AWSの収益成長率が鈍化 クラウド市場は拡大しているのになぜ?CIO Dive

依然としてクラウド市場で高いシェアを占めているAWSだが、同社の収益成長率は鈍化しており、今後もこの傾向が続くと見られる。企業のクラウド利用は拡大しているのに、なぜなのか。

» 2023年06月28日 08時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

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 企業のクラウド利用は拡大し、市場調査会社のSynergy Research Groupによると、2023年1〜3月における支出額は前年同期比で20%増えている。ところが、AWS(Amazon Web Services)の収益成長率は鈍化している。その理由は何か。そして、顧客がクラウドサービスに求めているものとは。

クラウド市場は拡大しているのに、AWSの収益成長率は鈍化

 Amazonが2023年4月27日に発表した2023年第1四半期のAWSの売上高は前年同期比16%増、営業利益は51億ドルとなった(注1)。クラウド部門の営業利益は前年同期比約30%増の48億ドルで、Amazonの中で最も収益性の高い部門であることに変わりはなかった。ただし、収益成長率は鈍化している。

 同社は、収益成長率が伸び悩む原因を、顧客がワークロード最適化によるコスト削減を求めているためだと考えている。AWSのブライアン・オルサブスキーCFO(最高財務責任者)は「予想通り、第1四半期の厳しい経済状況を受けて、顧客はクラウド支出を最適化する方法を引き続き評価している」と、2023年4月27日の決算説明会で述べた(注2)。

 Synergy Research Groupによると、2023年1〜3月における企業のクラウド支出は前年同期比で20%増え(注3)、全世界で630億ドルを超えた。AWSは市場の3分の1近くを占めており、依然としてハイパースケーラーとして圧倒的な存在感を示している。

顧客がクラウドサービスに臨むものとは?

 Amazonは、コスト意識の高いAWSの顧客がマクロ経済における継続的な課題を乗り切るように支援するという誓いを新たにした(注4)。

 「AWSの営業とサポートチームは、顧客が現在の不透明な経済状況を乗り切れるよう、AWSへの支出を最適化するための支援に多くの時間を費やしている」とオルサブスキー氏は述べた。

 Amazonのアンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)によると、顧客は支出削減よりも最適化に重点を置いているという。

 「顧客は、技術やクラウドにかける費用を減らすようなコスト削減には取り組んでいないと明言している」(ジャシー氏)

 同氏は、顧客によるAWSへの支出最適化とはビジネス目標の優先順位の見直しと顧客体験のアップグレードといった、収益を上げる取り組みへのリソースの再配分だと見なしている。

 AWSの2大競合相手であるMicrosoftとGoogleも、2023年4月の第5週に同様の見解を示した。Microsoftのサティア・ナデラCEOは、2023年4月25日の決算説明会で、「顧客がデジタルに費やした支出から最大の価値を引き出せるよう支援することに注力している」と述べた(注5)。

 AlphabetとGoogleのサンダー・ピチャイCEOも2023年4月25日の決算説明会で、「Google Cloudは最適化に傾倒している」と述べた(注6)。

 Synergy Research Groupの分析によると、Microsoftは第1四半期にクラウド市場で23%のシェアを獲得し(注7)、初めて利益を計上したGoogle Cloudのシェアは前四半期の11%から10%に低下したという。

 オルサブスキー氏は、今期における収益の伸びの鈍化は次の四半期にも継続すると予想している。「2023年4月の収益成長率は2023年第1四半期に比べて約5%ほど低い。こうした最適化の動きは第2四半期にも続くだろう」(オルサブスキー氏)

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