SAPが強化した生成AIアシスタントJouleがクラウドERP導入につながるワケ

SAPは生成AIアシスタントのJouleをビジネスソリューション全体に組み込み、ERPの移行を企業に促している。JouleがクラウドERP導入を支援する理由とは。

» 2024年07月01日 08時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

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CIO Dive

 ERP大手のSAPは2024年6月4日(現地時間、以下同)に開催された年次イベント「SAP Sapphire」で、ERPの移行を促進するための継続的な取り組みとして、クラウドベースのビジネスソリューション全体に生成AI機能を導入したと発表した(注1)。

 生成AIはERP導入にどう役立つのか。そして、生成AI機能の実装スケジュールとは。

生成AIアシスタントJouleがどのように移行を支援する?

 SAPは生成AIアシスタント「Joule」をポートフォリオ全体に展開し、2024年中に支出管理機能を持つ「SAP Ariba」と分析ツール「SAP Analytics Cloud」に加える予定だ。JouleはERP導入のため、SAPのコンサルティングのノウハウを活用して訓練されている。

 同社はまた、Jouleを「Microsoft Copilot for 365」や「Google Cloud」のAIアシスタント「Gemini」、そして「Google Cloud Cortex Framework」のデータクラウドと統合する予定だ(注2)。さらに同社はAWS(Amazon Web Services)のマネージドサービス「Amazon Bedrock」との統合によってLLM(大規模言語モデル)メニューを拡大するとも発表している(注3)(注4)。

 SAPは顧客をSaaSに誘導しようと生成AIとの統合に注力しているという。。同社は2024年1月、ERPの移行を推進し、クラウドでビジネスに特化したAIソリューションを展開するために数十億ドル規模の変革を開始した(注5)。

 2024年上半期、SAPはIBMと提携して業界特有のユースケースを開発し、また半導体メーカーNvidiaとの提携ではLLMベースのERP自動化機能や人事・カスタマーサポートのアシスタント、デジタルトランスフォーメーションツールを展開した(注6)(注7)。

 SAPはさらに、Jouleのコーディングツールを実行するためにNvidiaのハードウェアを活用し、その基盤モデルを使用してERPのモダナイゼーションと移行を支援するコンサルティングアシスタントを構築する。

 LLMソリューションは、SAPのAI戦略の一部にすぎない。同社はAWSとの提携によって、AIスタートアップ企業Mistral AIのLLMを「SAP AI Core」リポジトリに追加し、サードパーティーの基盤モデルのライブラリを蓄積している。しかし、JouleがSAPのERPソリューションのポートフォリオの中心であることに変わりはない。

 「Jouleはわれわれの新しいフロントエンド、新しいUXになるだろう」とSAPのクリスチャン・クライン氏(CEO)は2024年6月4日の基調講演で語った。

 クライン氏は「SAPはJouleの機能を構築するために、3億以上の顧客のクラウドソフトウェアの利用状況を分析し、2024年末までに最も一般的なタスクの80%をAIアシスタントが管理するようになる」と述べた。

 同氏によると、Jouleの機能性は注文管理や請求書作成、財務コンプライアンスレビューにまで拡大し、人事やサプライチェーン、持続可能性に関する洞察を提供するように調整されるという。

 Microsoft Copilot for 365の統合によって、Jouleの機能には50のユースケースが追加され、SAPとMicrosoftは2024年末までにこの数を倍増させる計画だとクライン氏は述べた。

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