COVID-19のパンデミック以降、システムの予算縮小に取り組む企業が増えている。これを受けてアマゾン・ドット・コムは、AWSのサービスをより低価格で利用したいユーザーのために、利用料削減に向けて努力する意向を発表した。
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AmazonのCFO(最高財務責任者)であるブライアン・オルサフスキー氏は2022年9月30日(現地時間)、同社の第3四半期決算説明会で「当社は『Amazon Web Services』(以下、AWS)の利用料をできる限り下げる努力をしています」と発表した(注1)。低価格のサービスを望む顧客が増えているため、AWSの顧客コストを最適化するために積極的にこの取り組みを進めていく意向だ。
オルサフスキー氏はコスト削減策として、ワークロードの管理強化や従来と性能の異なる低価格製品へのシフトと、コストパフォーマンスの高い「AWS Graviton プロセッサ」への切り替えの3つを挙げた。
2020年のパンデミック以降、世界経済は不安定な状態が続く。オルサフスキー氏は「長期的な視野でクラウドコンピューティングを導入するには、むしろ有利な状況にあります」と述べる。その証拠に、企業の予算が削られているにもかかわらず、クラウドの支出は増え続けている(注2)。ただし、そうは言っても多くの企業がコストに敏感で、投資に対して慎重であることも事実だ。
Amazonの経営に目を向けると、かつてのように破竹の勢いで業績が伸びているわけではない。営業利益は2021年第3四半期で49億ドルだったのに対し、2022年第3四半期は25億ドルと、前年同期比でほぼ半減した(注3)。
だがAWSの売上高は前年同期比28%増、営業利益は10%増で、1年前の49億ドルから54億ドルに増加した(注4)。ただし1年前の売上高が前年同期比39%増だったことに比べると、成長率は著しく低下しており決して喜べる数値とはいえない。
オルサフスキー氏によると、一部の企業は一時的にコストを削減するために予算を縮小し始めている。その影響もあり、前年同期比28%増だったAWSの売上高も四半期の終わりには20%台半ばになるなど成長が鈍化した。
オルサフスキー氏はこの理由としてインフレとドル高、エネルギーコストの上昇の3点を挙げる。
「しかし、こうした経済が不安定な時代に一時的な使用量や費用の変動があっても大きな打撃を受けないのは、クラウドサービスの利点の一つです。企業は通常固定費になるものを変動費に変更でき、インフレの高低を管理できるからです」と、オルサフスキー氏は語る。
予算の制約に頭を抱える企業の中には、ベンダーとの契約の再交渉を検討しているところもあるだろう(注5)。
(初出)AWS pledges to help customers trim their cloud bills
(注1)Amazon (AMZN) Q3 2022 Earnings Call Transcript(The Motley Fool)
(注2)Budget cuts will spare IT heading into 2023(CIO Dive)
(注3)AMAZON.COM ANNOUNCES THIRD QUARTER RESULTS(Amazon)
(注4)Cloud contraction: Growth slows at AWS, Microsoft and Google Cloud(CIO Dive)
(注5)4 strategies for ‘winning’ IT vendor negotiations(CIO Dive)
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