近年、供給不足が慢性化していた半導体が一転して過剰供給に陥っている。供給量調整に奔走するメーカーがある一方で、むしろ供給力強化に向けた計画を立てるメーカーも存在する。その理由は。
2022年第2四半期の決算説明会で、半導体メーカー各社の経営陣は「スマートフォンやPCの需要減退に伴い、コンピュータチップの供給過剰に直面している」と発表した。
Appleに半導体を提供しているTaiwan Semiconductor Manufacturing Company(TSMC:台湾積体電路製造公司)のC・C・ウェイCEOは2022年7月21日に開催された同社の決算説明会で、半導体のサプライチェーンが「より健全な需給バランスを取り戻すのに数四半期かかる」との予想を発表した(注1)。同氏によれば、スマートフォンやPCのメーカーが在庫レベルを調整したことが半導体チップの供給過剰につながったという。
米国アイダホ州の半導体メーカーであるMicron Technologyのサンジャイ・メロトラ(Sanjay Mehrotra)CEOも2022年6月、「半導体の短期需要が大幅に減少している。2023年度の供給増加を抑えるために直ちに行動を起こす」と発言した(注2)。
半導体の供給不足は世界中のサプライチェーンに波及し(注3)、過去2年間、(半導体を利用する製品の)生産の停滞と推定数十億ドルの収益の損失につながった。しかし、現在、半導体の供給不足を助長していた驚異的な需要がようやく緩和されつつある。
Micronは、PCとスマートフォンの売上高が「対2021年同期比で10%減少する」と予測する。需要の冷え込みは、業界全体の半導体売上高の伸びに影響を与え始めた。Semiconductor Industry Association(半導体産業協会)によると、2022年5月は14カ月ぶりに対前年同月比20%未満の売上高となった。
需要が横ばいになる中、メロトラ氏は「Micronは来期も在庫の増加が続く」と予測する。同社は、余剰な半導体チップを2023年の需要に対応させるとともに、設備投資計画を見直し、生産コストの削減を図るとしている。
Micron Technologyのスミット・サダナCBO(最高事業責任者)は、「当社の目標は顧客と協力して最善の方法を考え、顧客の購買パターンを前向きに捉えるという観点から、自社をどのように位置付けるのが最善かを見極めることだ」と述べる。
しかし、生産力を抑える企業ばかりではない。
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