多国籍チームでビジネスを成長 D&Iに取り組むMicrosoftのトレンドを紹介 (Microsoftのビジネスアプリケーション-AI編その1)DX 365 Life(10)(2/2 ページ)

» 2023年09月29日 08時00分 公開
[吉島良平ITmedia]
前のページへ 1|2       

AIで生産性を加速させるSCMのモダナイゼーション

 サプライチェーン部門には、常に生産性の向上や配送ルートの確保、在庫の最適化、コスト削減などが求められます。MicrosoftはMicrosoft Buildで、サプライチェーン部門に向けたキャンペーン「Microsoft AIM」(Accelerate・Innovate・Move)を発表しました。

図10 Microsoft AIMについて(Microsoftの資料を基に筆者作成)

 同キャンペーンは「クラウドへの移行とAIを活用したテクノロジーの実践を支援」「より速く革新し、優位に立つために必要なサポートを提供」「ビジネスの拡大に合わせて俊敏に動き、スケールを拡大」という目標を掲げ、オンプレミスのビジネスアプリケーションを活用しているユーザーの業務プロセスを改善することを目的にしています。

図11 Microsoft Supply Chain Platformの概要(Microsoftの資料を基に筆者作成)

 AIの力を引き出すには、ビジネスニーズの変化に対応する柔軟で拡張性の高いソリューションが必要です。しかし、一度に多くの変化に取り組むのはビジネス上のリスクが伴います。そこで、段階的にモダナイゼーションすることで、システムの信頼性を確保しながら「製造のアップタイムを確保」「アフターマーケット・セールス業務のような新たなビジネスモデルへの対応」「オムニチャネルの俊敏性を実現し、需要シフトに効果的に対応」できます。

図12 Microsoft Supply Chain Platformの特徴(Microsoftの資料を基に筆者作成)

 具体的な取り組みとして、資産管理の側面から考えます。

図13 資産管理の考え方(Microsoftの資料を基に筆者作成)

 多くの製造業は基本的な予防保全の方針に従っており、ほとんどのデータが「Microsoft Excel」などに記録されています。システムがバラバラだと、メンテナンスやコストの負担が上がり、ダウンタイムを招くことがあります。

 ダウンタイムがあると、操業中断時や計画外の設備故障時に、重要製品の生産増強が阻害されるリスクが高まります。企業は設備のダウンタイムや恒久的な設備故障によるコストを削減するために、資産の予防的・予知的なメンテナンスに投資する必要があります。

 工場のDXを考える際、メンテナンスのデジタル化などから始めて、スマート工場を作りたいという企業もあるでしょう。

 まずはコストのかかる機械の故障率を下げるために、予知保全や是正保全、状態監視保全、予防保全など、あらゆるタイプの保全を実施し、IoTやフィールドサービス、リアルタイム在庫計画などのツールを使用する基盤を構築します。そうすることで、工場の敷地内の重要な機器をプロアクティブに管理できます。

 これにより「センサー・データ・インテリジェンスで資産のOEE(設備総合効率)を把握」「リアルタイムの遠隔測定で予期せぬダウンタイムを防止」「新たなIoTセンサーを搭載し、メンテナンスの可能性を積極的に通知」「AIを活用してデータのパターンを見つけ、メンテナンスを予測」などを実現します。

 続いてアフターマーケット領域です。OEMは製品販売から収益を得ますが、ビジネスモデルを革新し、継続的な収益源を確保する方法を模索することも重要です。製品を中心としたビジネスモデルから、顧客中心のモデルへの移行、すなわちプロダクト・アズ・ア・サービスの提供やサービス販売の多様化です。効果的な契約管理やサブスクリプション・ビリング、資産パフォーマンス管理によって、コストセンターをプロフィットセンターに変革することも重要です。

図14 短期間でバリューを実現するために(Microsoftの資料を基に筆者作成)

 現実問題として「OEM事業とサービス事業を管理するシステムが連携されていない」「サービス拠点やDC、店舗などにまたがる交換部品の需要予測が不正確」「柔軟性に欠ける在庫計画」などの課題に直面している企業もあるでしょう。

 そのような場合は「Microsoft SCM Center」が効果的です。フルフィルメントの最適化やプランニング、デリバリーまでのワークロードを最適化し、自律的なオペレーションに移行できます。

 シームレスな統合で単一ソースからリアルタイムでデータ主導の意思決定を行い、サプライチェーン全体の回復力を向上します。また、Power BIのダッシュボードを組み込めば、サプライチェーンのヘルスチェックをリアルタイムで把握できます。結果として「顧客維持率の向上」「収益性向上」「物流コスト削減」「製品開発リードタイム短縮」「意思決定のスピード・精度の改善」「在庫の需要と供給のバランス」などのメリットを享受できます。

 Dynamics 365はクラウドに移行するための俊敏性と基盤を提供します。Dynamics 365のソリューションは独自のコンポーザブルなソリューションであることから、既存のITインフラに簡単にボルトオンでき、レガシーシステムと連携可能です。

 最後にオムニチャネル領域を考えます。

図15 オムニチャネルの領域におけるバリューの実現(Microsoftの資料を基に筆者作成)

 オンラインやオフラインのマーケットプレースで顧客のニーズを満たしたい場合、シームレスな意思決定が顧客満足度向上に寄与します。こういったユニファイド・エクスペリエンスを生み出すには、多くのビジネスやシステムを相互運用する必要がありますが、これは簡単ではありません。

 小売業は利幅が少ないため、最適なキャッシュフローを維持するために在庫を回転させ続ける必要があり、季節的な需要に応じて予測を柔軟に変更する機敏性も求められます。しかし、現実は「サイロ化されたシステムで、適切な意思決定を行うためのリアルタイムのデータとインサイトが欠如」「需要の変化に適応する柔軟性に乏しい」「新しいビジネスモデルに適応できない」といった課題に直面している企業も多いようです。

 そのような場合にMicrosoft SCM Centerを活用すれば、サプライチェーンの可視性を高め、俊敏なオムニチャネル計画と流通プロセスを実現できます。これはサプライチェーンの混乱などを未然に回避することにつながります。

 変化するニーズに対応し、新たなビジネスモデルへ進化することで、顧客に快適なエクスペリエンスを提供できます。また、最適なエージェントの選択や必要な情報が網羅されたAIアシスタントツールの活用、在庫回転率の向上、ロジスティクスの最適化などを実現し、営業利益率を最大化しましょう。

AIで財務会計業務はどう進化していくのか

 最後に財務会計領域を見ます。

図16 財務会計管理になぜMicrosoftなのか(Microsoftの資料を基に筆者作成)

 近年、ビジネスの変化に対するERPソリューション導入は遅れが目立っています。変化に迅速に適用することは、よりスマートに仕事をこなしてパフォーマンスを発揮することにつながります。その中で、アジャイルなERPソリューションは不可欠です。

 管理部門にとって、組織の戦略的ビジョンを推進することは最重要課題です。しかし、ほとんどの担当者は手作業で複雑なアカウンタビリティや財務報告、コンプライアンスプロセスに頭を悩ませています。「Microsoft Dynamics 365 Finance」を活用してプロセスを自動化・合理化することで、最も重要なタスクに各担当者が集中できるようになります。

図17 管理用途になぜMicrosoftなのか(Microsoftの資料を基に筆者作成)

 Copilotを使用すれば、債権回収担当がデータ収集に費やす時間を短縮できます。また、AIがカスタマイズしたコンテンツを使用して、パーソナライズされた債権回収レターを送信できます。

 これは回収率の向上とキャッシュフローの改善に貢献します。また、Dynamics 365はサービスライフサイクル全体を通じてプロジェクトマネジャーとサービスデリバリーマネジャーをエンパワーし、手作業や定期的な作業依頼を自動化します。生産性を向上させ、効率的にサービスを提供できるでしょう。

図18 財務会計管理にMicrosoftが適しているワケ(Microsoftの資料を基に筆者作成)

 企業はシステムからインサイトを得るまでの時間を短縮したいと考えています。これにはキャッシュフローに関する洞察とインテリジェンスを活用し、コスト削減と最適化の機会を特定する必要があります。包括的で最新の財務データを推論する高度なAI機能であれば、担当者はAI主導の洞察と推奨を積極的に監視でき、データ分析に費やす時間を大幅に短縮できます。

 ここまでの話は幾つかの例にすぎませんが、Microsoftのビジネスアプリケーション領域には既に相当数のAI機能が内包されています。私たちはAIをチームメンバーに迎え入れ「ONE TEAM」を作る必要があります。

 企業が立案した戦略に基づき、AIを戦略遂行を共にするチームメンバーと捉えると、将来的には多くのAIが多岐にわたるアイデアを創出すると考えられます。そうなると、従業員とAIの関係性は「バラバラを認め合うのが面白い」というものに進化するはずです。

 また、ノールックパスやノールックキャッチができるDX(Developer Experience)をAIと共に創り上げれば、Do more with lessの実現に近づきます。いずれにせよ、AIが世界を生産性の停滞から脱却させる大きな可能性を秘めているのは間違いないです。

 連載第11回は、ローコード領域も含め、今回の話を掘り下げてAI機能を解説します。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ