリオを見ると、データ分析機能だけでなく、データの「入り口」と分析結果の使い方に関する機能の強化が目立つ。Attunity買収から3年、Qlikだけでできることの幅はどこまで広がっただろうか。
コロナ禍をきっかけに意思決定スピードの高低がビジネス競争力に及ぼす影響に気づいた企業は少なくないだろう。「今こそデータを活用してリアルタイムな意思決定が可能なアクティブインテリジェンスが必要」と説くのは、データプラットフォームを手掛けるQlik Technologies(以下、Qlik)の日本法人、クリックテック・ジャパンのカントリーマネージャーである今井 浩氏だ。どのようにデータドリブンなビジネスに貢献しようとしているだろうか。
QlikはBIツール「QlikView」で「セルフサービスBI」のトレンドをけん引したベンダーとして知られる。
2015年には「Qlik Sense」を発表し、従来のBIに加え、AI(人工知能)を利用した「拡張インテリジェンス」やセキュリティ、ガバナンスなどの機能を強化した。その後も複数の企業買収を進め、今ではQlik Senseの機能だけでなくデータ基盤の構築も製品のスコープに含め、データの整備や統合から管理、分析といった、データ活用の一連の流れをカバーするプラットフォームへと進化している。直近ではSAPシステムの分析対象のデータを「Amazon Web Services」(AWS)向けに最適化したデータセットとしてリアルタイムにデータを移行するソリューションをAWSと共同で展開することも発表し、SAPユーザーのクラウド移行やデータレイク構築支援も推進する。
「セルフサービスBIの連想探索機能やガイド型のデータ分析に注目されてきたが、現在のQlikの能力はそれにとどまらない。あらゆる発生源からのデータをサイロから開放するとともに統合し、分析、インサイト獲得、意思決定を促してビジネス価値を創造するプロセスを一気通貫させる、データドリブンなビジネスのためのプラットフォームとして生まれ変わった」と今井氏は言う。
同社はこの数年、複数の企業買収により製品の完成度を高めてきた。
中でも2019年は、Attunity買収によって、新たにデータ統合の機能を取り込んだ。Attunityの技術は現在「Qlik Replicate」に採り入れられている。Qlik Replicateは、多様なデータソースからデータ取り込む機能を持っており、各種RDBMSやSaaS(Software as a Service)、非構造化データファイルに加え、メインフレームやデータウェアハウス、IoTデバイスのデータなども一元的に扱える。データの格納先はオンプレミスのデータウェアハウスなどに加え、「Snowflake」「Amazon Redshift」「Azure SQL DW」「Google Bigquery」といったクラウドデータサービスも利用できる。
これとは別に2020年にはBlendr.ioを買収している。こちらはSaaS/PaaS(Platform as a Service)サービスのデータのリアルタイム統合やAPI連携などを視野に入れて機能の製品実装が進行中だ。
「データ統合と分析レディなフォーマットへの変換を強化するこれらの機能は、データのサイロを開放するための意味がある。今までは使えなかったようなデータを含め、自由なデータ探索や分析が可能になるともくろんでいる。IT部門のリソースなどに依存せずにデータ分析が可能になるため、制約なくリアルタイムでのデータドリブンな意思決定を支援できるようになる」
データ分析機能の強化も進む。同社は2020年にKnarr AnalyticsとRoxAIを買収している。これによりQlik SenseのAI利用拡張インテリジェンスや連想技術に新しい要素を加え、さらに高度なデータリテラシー強化機能を追加していくのが狙いだ。例えば、RoxAIの機能では「注意しておきたいデータ」に変化が発生した時にアラートを通知する。分析作業をしてから気付くのではなくリアルタイムで感知できる仕組みだ。Knarr Analyticsからは発見した知見をコミュニティー(部門)に共有する機能を取り込んだ。
データ分析リテラシーの面では教育サービスとして、ベンダー中立的な「データリテラシープログラム」も提供する。無償プログラムとして「アナリティクスの基礎」や「データに基づいた意思決定」を提供する。有償プログラムではデータとデータ分析戦略やデータリテラシーカルチャーについて、ユーザー企業のリテラシーレベルや環境に沿って習得できるという。
「データ統合やデータ分析、データリテラシーを同時に推進することにより、データやインサイト、アクションのギャップが埋められる。ギャップを埋め、あらゆるデータソースからのデータを自由に、リアルタイムに活用することで、本当のリアルタイム性をもった『アクティブインテリジェンス』が実現する」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.