企業間決済の自動化、即日化が急拡大 米国の商取引で何が起こっているかPayments Dive

基盤システムの強化を背景に企業間における即日決済の取引高が急拡大している。

» 2023年03月30日 08時00分 公開
[Tatiana Walk-MorrisPayments Dive]
Payments Dive

 小口決済サービス事業者の業界団体であるNacha(全米自動決済協会)は2023年2月22日(現地時間)、ACH Network(小口決済ネットワーク)が2022年に300億件、総額76兆7000億ドルの自動資金決済を処理したと発表した(注1)。これは2021年に比べ、件数は3%増、決済額は5.6%増の数値だ。

 ACHの深夜サービスは、月曜日から木曜日にかけて毎日およそ1000万件の自動資金決済を処理しているが、プレスリリースによると、ACH(Automated Clearing House)の深夜サービスは月曜日から木曜日にかけて毎日およそ1000万件の自動資金決済を処理し、金曜日には5000万件以上の決済を実行している。深夜サービスは、営業日の午後11時30分(米国東部標準時)までにACHファイルを金融機関に配信するものだ。

ACH Networkの決済拡大を伝えるNachaのプレスリリース(出典:NachaのWebサイト)

当日決済、企業間決済の取引高はなぜ急拡大しているか

 2022年は、直接預金は4.1%減少したが医療保険金支払いは6.1%増加した。企業間決済は前年比11.8%増、企業間決済の即日実行は前年比44%増と発表している。

 自動決済システムを管轄するNachaは、直接入金が減少したのは連邦政府のパンデミック救済措置の終了と失業給付金の支払いの減少が原因であるとした。今後は他の医療機関に比べ電子請求決済の利用が少ない歯科業界に対するACH決済の利用促進に重点を置くと、Nachaは述べている。

 2022年は企業間決済に加え、他のカテゴリーでも取扱高が増加した。Nachaによると、インターネット決済の取扱高は7.7%増の94億円、P2P(ピア・ツー・ピア)決済は8.6%増の2億9470万円となったようだ。

 「2022年は10年連続でACH決済の総額が1兆ドル以上増加したことになる」とNachaのジェーン・ラリマー社長兼CEOは声明で述べている。

「これは、ACH Networkが何億もの消費者や企業、その他の組織にサービスを提供する、産業的に強力な最新の決済システムであることを強調している」(ラリマー氏)

 米国は決済処理で他国に遅れを取っているが、Nachaや連邦準備制度理事会、The Clearing Houseは、このプロセスのスピードアップに取り組んでいる。2022年秋、この3者は深夜ACHサービスを導入し(注2)、通常なら翌営業日の朝まで到着しない支払いの処理をスピードアップした。

 また、ACH Networkは2022年3月、ネットワークの効率化を図るため、同日中の送金能力を100万ドルに引き上げた。さらに2022年4月には、銀行間取引の清算機関であるThe Clearing HouseがRTPネットワーク(リアルタイム決済ネットワーク)の上限を10万ドルから100万ドルに引き上げた(注3)。この限度額の引き上げは、パンデミック時にデジタルで支払いを発行する金融機関や企業のニーズに対応するために行われたものだ。

 その限度額の引き上げは、2022年に1兆ドルの大台を超えた同日、ACHの価値を押し上げるのに貢献したとNachaは述べている。2022年の当日ACH決済は6億9750万件、1兆7000億ドルだった。これは2021年に比べ、それぞれ15.5%、86.3%の増加である。

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