富士通、NECの直近決算から探る 2026年国内IT需要の行方Weekly Memo

世界情勢や経済、技術がめまぐるしく変化する中、2026年の国内IT需要はどう動くか。深刻化が懸念されるIT人材不足の現状はどうか。ITサービス大手の富士通とNECの最新受注状況から探る。

» 2026年02月02日 17時30分 公開
[松岡 功ITmedia]

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 グローバル、エコノミー、そしてテクノロジーの情勢がめまぐるしく変化する中、2026年の国内IT需要の動きはどうなるか。国内ITサービス事業大手の富士通とNECが相次いで発表した2025年度(2026年3月期)第3四半期(2025年10〜12月)の決算から受注状況に注目し、見通しを探った。

「2026年の需要は前年比5〜7%伸長へ」(富士通)

 富士通が2026年1月29日に発表したITサービス(同社は「サービスソリューション」と呼ぶ)における第3四半期の国内受注状況は、全体で前年度同期比106%、第1四半期からの9カ月累計(2025年4〜12月)で同104%(契約期間が複数年に及ぶ大型商談を除くと同107%)と伸長した。

 業種別ではエンタープライズビジネス(製造業などの産業や流通・小売)が前年同期比107%(9カ月累計で同100%、大型商談を除き同106%)、ファイナンスビジネス(金融・保険)が同82%(同95%、同101%)、パブリック&ヘルスケア(官公庁・自治体・医療)が同95%(同104%、同108%)、ミッションクリティカル他が同152%(同125%、同115%)だった(表1)。

表1 富士通の各分野における2025年度第3四半期および第1四半期からの9カ月累計の国内受注状況(出典:富士通の決算資料)

 この受注状況について、同社の磯部武司氏(代表取締役副社長 CFO=最高財務責任者)は発表会見で次のように説明した。

富士通の磯部武司氏(代表取締役副社長 CFO)(筆者キャプチャー)

 「全体として、四半期ごとに前年同期から伸長しており、9カ月累計でも104%伸長となった。各四半期には契約期間が複数年に及ぶ大型商談の獲得も含まれている。それは大変良いことだが、一方で四半期ごとの傾向が見えにくくなっているところもあるので、大型商談を除いた伸長率を表(表1)の右端のカッコ内に参考として記載した。この数字が市場トレンドの巡航速度のイメージで、国内全体では9カ月累計で107%伸長し、全ての業種で前年同期を上回っており、DX(デジタルトランスフォーメーション)関連を中心に旺盛な需要が継続している」

 業種別には、「エンタープライズビジネスは、第3四半期で受注が拡大した。個別に見ると、流通が底堅く推移した。製造業はお客さまによって先行きの不透明さを懸念してIT投資を絞り込むケースも見られるが、DX関連を中心に全体としては拡大基調で推移した。ファイナンスビジネスは、9カ月累計で前年同期比95%だが、前年同期の金融向け大型商談を除けば101%とプラスになっている。パブリック&ヘルスケアは、第2四半期に公共向けの大型商談を獲得したので9カ月累計では伸長している。ミッションクリティカル他は、第3四半期にナショナルセキュリティの大型商談を獲得したので大幅に伸長した」とのことだ。

 会見の質疑応答で2026年の国内IT需要の見通しについて聞いたところ、磯部氏は次のように答えた。

 「現状を上回る勢いで拡大するとまでは言わないが、これまでの旺盛な需要が続くものと見ている。例えば、モダナイゼーションの案件については目白押しの状態で、特に昨年秋頃からSE(システムエンジニア)の稼働状態がひっ迫しており、AIの適用を急がないと全ての需要に応えられないほどになっている。こうした状況は2030年頃まで続くと見ているので、2026年は現状と同様に全体として前年比5%から7%程度伸びると予測している」

「2026年の需要は引き続き堅調に推移」(NEC)

 富士通と同じく2026年1月29日にNECが発表したITサービスにおける第3四半期の国内受注状況は、全体で前年同期比1%減となった。9カ月累計の数字については明示していない。

 業種別では、パブリックが前年同期比1%減、エンタープライズが同12%増、子会社他は同3%減だった。エンタープライズの内訳は、金融が同10%増、流通・サービスが同23%増と大きく伸びた一方、製造は同6%減だった(表2)。

表2 NECの各分野における2025年度第3四半期の国内受注状況(出典:NECの決算資料)

 この受注状況について、同社の藤川修氏(取締役 代表執行役 Corporate EVP 兼 CFO)は発表会見で次のように説明した。

NECの藤川修氏(取締役 代表執行役 Corporate EVP 兼 CFO)(筆者キャプチャー)

 「第3四半期は全体として前年同期比1%減となったが、法人向けPC販売機能の移管や低収益ライセンス案件の見直しなどの特殊要因による影響を除けば同4%増となり、DX関連を中心とした需要は引き続き堅調に推移している」

 業種別には、「パブリックは、自治体システムの標準化および消防防災案件の受注がピークアウトして前年同期比8%減となったが、前年からの高水準での推移が続いているというのが実態だ。エンタープライズは、流通・サービスを中心として順調に案件を獲得し、需要は堅調に推移している。子会社他は特殊要因を除けば同3%増で、アビームコンサルティングが同11%増と引き続き好調を維持している」とのことだ。

 会見の質疑応答で2026年の国内IT需要の見通しについて聞いたところ、藤川氏は次のように答えた。

 「受注動向の表(表2)には示していないが、特殊要因を除いた第3四半期の数字は、パブリックが前年同期比8%減から同4%減、エンタープライズが同12%増から同15%増、その内訳である金融は同10%増から同13%増、流通・サービスは同23%増から同27%、製造は同6%減から同4%減となる。こうしたことから、需要は引き続き堅調に推移していると先ほど述べたが、2026年もこの状況が続くと見ている」

「切羽詰まったSE不足」にも言及あり

 以上、富士通とNECの直近四半期の国内ITサービスの受注状況を踏まえた上で、2026年の国内IT需要について両社のCFOに見通しを聞いた。磯部氏の「これまでの旺盛な需要が続く」と、藤川氏の「需要は引き続き堅調に推移する」との表現の仕方に違いはあるものの、見通しが明るいことは間違いないようだ。磯部氏の「前年比5〜7%伸長」とのコメントも印象に残った。

 もう一つ印象的だったのは、磯部氏の「SEの稼働状態が逼迫(ひっぱく)しており、AIの適用を急がなければ全ての需要に応えられないほどになっている」との発言だ。これは他のITサービス事業者からも耳にする話だ。これからAI時代が訪れることは誰しも予感し、AIをどう生かすかが焦点となっているが、SEの話はもっと切羽詰まっている。

 だが、ここを何とか乗り越えれば、このケースを足掛かりに「AIがDXをさらに推し進める」との印象を世の中に知らしめることができるのではないか。

 そして、情勢がめまぐるしく変化する「グローバル(Grobal)」「エコノミー(Economy)」「テクノロジー(Technology)」の3つの言葉の頭文字を並べた「GET」の気流に柔軟に対応しながら、AI時代のエクセレントカンパニーを目指すと。そんな企業が日本からもどんどん出現してほしいものである。

著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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