Lenovo、HP、Dellが陥る「かつてない苦境」 企業のIT投資は好調なのに売り上げ不振のなぜCIO Dive

Gartnerによると、世界のPC市場の大手3社Lenovo、HP、Dellはかつてない低迷期に入ったようだ。企業のIT投資額が伸びているにもかかわらず、Gartnerが「(PC購入台数の回復は)2023年も厳しいだろう」と予測する理由とは。

» 2023年03月10日 17時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

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CIO Dive

 調査会社Gartnerの最新の分析によると、2022年10〜12月の3カ月間における世界のPC出荷台数は2021年の同時期と比較して約30%減少した(注1)。これは同社が1990年代半ばに市場の追跡を開始して以来、四半期ベースで最大の減少幅となった。

企業のIT投資額は増加中 なぜPCの出荷台数は低迷?

 2022年7〜9月も企業向け需要が減少したことで、(PCの出荷台数は2021年同時期と比較して)16.2%減少した。出荷台数は、2021年の3億4000万台近くに対して、2022年は2億9000万台弱まで減少したとGartnerは発表した(注2)。

 同社の北川 美佳子氏(ディレクターアナリスト)は「市場が軟調から悪化へ移行した。潜在的な景気後退や持続的なインフレ、金利上昇への不安が消費者と企業の需要を低迷させた」と指摘する。

 ただし、金融引き締めが厳しくなる中でも、企業のIT予算は大きく減少していない。むしろほとんどの企業はIT投資額を増やしてモダナイゼーションやクラウド、ソフトウェアに注力している(注3)。

 しかし、企業が裁量的支出を削減し、購入時期を先延ばししたため、Gartnerは2023年1月に(IT支出の)成長予測を年間2.5%に下方修正した(注4)。

 調査会社Forresterによれば、米国企業における(IT)支出は2022年の7.4%成長から(2023年は)5.4%成長に減速すると予想されている。この傾向はPCメーカーに悪影響を及ぼす可能性がある(注5)。

 PC市場は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミック発生時に、企業がテレワークをサポートするための技術に投資したため活況を呈した(注6)。マーケティング会社Spiceworks Ziff Davisのピーター・ツァイ氏(シニアテクノロジーアナリスト)は、「CIO Dive」に宛てた電子メールで「ノートPCへの支出は2021年にピークを迎えた」と述べた。

 ただし、PCやノートPCの買い替え時期には柔軟性があるものの、無期限に先延ばすことはできない。「2020年初頭、パンデミックの影響で起きたテレワーク移行期に購入されたノートPCのおよそ半分が、今後12カ月以内に更新時期を迎えるだろう」(ツァイ氏)

「2024年までPC需要は回復しない」

 世界的なPC大手メーカーLenovo、HP、Dellの3社のPC出荷台数は2022年に停滞し、その後急落した。

 「われわれは一部の企業が購入を延期すると予測している。それに加え、大企業のレイオフ(一時解雇)が相次ぐと、企業向けPCの売り上げが伸び悩むだろう」とIT専門の市場調査会社であるIDCのライアン・リース氏(世界モバイルデバイストラッカーのプログラムバイスプレジデント)は「CIO Dive」宛ての電子メールで述べた。

 Dellは、2022年7〜9月にPCの世界シェア16.7%を占めて業界第3位だった。同社の出荷台数は2021年同期比で37%減少した。2023年2月6日に米国証券取引委員会(SEC)に提出した書類でDellは「5%の人員削減」と「約6650人のポジションを廃止する」ことを明らかにした(注7)。

 Dellのジェフ・クラーク氏(副会長兼共同COO《最高執行責任者》)は、2023年2月6日の発表の中で「雇用の一時停止、出張の制限、外部サービス費用の削減を実施した」と述べた(注8)。

 Dellが「CIO Dive」に送信した電子メールには、「部門再編による効率化の機会がさらに増えたため、世界中の従業員を削減することになった。これは苦渋の決断だった」と書かれていた。

 IDCのリース氏は「企業のPC購入が回復するまでにかかる時間は、当初の予想よりも長くなるかもしれない」と述べる。「IDCが2022年11月に発表した予測では、企業向けPC市場は2023年後半に回復し始めるとされていた。しかし、最新の予測を見ると、2024年になるだろう」(リース氏)

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