「ハリネズミ経営」と「9つのDX推進領域」でベイシアグループはいかに躍進したか?企業は“とがって”個性を伸ばせ

ワークマンやカインズなど小売業界のIT活用で大きな注目を集める企業をまとめているベイシアグループ。同グループの掲げる特徴的な経営方針「ハリネズミ経営」とDX推進のポイントを聞いた。

» 2022年07月21日 08時00分 公開
[齋藤公二ITmedia]

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 ワークマンやカインズ、ベイシアなど物販チェーン7社を中心とする29社で構成され、2019年に設立60周年を迎えたベイシアグループ。2020年10月には「グループ売上1兆円」を達成し、2022年現在、店舗数は1946店舗、出展地域は47都道府県、従業員数は2万7898人(いずれも東急ハンズ除く)に達する。

 小売業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に進む中、同グループは「ハリネズミ経営」という独自の方針を掲げて、この基盤で各社がDXを強力に推進している。ベイシアグループの樋口正也氏(CDO/CIO ベイシアグループ総研 執行役員 IT統括本部長)がその詳細を明らかにした。

本稿は、ガートナー ジャパン(以下、ガートナー)が主催する「ガートナー アプリケーション・イノベーション & ビジネス・ソリューション サミット」(2022年6月16〜17日)のゲスト基調講演「ベイシアグループのはりねずみ経営とDX 〜現状から将来への展望とビジョンへ」の講演内容を基に構成した。

ベイシアグループ成功の秘訣は「ハリネズミ経営」にあり

ベイシアグループの樋口正也氏

 小売業界において、IT活用は今やビジネスの差別化や競争優位性を確保するために必要不可欠な要素だ。この例に漏れず、ベイシアグループでもIT活用はビジネス戦略において重要な位置を占めている。

 樋口氏は「2019年に第3の創業を目指して『IT小売企業宣言』を発表しました。取り組み開始当初は『小売業でITの何をやるのか』と社内も騒然としていましたが、ここ2〜3年で圧倒的に変わりました。コロナ禍でも非常に大きな成長を遂げており、これを追い風に業績を伸ばしています。今後もIT戦略やデジタル活用は成功の大きな鍵です」と語る。

 こうしたベイシアグループのDX推進を支える特徴的な経営方針が「ハリネズミ経営」だ。ハリネズミ経営はベイシアグループという1つの土台の基、各ブランドがそれぞれ独自の方針で経営を進めるというものだ。“いせや”から発展してきたベイシアグループに、企業文化の大きく異なる東急ハンズが加わる際にも有効な考え方になった。

 「ホールディングスとして複数の企業を束ねるのではなく、ベイシアグループが縁の下の力持ちとなり、それを土台に各グループ会社が針のように“とがって”個性を伸ばしてもらいます。ただし個社がやり切れないものや困難なものについては、グループでシナジーを効かせて共通化していきます。ホールディングス型で上から標準化したり押さえつけたりするタイプとは逆のパターンだと言えます」(樋口氏)

ワークマンやカインズはどのように“とがっているのか”?

 樋口氏は個社ごとの“とがった”取り組みとして、ワークマンの「アンバサダー・マーケティング」を挙げる。これは、ワークマンの成長を支える最大の成功要因の一つで、「YouTube」「Twitter」「Instagram」などでワークマンの製品情報を発信しているユーザーを「公式アンバサダー」として認定し、商品開発や改善に彼らの意見を取り入れるというものだ。

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