米飲料メーカーのERP導入 上手な製品選定に必要な考え方とは(2/2 ページ)

» 2023年12月15日 08時00分 公開
[Jim O'DonnellTechTarget]
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必要条件を満たしたのは「Dynamics 365 ERP」

 ERP導入を経験したことがないTalking Rainがその不足を補うには、自社に最適なSIerとERPを組み合わせることが重要だった。

 「われわれの念頭にあったのは、ソリューションプロバイダーに向けて、どんなプロジェクトに関わることになったのかをできるだけ明確にすることだった」とホーナー氏は言う。

 最終選考に残ったのはERP「Microsoft Dynamics 365 for Finance and Operations」とSIerのInfosys、ERP「Oracle Cloud Fusion」(以下Cloud Fusion)とSIerのDeloitte。最終的にはDynamics 365とInfosysの組み合わせを選んだ。

 ホーナー氏によると、Talking RainはそれまでBusiness Centralを使っていたが、Dynamics 365を選んだのは同システムの特性ゆえであり、Microsoft製品だからというわけではないという。Cloud FusionにもDynamics 365にもTalking Rainが求める主な要件を満たす性能はあったが、同社の将来的な目標により合致しているのはDynamics 365の方だった。

 「Dynamics 365はここ数年で大きな進歩を遂げている。Microsoftは同システムの性能を向上させ、ユーザーの期待に応えることに成功している。技術的な観点から見て、Dynamics 365には真の拡張性がある。クラウドプラットフォーム上に構築されたシステムというよりむしろ“真のクラウドプラットフォーム”だ」(ホーナー氏)

AIの可能性

 ホーナー氏によると、Talking Rainが将来求めるような、分析やBI(ビジネスインテリジェンス)、AIの新たな可能性といったものへの期待に、ERPが応えられるかどうかが何よりも重要だったという。

 Dynamics 365を利用することで、同社は分析に使うデータをプラットフォーム内に保存できる。複数のシステム間でデータを転送し、DWHに入れて保管する必要はもうなくなる。これによりBIの拡張性が高まり、リアルタイムに近い分析が可能になると同氏は言う。

 AIは近い将来、Talking Rainなどの中堅企業を含むさまざまな企業に不可欠なものになるとホーナー氏は予想している。

 「MicrosoftのAIへの投資と、CopilotによるAIへのアプローチは、人々がAIについて抱く不安をいくらか取り除いてくれる。AIそのものと自社製品の接続性がMicrosoftの現在の投資対象だ」(ホーナー氏)

 Talking Rainは今後、AIの上手な使い方を探っていくことになるが、ホーナー氏によれば、その前にビジネス勝ちとコストに関する疑問を解決しなければならないという。ERP導入プロジェクトと同様、ここでも鍵を握るのは計画だ。AIを利用する前に、自社データの整理が必要になる。

 「今はその基礎固めに取り組んでいる。Dynamics 365を使い始めてからさまざまな“チャンス”が見つかるだろう。例えば財務分野における売掛金がそうで、チャンスはそこまできている。ユースケースも分かっているし、プロセスも適切だ」(ホーナー氏)

 Talking RainとSIerであるInfosysは、Dynamics 365の導入に手間取っているわけではない。プロジェクトの開始は23年6月で、現時点では24年夏の利用開始を目指している。しかし、システムの導入が思わぬ方向に進んでしまうこともある。ホーナー氏もそれを理解している。だからこそTalking Rainは、プロジェクトを軌道修正しながらうまく進めることに集中するための対策にも取り込んでいる。

 「もっと早く実現できたかもしれないが、われわれは運用準備テストをしてユーザー受入の観点だけでなく、正常に稼働しないビジネス機能がないかを確かめていた。正しい手順を踏むことが大切だ。私はこれまでに何度も、こうしたプログラムが期待外れの結果に終わるのを見てきた」(ホーナー氏)

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