国内IT需要の今後の動きはどうなるか。モダナイゼーションやAI活用の需要は増えているのか。富士通とNECが発表した直近四半期決算での受注状況と両社CFOの発言から探る。
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「2025年の崖」を迎えた年、企業の老朽化システムのモダナイゼーションやAI活用はどの程度進んでいるのか。
国内ITサービス事業大手の富士通とNECが相次いで発表した2025年度(2026年3月期)第1四半期(2025年4〜6月)の決算から受注状況および両社CFO(最高財務責任者)の発言に注目し、今後の国内IT需要の見通しを探る。
富士通が2025年7月30日に発表したITサービス(同社は「サービスソリューション」と呼ぶ)における第1四半期の国内受注状況は、全体で前年同期比101%となった。
業種別ではエンタープライズビジネス(製造業などの産業、流通、小売)が2024年同期比97%、ファイナンスビジネス(金融・保険)が同119%、パブリック&ヘルスケア(官公庁・自治体・医療)が同96%、ミッションクリティカル他が同114%だった(表1)。
この受注状況について、同社 代表取締役副社長 CFOの磯部武司氏は会見で次のように説明した。
「全体として微増となったが、前年同期の高水準を上回っており、国内IT需要は引き続き力強く商談の拡大傾向に変化はない」
業種別には「エンタープライズビジネスは、前年同期に複数年の大型商談を獲得した反動で3%減となったが、それを除くと9%増と伸びている。DX(デジタルトランスフォーメーション)やSX(サステナビリティトランスフォーメーション)関連、モダナイゼーション案件などの引き合いは引き続き、旺盛だ。特に流通分野が好調だった。ファイナンスビジネスは金融機関向けの営業店システムで大型の更新商談を獲得し、2桁の伸びとなった。パブリック&ヘルスケアは、前年同期に官公庁向けの大型商談を獲得した反動でマイナスとなったが、今後に大型商談の獲得が見込まれており、通年では成長軌道にある。ミッションクリティカル他は、ナショナルセキュリティを中心に引き続き好調に推移している」と説明した。
今後の需要については、「第2四半期以降、今年度に受注の獲得を目指している商談パイプラインの規模は前年の同時期に比べて115%を上回る水準に拡大している。デリバリーリソースに多少の心配はあるが、しっかりと対処しながら着実な受注拡大につなげていきたい。また、事業環境を取り巻く環境は引き続き不透明感があることから、楽観視することなく気を引き締めていきたい」との見方と姿勢を示した。
磯部氏はさらに、AIのインパクトについて次のように述べた。
「当社も長年にわたって研究開発を続けてきたAIが、幅広い実用に向けて次第に花が開きつつある。AIの活用はまだ始まったばかりで、これからあらゆる分野で生産性や品質の向上、さらには新しい価値を生み出すことに使われていくだろう。当社でもさしずめ懸念されるデリバリーリソースにAIを効果的に適用して、お客さまにサービスをきちんとお届けできるようにしたい。今後、AIがどれくらいのスピードでどう進化するかは分からないが、現時点でのAIを取り入れていくだけでもビジネスに相当の効果を上げられるはずだ。急速に普及拡大すると期待している」
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