2022年に人員削減が相次いだ決済業界 その原因と2023年の見通しは?Payments Dive

2022年に多くの雇用削減を行った決済企業。2023年も雇用削減は続くとみられるが、その原因はどこに。

» 2023年02月08日 08時00分 公開
[Caitlin MullenPayments Dive]

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Payments Dive

 これまで急速にビジネスを拡大してきた決済事業者だが、その大半が2022年に急ブレーキをかけざるを得なくなり雇用削減に踏み切った。PayPalやFiservといった上場企業に加え、StripeやKlarna、Plaidといった大手企業やBoltやAmountなどの新興企業まで、さまざまな決済事業者が雇用削減を行った。

 地政学的な対立やインフレ、消費者行動への影響など、2022年におけるマクロ経済の逆風は決済事業者を含むFinTech企業を圧迫し、経費の見直しやリストラにつながった。

相次ぐ雇用削減の背景には決済事業者の”勘違い”

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが収束して人々が実店舗に戻るようになると、「今後もeコマースが拡大する」と予測したFinTeck企業の成長戦略が狂った。S&P Global Market Intelligence傘下の451 Researchで主席リサーチアナリストを務めるジョーダン・マッキー氏は「多くの決済事業者が楽観的になり過ぎていた」と指摘する。

 「一部の企業はeコマースの劇的な成長を受けて、『あらゆるものが飛躍的にデジタル化する』と未来を想定して雇用を進めた。実際は予想した通りにならなかった」(マッキー氏)

 この件について、決済事業者StripeとFinTech企業Plaid両社のCEO(最高経営責任者)はそれぞれの人員削減に関する発表で見解を述べた。Stripeは2022年11月に従業員の14%を削減し(注1)、その数は約1140人に上った。Plaidは2022年12月に従業員の20%に当たる約260人を削減すると発表した(注2)。

 Stripeのパトリック・コリソンCEOは発表の中で「当社の経営陣は2022年と2023年のインターネット経済の短期的な成長を楽観視し、より大きな減速の可能性とそれによる影響を過小評価した」とした(注3)。さらに同社は「営業コストを急速に増やしたため、業務が非効率になってしまった」と振り返る。

 「Buy Now Pay Later」(今買って後で支払う)の決済サービスを提供するKlarnaも、スタートアップ企業として経費管理サービスを提供するのBrexやオンラインチェックアウトを扱うBoltと同様に、景気低迷による人員削減を実施した(注4)。

 Klarnaは2022年5月に従業員の10%に当たる約700人を削減し(注5)、同年9月にも追加削減を行った(注6)。Brexは2022年10月に従業員の約11%相当の136人を削減した(注7)。Boltは2022年5月に従業員の30%を削減し、Bloombergの報道によるとその数は約250人に上った(注8)。

 決算サービスのスタートアップ企業Fastは、ドム・ホランドCEOが急成長を公約したのにもかかわらずそのわずか数カ月後の2022年4月に廃業した(注9)。ホランド氏は「Fastは400人近い従業員を抱えている」と同年1月にPayments Diveに語った。

 インフレや金利の上昇、株式市場の評価額の下落などを受け、民間企業はベンチャーキャピタルを見つけることが困難になっている。マッキー氏は「数年前のように簡単に資金を調達できない」と懸念する。

 そうした中、 PayPalやFiserv、Fidelity National Information Services(FIS)などの大手上場企業も従業員削減でコスト圧縮に努めている(注10)。PayPalはアクティビストのElliott Investment Managementが同社の株式を20億ドル取得したことを受け、2022年にコスト削減策を実施した(注11)。

 決済大手のFiservも、利益率の圧迫という課題に直面し従業員の削減を実施した(注12)。競合のFISも5億ドルのコスト削減と事業の包括的な見直しに着手するために(注13)、数千人の効用削減を実施すると報じられている(注14)。

改善の兆しは見られるのか

 雇用も行われている。Fiservのフランク・ビシニャーノCEOは、「人員削減を行う一方で2022年に数千人を採用した」と述べている(注15)。Brexも重要な役割を担う人材とその後任となる人材の採用を続けている。WiseとVizyPayも近いうちに雇用を強化する予定だ(注16)。

 一方で、Brexの最高人材責任者であるアンジェラ・クロスマン氏はPayments Diveに「決済業界では2023年にさらに多くの雇用が失われる可能性がある」と述べている(注17)。多くのFinTech企業は現在、成長よりも収益性を重視しており、資本不足に備えて解雇も視野に入れて柔軟な対応ができるように取り組んでいるからだ。

 人員削減が今後も続くと予測する同氏は「ビジネスと環境の変化に対応するために本当に優秀な人材を手放している」と指摘する。

 「現在の経済状況が続き、金利やインフレが高止まりすれば2023年はさらなる人員削減の可能性がある」と話すマッキー氏は、「今期の人員削減の大半は終わったと考えたい」と付け加え、2023年の決済事業者やFinTech企業における安定した事業展開に期待を見せる。

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