Microsoftと挑む業務の自動化 具体的な方法を紹介(Microsoftのビジネスアプリケーション-AI編その2)DX 365 Life(11)(2/2 ページ)

» 2023年10月31日 08時00分 公開
[吉島良平ITmedia]
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ビジネス課題を解決するWebアプリやモバイルアプリをスピーディーに構築

 Power Platformはアプリケーションのモダナイズというニーズを満たします。

図7 システムのモダナイゼーションがビジネス課題を解決(出典:Microsoftの資料を基に筆者作成)

 近代的なアプリを構築する際には、ソリューションの構築やデプロイ、拡張、保守を支援するプラットフォームが不可欠です。当然、ユーザーはAIを活用してコードをかけるので、メンテナンスや技術的な負債、アクセシビリティーを考慮してどれだけ多くの持続可能なソリューションを実装できるかがポイントになります。

 これらのソリューションが全てのデータにアクセスし、適切なインサイトを得てアクションにつなげるには「Microsoft Dataverse」(以下、Dataverse)が有効です。そして、プラットフォーム内のセキュリティとガバナンスという側面からも、Copilotの使用は有効な手段です。Copilotであれば独自の言語を用いてソリューションを構築し、オプションを使用して多くのユーザーと接続できます。

図8 Dataverseについて(出典:Microsoftの資料を基に筆者作成)

 DataverseはAPIファーストなクラウドデータストアです。「Microsoft Power Apps」(以下、Power Apps)や「Microsoft Power Automate」「Microsoft Power BI」(以下、Power BI)にもそれぞれAPIがあります。中でもPower Platformのデータコネクターは1000以上にのぼります。

 これらのAPIは「Microsoft Visual Studio」や「Xamarin」で構築されたカスタムアプリケーションからも利用できます。豊富なAPIに加えてセキュリティにも力を入れており、適切な人が適切なデータを見れるようにアクセスを監査します。

 ロジック層にはカスタム、ビジネス、ロジックを実装できます。このロジックではデータにアクセスする全アプリケーションで一貫したビジネスロジックが保証され、Dataverseの“心臓部”であるデータ層に入ります。これにより、コードを書かずに複雑なビジネスデータの構造を定義できます。

 また、Azureが提供するストレージサービスを利用してデータを適切な場所に配置します。これによりリレーショナルデータからログデータ、ファイルデータ、検索インデックス、「Azure Data Lake」に保存されたデータまで、あらゆるデータをシームレスにサポートします。

 Dataverseは単独で展開できませんが、外部システムと統合するためにWebhookやデータエクスポートなどを提供しています。また、Dataverseは共通のデータモデルを通じてデータを標準化するため、同じデータを使用したアプリ構築と実行が容易になります。

 加えて、Dynamics 365のアプリケーションはDataverse上で構築されているため、データ統合なしでアプリケーションを構築できます。「Microsoft Fabric」を合わせればより効率的にデータを収集できます。また、「GitHub」やVisual Studio、MicAzureと合わせて開発者のための完全なツールチェーンも用意しています。

図9 Power Appについて(出典:Microsoftの資料を基に筆者作成)
図10 Microsoft Dataverseについて(出典:Microsoftの資料を基に筆者作成)

 Power AppsのCopilotはわずか数ステップで表を作成し、その上にアプリを開発できるアシスト機能があります。マウスとキーボードでドラッグ&ドロップすることも可能です。

図11 Power Appsについて(出典:Microsoftの資料を基に筆者作成)

顧客満足度を向上させるbot利用

 多くの企業が自動化したい領域の一つにカスタマーサービスがあります。この領域を自動化すれば、コスト削減や迅速な顧客対応が可能になり、顧客満足度の向上につながります。「Microsoft Power Virtual Agent」(以下、PVA)は会話型のAIを搭載しており、ビジネスプロセスや意思決定の改善に有益です。

図12 PVAについて(出典:Microsoftの資料を基に筆者作成)

 bot開発においては「カスタマイズによる予算超過」「多岐にわたるコンテンツの管理・維持」「基幹システムや業務システムとの連携」など、多様な課題が過去は多く見られましたが、昨今ではPVAのようなプラットフォームの出現で状況は改善されてきています。

図13 PVAの構成(Microsoftの資料を基に筆者作成)

 PVAはローコードのグラフィカルインタフェースを使用して質問やロジック、レスポンスといった複雑な会話を設計し、その後にキャンバス内でシームレスにbotをテストします。更にPVAのCopilotを使用すれば最新の自然言語プロンプトと生成AI機能によってユーザーに合ったbotを作成可能です。継続的な改善を目的にスロット/エンティティ充填、トリガー改善、自己学習機能を使用しています。

図14 bot利用のライフサイクル(出典:Microsoftの資料を基に筆者作成)

 また、重要なKPIを自動的に追跡して貴重なインサイトを得ることも可能です。Power BIを使用してカスタムアナリティクスでコントロールを強化すれば各種SNSやWebサイト、「Microsoft Teams」(以下、Teams)など、複数のチャネルにも公開できます。PVAのAIには「Azure OpenAI Service」が採用されています。

図15 Azure OpenAI Serviceを利用したPVAの概要(出典:Microsoftの資料を基に筆者作成)

 botは数秒で何千もの質問に回答でき、APIやその他のバックエンドシステムからデータを取得してチャットを行います。米国では先んじてCopilot機能を活用し、自然言語によるトピック構築やbotの設計、修正におけるAIサポートなどの実装が可能となっています。

自動化に効率よく挑戦するには

 私たち人間は創造的で戦略的な思考を得意としますが「アプリケーションがサイロ化され、アプリケーション開発のバックログが常に残る」「システム構築において導入やコスト超過が発生し、マネジャーの多くが紙を利用」「システムやデータの更新、維持、運用が難しく、データ収集と処理の自動化に取り組めない」など、実は多くの時間を反復的な手作業に費やしています。

 しかし現代はテレワークが一般的になり、より少ない労力で多くのことを実行しなければなりません。この実現にはどのように取り組むべきなのでしょうか。

 自動化というキーワードが出てきたら、下記のように「特定」「オートメーション」「オーケストレーション」「拡張・拡大」というプロセスを考えることが大切です。

図16 自動化実現の流れ(出典:Microsoftの資料を基に筆者作成)

 当然ながら組織横断での自動化にも対応しなければなりません。

図17 組織横断で自動化を進める(出典:Microsoftの資料を基に筆者作成)

 まず取り組むべきはタスクとプロセスのマイニングです。

図18 ツールの導入機会を特定する(出典:Microsoftの資料を基に筆者作成)

 組織によっては近代的なアプリケーションとレガシーシステムにまたがる自動化についても考える必要があります。

図19 セキュリティの自動化について(出典:Microsoftの資料を基に筆者作成)
図20 AIオートメーションによるデータ処理(出典:Microsoftの資料を基に筆者作成)
図21 会話型AIで開発を加速(出典:Microsoftの資料を基に筆者作成)

 デジタルプロセスオートメーション(DPA)はPower AutomateのAPIベースのオートメーションで、従業員やプロセス、テクノロジーにわたるシステムの合理化と最適化を可能にします。APIベースのオートメーションは市民開発者が強力なオートメーションを構築するのをサポートします。

図22 アプリケーションとデータの自動化(出典:Microsoftの資料を基に筆者作成)

 レガシーシステムの自動化にはロボティックスプロセスオートメーション(RPA)を活用します。

図23 レガシーシステムの自動化(出典:Microsoftの資料を基に筆者作成)
図24 スケールを考慮した自動化(出典:Microsoftの資料を基に筆者作成)

 IT部門はPower AppsやAzure、GitHubを活用し、アプリの負債やバックログを管理できます。プロの開発者はPower AppsコマンドラインインタフェースとVisual Studioプラグインを使用し、カスタマイズされたユーザーエクスペリエンス用のコンポーネントを構築できます。

 カスタムコネクターを作成して機能を拡張すれば、ビルド済みコネクターでは利用できないAPIやサービス、システムを利用できます。フュージョンチーム(開発者やユーザー、ビジネスリーダーで構成された分野横断的なチーム)でコラボレーションを再定義・改善し、組織全体で知識とスキルを活用することでインパクトのあるソリューションを構築できます。

 チームワークのハブであるTeamsを含むMicrosoft 365全体のアプリケーションを統合し、ワークフローをオートメーション化すれば、個人と組織のビジネスプロセスを合理化できます。まずはExcelやOutlookなど、頻繁に使うツールのに関わるルーティンタスクやプロセスを自動化し、ビジネスプロセスを合理化しましょう。

図25 オートメーションの実現(出典:Microsoftの資料を基に筆者作成)

AIを活用するための基本原則

 データ連携や自動化などのコラボレーションシナリオが増えると、AIの原則についても議論を行い、組織に合ったポリシーを確立する必要があります。Microsoftは約5年前にAIに関する作業を成功に導くべき6つの基本原則があると見解を示しています。しかし、同社はこれらの原則を定義するだけではなくスケールアップして運用することが大切だと考え、「ガバナンス」「AIの要件を標準化するためのルール」「トレーニングやベストプラクティス」「実施していくためのツール」について継続的な審議を行っています。

図26 コラボレーション可能なローコード(出典:Microsoftの資料を基に筆者作成)

 MicrosoftのローコードとAIを活用すれば、個人や組織のビジネス課題を解決するソリューションを生み出せます。

 RWC 2023で日本は27対39でアルゼンチンに敗れ、決勝トーナメントに進出できませんでした。TVやパブリックビューイングなどで観戦された方々は多かったと思います。結果は負けでしたが、素晴らしい試合でした。

 実際に現地に行って観戦した身としては、この勝敗は点差以上に「サポーターの応援の差」にあったと感じています。アルゼンチンサポーターはサッカーワールドカップでの応援経験も豊富で、情熱的な応援を展開していました。第10回で「D&I」について記載しましたが、日本代表もD&Iへの取り組みをすすめており、サポーターが試合前に「君が代」を歌うだけでは盛り上がりに欠けます。

 海外の大規模イベントの楽しみ方を知らない日本人が多いのも事実で、現場に届く応援歌が必要だと感じました。このような現実はIT現場でも同じで「私たちが働く企業では経営側から応援の声は現場に十分届いているのだろうか」と考える機会になりました。次回のRWCは2027年にオーストラリアで開催されます。日本代表にはPDCAを回し、海外でのベスト8(グループリーグ突破)を実現してほしいものです。

 はやいもので、この連載がはじまってから1年が経過しようとしています。次回はこれまでの内容を振り返り、読者の方々がMicrosoftのビジネスアプリケーション領域の知識を高められるような情報をお届けします。

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