AIエージェントの普及を左右する「2つのカギ」は?【調査】

AIエージェントのPoCを進めていたり、導入を考えていたりする企業が増えている。ノークリサーチの調査で明らかになった、AIエージェントの普及を左右する2つのカギとは。

» 2025年05月07日 08時00分 公開
[金澤雅子ITmedia]

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 「AIエージェント活用元年」と言われる2025年。導入したものの結局使いこなせなかった、という事態を避けたいと考える企業も多いだろう。そこで、AIエージェントの普及を左右する2つのカギを紹介する。

AIエージェントを重視する企業の共通点

 ノークリサーチは経営やIT管理、運用に携わる職責にあるビジネスパーソン1304人を対象として2025年の業績とIT支出の見通しについてのWebアンケート調査を実施した(2025年1月6日実施)。

 同社は、AIエージェントを「ユーザーとの自然な対話を通じて情報システムのタスクフローを実行または定義できるアプリケーション」と定義している。

 同調査の「2025年の業績やIT支出の増減の背景、要因となる事柄」という設問に対し、「AIエージェント」と回答した企業の内訳が図1だ。

図1 2025年の業績やIT支出の増減の背景、要因となる事柄(出典:ノークリサーチのプレスリリース)

 年商500億円を超える大企業の約1割がAIエージェントを2025年の業績やIT支出に大きく関係する要素とみている。一方、小規模企業層(年商5億円未満)や中小企業層(年商5〜50億円)、中堅企業層(年商50〜300億円)で同様の回答を選択した割合は5%に届かなかった。

 同調査によると、IT投資の増減とAIエージェントを重要視するかどうかは相関しているようだ。

 2025年のIT支出に対する回答をまとめた図2によると、AIエージェントを2025年の重要項目と考えている企業はIT投資を「増加」させる割合が「減少」させる割合よりも大きい。つまり、IT支出を増やす企業はAIエージェントを重視する割合が相対的に高いようだ。

図2 年商500億円以上と年商5億円未満の企業におけるIT支出の増加/減少別集計(出典:ノークリサーチのプレスリリース)

AIエージェントが内製化や人材のリスキリングを促進

 冒頭でも触れたように、AIエージェントを導入しても、実際に利用されなければ無駄な投資になってしまう。AIエージェントの普及を後押しする要因は何か。

 ノークリサーチが2025年初頭に実施した調査から「2025年の業績やIT支出の増減の背景、要因となる事柄」の相互の関連性をベイジアンネットワーク分析で明らかにした確率推論モデルが図3だ。

図3 ベイジアンネットワーク分析による「2025年の業績やIT支出の増減の背景/要因となる事柄」の相互関連性の確率推論モデル(出典:ノークリサーチのプレスリリース)

 図3から、AIエージェントを表す項目(Q2_17)と関連深い3つの項目「人材のリスキリング」(Q2_7)、「現時点では判断できない」(Q2_20)、「IT内製化」(Q2_19)を抜粋したのが図4だ。

 「人材のリスキリング」を重視する割合が約5割に高まるとともに、「現時点では判断できない」の回答が極めて少数になった(つまり、目指すべき方向性が明らかになった)と想定した時に何が起きるか」を推論(シミュレーション)する。

 その結果、AIエージェントを重視する割合は現状の4.8%から13.2%へと高まり、IT内製化にもその影響が波及して、内製化を重視する割合が7.0%から12.1%に高まるという。

図4 「人材のリスキリング」を重視する割合が約5割に達した時に「現時点では判断できない」(Q2_20)の回答が極めて少数になった(=目指すべき方向性が明らかになった)と想定した時に何が起きるか(出典:ノークリサーチのプレスリリース)

AIエージェントの普及に向けた2つのカギ

 ノークリサーチはAIエージェントを次の2つに分けて捉えている。

  • 「狭義のAIエージェント」: タスクフローの実行だけでなく、自動に定義される
  • 「広義のAIエージェント」: タスクフローの実行のみを自動化する。定義は手動で設定する必要がある

 ユーザーが自然な対話で自動実行の指示を出せる点は同じだが、処理の流れを対話的な指示に基づいて自律的に定義できるかどうかが異なる。

 AIエージェントの普及についてノークリサーチは「狭義のAIエージェント」は高い開発力が要求されるため、直近では「広義のAIエージェント」の方が数は多くなるとノークリサーチは予想する。

 ITベンダーが小規模企業向けにタスクフローを個別定義するのは、収益や労力のバランスを考えると難しい。そのため、ユーザー企業におけるリスキリングに焦点を当てて、「ツールの助けを借りながら、自社で利用する製品やサービスのAPI連携を定義できるスキル」を持つ社内人材を育成することが重要になるというのがノークリサーチの見立てだ。

 一方、AI技術の進歩によって「狭義のAIエージェント」が早期かつ安価に提供され、AIエージェントを重視する割合が3割超に達した時に何が起きるかを推論した結果を示すのが図5だ。

図5 AI技術の進歩によって「狭義のAIエージェント」が早期かつ安価に提供され、AIエージェントを重視する割合が3割超に達した時に何が起きるか(出典:ノークリサーチのプレスリリース)

 この図からAIエージェントがIT内製化や人材のリスキリングを促進する役割を果たすことが確認できる。

 ノークリサーチはこの結果を受けて、AIエージェントの普及に向けた取り組みとしては、「広義のエージェント+人材のリスキリング」と「狭義のAIエージェント」の2通りが考えられると分析する。

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