マクロ経済の不透明感が強まる中で、2026年度の国内IT需要の動きはどうなるか。富士通とNECの最新受注状況や業績予想を踏まえた両社の見立てから考察する。
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企業においてはAI活用をはじめとするDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む一方、国際情勢の変動などによるマクロ経済の不透明感が強まっている。2026年度(2027年3月期)の国内IT需要はどうなるか。国内ITサービス事業大手の富士通とNECが相次いで発表した2025年度(2026年3月期)の決算から、通期および第4四半期(2026年1〜3月)の受注状況と、それを踏まえた2026年度の業績予想をチェックしながら、両社の見立てを基に考察する。
富士通が2026年4月28日に発表したITサービス(同社は「サービスソリューション」と呼ぶ)における国内受注状況は、通期で前期比102%(契約期間が複数年に及ぶ大型商談を除くと前期比108%)、第4四半期で95%(同107%)となった。
業種別では、エンタープライズビジネス(製造業などの産業や流通・小売)が通期で前期比101%(大型商談を除き同106%、第4四半期で同101%)、ファイナンスビジネス(金融・保険)が同94%(同105%、同92%)、パブリック&ヘルスケア(官公庁・自治体・医療)が同105%(同108%、同109%)、ミッションクリティカル他が同102%(同113%、同70%)だった(表1)。
この受注状況について、同社の磯部武司氏(代表取締役副社長 CFO=最高財務責任者)は発表会見で次のように説明した。
「大型商談を除いた伸び率が巡航速度なので通期108%伸長と、DXを中心に年間を通して旺盛な需要が継続したと見ている。エンタープライズビジネスは製造業において先行きの不透明感から運用や維持領域でのIT投資を絞り込むケースも見られたが、この分野全体としてのDX需要は拡大基調で推移した。ファイナンスビジネスも前年度の大型商談を除けば105%と伸長している。パブリック&ヘルスケアは全方位で伸長した。ミッションクリティカル他は特にナショナルセキュリティ(防衛関連)が大きく伸びた。国内のサービスソリューションの受注は前年度からの好調な推移を継続している」
富士通はこうした受注状況を踏まえ、2026年度の業績予想も示した。サービスソリューションとしては、売上高に相当する売上収益として前期比5.2%増の2兆4700億円、営業利益率17.4%を見込む。内訳は、エンタープライズ(製造、流通・小売など)が同8.5%増の9400億円、パブリック(官公庁・自治体、防衛、金融など)が同3.3%増の1兆5300億円だ。全体のうちエンタープライズが約4割、パブリックが約6割を占める。なお、この業績予想はグローバルの数字で、国内は全体の約8割となる。同社がサービスソリューションの業績予想をこのように分けて見せたのは今回が初めてだ。同社の事業構造を確認できる(表2)。
磯部氏は2026年度の国内IT需要の見通しについて「2025年度に引き続き、2026年度もほぼ全方位で拡大すると見ている。国際情勢の変動による先行きの懸念についても、今のところは大きな影響はない。ただ、先行きが不透明ではあるので、これからも変動を注視し、しっかりとリスクヘッジしながらビジネスを進めたい」と述べた。
また、同社の時田隆仁氏(代表取締役社長 CEO《最高経営責任者》)は「AIをはじめとしたテクノロジーの進化に対し、われわれベンダーはもちろん、お客さまの感度も非常に高まっていると強く感じている。テクノロジー企業としてしっかりとお役に立てるように尽力したい」と、改めて意欲のほどを示した。
富士通と同じく2026年4月28日にNECが発表したITサービスにおける国内受注状況は、通期で前期比3%減(大型案件などを除いた実質ベースでは前期比1%増)、第4四半期で2%減(同2%増)となった。
業種別では、パブリックが通期および第4四半期とも前期並み、エンタープライズが通期で前期比4%減(第4四半期で前期比1%減)、子会社他は通期で同5%減(第4四半期で同4%減)だった。エンタープライズの内訳は、金融が同1%増(第4四半期で前期比5%増)、製造が同2%減(同前期並み)、流通・サービスが同8%増(同7%減)だ(表3)。
この受注状況について、同社の森田隆之氏(取締役 代表執行役社長 兼 CEO)は発表会見で次のように説明した。
「大型案件などを除いた実質ベースでは通期も第4四半期も増加しており、DXを中心とした需要は前年度から引き続いて堅調に推移している。パブリックは自治体システムの標準化や消防防災案件がピークアウトする中で、中央省庁向けの大型案件を獲得し、高水準だった前年度の受注規模を維持できた。エンタープライズは第4四半期で金融を中心に新規案件を獲得でき、前期比4%減と記されている通期は実質ベースで前期並み、第4四半期では2%増となった。子会社他もアビームコンサルティングが好調に推移しており、前期比4%減と記されている第4四半期は実質ベースで2%増となり、通期で見ても前年度から引き続き高水準を維持している」
NECもこうした受注状況を踏まえ、2026年度の業績予想を示した。国内ITサービスとしては、売上高に相当する売上収益として前期比6.5%減の2兆350億円、営業利益率15.3%を見込む。減収の要因は「パブリック領域のピークアウトの影響で1000億円、部材リスクやマクロ経済リスクを考慮して1000億円の減収を織り込んでいる」(森田氏)からだ。ただし、「前年度と同様に受注を積み上げ、減収の影響を極小化する」(同)としている。同社の国内ITサービス事業を牽引するのは、DX支援事業として注力している「BluStellar」だ。2026年度は前期比19.1%増と、従来のベース事業(前期比18.7%減)に取って代わる形が一層鮮明になる(表4)。
森田氏は2026年度の国内IT需要の見通しについて、次のように述べた。
「2026年度はAIが社会に本格的に実装される大きな節目になると見ている。しっかりと実装するためには、AIそのものだけではなく、それを安全に動かすセキュアなクラウド基盤やAI活用を前提としたデータ基盤、AIエージェントの管理基盤などの整備が不可欠だ。さらに、AIを深く活用するためにはドメインナレッジが求められる。このドメインナレッジこそ、日本が得意とするところだ。AI活用は日本企業にとって絶好のビジネスチャンスになると確信している」
富士通とNECの今後の国内IT需要の見立ては、さまざまなリスクをどう捉えるかで少しばかり違うようだが、両社とも前年度からの高水準が続くという見方では一致しているようだ。
最後に、今回の取材でインパクトが最も強かったのは、やはり需要見通しにおける森田氏の発言だ。実は、筆者がNECの決算会見で需要見通しについて質問した際、「日本企業へメッセージを」と付け加えた。それに応えてもらった形だ。
「2026年度はAIが社会に本格的に実装される大きな節目になる」との認識を持って、ベンダーもユーザーもこれからAIをどう取り組むかを考え、部分最適と全体最適の両方を見据えながら、企業競争力を高めるためにもとにかくスピーディーに動くことが大事だ。これは紛れもなく経営判断であることを強調しておきたい。
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
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