現場主導のDXを目指した村田機械、パートナー企業の“伴走支援”を生かす

システムが現場に浸透せず、システム部門は現場からの改修依頼に応え切れない。そんな苦しい状況を打開しようと村田機械が取り組んだのが現場主導のDXだ。プロジェクト推進の鍵は“伴走者”との関わり方にあった。

» 2022年03月10日 10時00分 公開
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 村田機械は京都市伏見区を本拠に、繊維機械、ロジスティクス&オートメーション、クリーンFA、工作機械などを展開する1935年創業の老舗企業だ。国内外に営業拠点を展開する他、国内に4つの開発拠点、6つの生産拠点を構える。

 機械メーカーとして日本の製造業を支える同社は、幅広い分野でデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む。中でも従業員が主体的に効率化を進める内製化において大きな成果を挙げている。

 繊維機械事業部でITインフラやシステムの運用・開発チームを率いる田桐 千津子氏(繊維機械事業部 システム管理 課長)は、従来のIT活用やシステム運用の課題についてこう話す。

 「システムがうまく現場に浸透せず、業務のやりにくさや生産性の停滞につながっていました。そのことに危機感を持った経営層が2018年の戦略会議のタイミングで新たなIT活用のアプローチを模索するようになりました」(田桐氏)

村田機械の田桐 千津子氏

 村田機械のIT構築・管理は、全社の統括部門と各事業部内のIT管理部門という二段構えの体制を取る。各事業部がシステムを内製してきたこともあり、事業部のIT管理部門にはシステム開発のノウハウが蓄積している。ただし、長くシステムを運営する中で、ノウハウの陳腐化や新しい取り組みを推進しにくいことが課題となっていた。繊維機械事業部の田桐氏はこの課題解決をミッションとしていた。

 「新しいIT活用のアプローチでキーワードにしたのがDXです。全社的にも共通ERP導入を伴う大規模なDX施策を進めていますが、事業部門や担当者レベルでも同時にDXを進め、事業や業務を変革することで利用しやすいIT環境の整備を目指しました」(田桐氏)

「フィールドDX」で現場主導の変革を推進、ツールとしてkintoneを活用

 繊維機械事業部ではDXを効果的に推進するために、取り組み領域を3つに分けた。

 基幹システムの刷新を中心とした全社規模でのDX推進(「コアDX」)、事業部のレガシーシステムの刷新(「ブランチDX」)、そして事業部の担当者が抱える業務課題の解消(「フィールドDX」)だ。

 従業員の業務効率や生産性の向上に直接つながるのがフィールドDXだが、「過去さまざまな施策を打つものの、目立った成果が見えない状況」(田桐氏)だった。

村田機械におけるDX施策の3つの領域(出典:サイボウズ提供資料)

 田桐氏が所属する繊維機械事業部は、承認や確認プロセスの煩雑さが課題だった。複数のシステムからデータを抽出して「Microsoft Excel」(以下、Excel)で集計した結果について上長の確認を取る工程がかさみ、「Excelファイルをバケツリレーのように人から人へ受け渡し、最終確認されるまでに多くの時間を費やしていました」と田桐氏は話す。

 この問題を解消しようと担当者からワークフローシステムの構築を依頼されたこともあったが、既存システムの維持管理に追われて対応する余裕はなかった。「案件を管理しているシステムには、30〜40件も未回答の案件が積み上がっていた」(田桐氏)からだ。

 これを打開する方法として検討したのがRPAやBIなどのツール整備とEUC(エンドユーザーコンピューティング)だ。この過程で出会ったのが、サイボウズの業務システム開発ができるローコード開発プラットフォーム「kintone」だ 。

DXを加速するため、kintoneの導入と同時に「伴走支援」に注目

 「kintoneのデモを見て『ゴリゴリとプログラムを書かなくてもよい時代になったのか』と衝撃を受けました。もともと私たちの部署は内製化に取り組んでいたこともあり、導入のハードルは低いと感じました」(田桐氏)

 その後、田桐氏は導入に向けた本格的な情報収集を目的にサイボウズ主催イベントに参加する。そこでkintone導入のパートナーとして白羽の矢を立てたのがDXの支援をするサービスも展開するJBCCだ。JBCCからkintoneの導入や運用支援、連携ソリューションについて聞いたことが決め手になった。

 村田機械のプロジェクトを担当したJBCCの竹中朋美氏(西日本事業部 ソリューションクラウドグループ)は「田桐氏との話し合いから、システム導入後に現場が抱える課題にどう対応するか、現場だけで作りにくい高度なアプリケーションをどうサポートするかといった課題が見えました」と当時を振り返る。

JBCCの竹中朋美氏

主体はあくまでも自社、二人三脚の伴走で進める

 田桐氏はJBCCが持つエンドユーザー支援のノウハウを活用することを決断する。自社従業員が主体となってkintoneの導入や活用を進めながらDX推進を自走できるよう、必要に応じてJBCCのサポートを受ける“伴走型”の体制を作った。

 まず、田桐氏らは現場の中からメンバーを20人程選出し、kintone活用推進チームとして「kintoneサポーターズ」を結成。JBCCのサポートを受けながら選出したメンバーに対して集合研修を実施した。さらに、月次で「kintone相談会」を実施し、必要があればマンツーマンで現場の推進担当者の相談に乗るなど、現場のITリテラシー向上の支援に力を入れた。また、中級以上のアプリケーション開発には、JBCCが開発のノウハウや手法の提供、各種プラグインを紹介するなどで支援した。

 竹中氏は「初めから“伴走”を意識したわけではありませんが、取り組みの進度に応じて求めるサポートのレベルは変わります。その都度必要なスキルを柔軟に提供することを意識しました」と話す。

村田機械とJBCCの伴走体制(出典:サイボウズ提供資料)

「使い方はあなた次第」と現場に任せることで新しいキーパーソンが生まれる

 田桐氏は、JBCCの伴走に加えて、現場担当者のマインド変革も重要だと説明する。従業員一人一人が自発的により良い仕組みを考え、実装する素地がなければDXを推進するマインドが生まれないからだ。

 このため、田桐氏は「具体的な使い道を示さない」「現場のキーパーソンに任せる」「まず自分たちで取り組み、手に負えない部分は協力を仰ぐ」というルールを用意した。

 現場担当者から「kintoneを何に使えばよいのか」といった質問が来た場合も「それはあなた次第」と伝え、具体的な答えをあえて提示しなかった。

 「全ての現場の業務をシステム部門が正確に把握しているわけではないので『実際に触ってみて便利だと感じた機能を使い、今困っている業務から導入を始めてみてください』と、あえて具体的な提案をしませんでした」(田桐氏)

 その結果、現場の中に活用方法を見つけ出す人物が自然と現れた。「現場のキーパーソンに任せる」とは、そうした人物がいればやりたいことができる環境はきちんと用意してあげた上で、可能な限り任せることを意味する。主体的に取り組むキーパーソンを中心に活用の波が広がれば、より高い効果やより規模の大きな取り組みに成長する可能性が高いという。

 「ハンズオンの参加者も最初は5〜6人でした。しかし、システム開発未経験の人が良いアプリケーションを作ったという話が広がると『自分もできるのでは』と感じた担当者が参加するようになり、最終的には1回30人規模にまで広がりました」(竹中氏)

 3つ目の「まず自分たちで取り組み、手に負えない部分は協力を仰ぐ」というルールは、自社による内製化を可能な限り進め、必要なときにだけパートナーの力を借りる方針を指す。現場担当者のニーズが当事者にしか分からないように、企業の課題も企業自身にしか分からない。こうした考えから、開発したアプリケーションは自分たちで改修して管理し続けることを前提としている。

Excelによる申請承認作業の全てをkintoneで代替、作業効率が3倍になったケースも

 kintone活用によるDXプロジェクトは、導入から3年が経過した現在、繊維機械事業部のほぼ全従業員に相当する400人が利用するまでに拡大した。これまでに開発したアプリケーションは約800に達する。

 「最初に多くの従業員が使うワークフローをkintoneで構築したことが利用者を増やすきっかけになり、利用者を拡大できました」と、田桐氏は振り返る。従来Excelで処理していた申請承認のワークフローを効率化し、情報の一元管理が可能になった。

 「自社だけでもkintoneを活用したDX推進はできたと思いますが、JBCCさまのおかげで、よりスムーズに自走することができています。今ではさまざまな部門でkintoneのアプリケーションができ、業務の効率化に大きな成果を挙げています。最近は出社率を記録するアプリケーションも開発しました。思い立ったらすぐに作成できることが理解され、kintoneを使った開発が広く浸透しています。システム管理チーム自体もkintoneを活用し、予算管理の効率化などに役立てています。さらに、他事業部やグループ会社、協力会社でもkintoneを使い始めるところが出てきたことから、kintoneの『ゲストスペース機能』を使った社内外での情報共有の輪が拡がっています」(田桐氏)

 同社は今後、kintoneやRPA、BIツールといった製品ごとに分かれていた導入推進委員会を「フィールドDX推進委員会」として一本化し、複数のツールを組み合わせてより高度な取り組みを推進する。田桐氏は「kintoneを活用しながら、フィールドDXとして新しい問題解決に取り組んでいきます」と展望を語った。

 また、村田機械の伴走パートナーとして活動したJBCCは「村田機械さまのような現場の業務改善をされたいと思っていらっしゃるお客さまは多くいらっしゃいます。そのような方と今後も“お客さまと一緒になって考える”ということを大切に、活動を進めていきたいなと思っています」と意気込みを語った。

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提供:サイボウズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2022年3月29日