AWSがFINOSに参加し、金融業界のオープンソース技術と標準化の推進に拍車を掛ける。ESG報告の標準化や気候データコモンズなどのプロジェクトが強化され、業界の革新が進む見通しだ。
この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。
オープンソース技術の普及と標準化を推進する非営利団体であるThe Fintech Open Source Foundation(以下、FINOS)は2024年6月26日(現地時間)、ハイパースケーラーのAWS(Amazon Web Services)、金融市場インフラのDepository Trust & Clearing Corporation(DTCC)、チップメーカーのIntelを含む7社を新たなメンバーとして迎え入れたと発表した(注1)。
AWSは競合ハイパースケーラーのMicrosoftとGoogle Cloudと共にFINOSアライアンスに加わった。その狙いは何か。
FINOSはCapital One Financial、Citigroup、The Goldman Sachs Group、JPMorgan Chase、Morgan Stanleyを含む多くの金融サービス企業や、テクノロジープロバイダーのRed Hat、Databricks、CloudBeesから支持を得ている。
同団体のブリエレ・コロンブロ氏(エグゼクティブディレクター兼The Linux Foundation Europeゼネラルマネジャー)は、「AWSはFINOSに参加することで、オープンソースの取り組みを通じて金融サービス業界のテクノロジーエコシステムを強化できる」と電子メールで述べている。
オープンソースソフトウェアはコスト削減とセキュリティの強化、ベンダーロックインを制限するという約束を実現するために、プロバイダーや企業全体から支持される必要がある。最大のハイパースケーラーであるAWSを仲間に加えることで、成長を続けるFINOSアライアンスはその目標達成に一歩近づいた。
新しいメンバーの加入により、同団体は金融サービス技術標準を巡り協力し合う共同体としての地位が強化されるとコロンブロ氏は言う。また、より広い視点で考えるとオープンソースコミュニティーにとっての新たな功績でもある。
FINOSはより大きな組織であるThe Linux Foundationの一部であり、2023年10月にAWSを仲間に迎えたFinOps Foundationの付属組織でもある(注2)。FinOps FoundationにはMicrosoftとGoogle Cloudもメンバーとして名を連ねている。このコンソーシアムは2024年6月20日、FinOps Open Cost and Usage Specification(FOCUS)フレームワークのバージョン1.0の一般提供を発表した(注3)。これは、クラウドコスト管理および使用状況の標準化を目的としたフレームワークだ。
FINOSは、コンプライアンスコントロールを合理化するオープンスタンダードの「Common Cloud Controls」(C3)プロジェクト、デスクトップアプリケーションの相互運用性を高めるためのコンソーシアムである「Financial Desktop Connectivity and Collaboration Consortium」(FDC3)、そして2024年5月に発足したAIガバナンスワーキンググループなど、幾つかの重要な取り組みを進めている(注4)(注5)(注6)。
銀行業務がデジタルファーストのビジネスに移行する中、金融サービス企業はオープンソースのイノベーションを加速させ、技術的負債を解消する手段として受け入れている(注7)。
「金融サービスの価値の流れは急速に進化しており、能力の専門化が進んでいる。その結果、統合されたモノリシックシステムからコンポーザブルシステムへと移行しつつある」とInfo-Tech Research Groupのダビド・トムリェノビッチ氏(プリンシパルリサーチディレクター)は「CIO Dive」に語った。
FINOSやBanking Industry Architecture Network e.V.(BIAN)のような非営利団体は、フィンテックソリューションの標準化と相互運用性を目指していると同氏は付け加えた。
AWSは「HTC-Grid」と呼ばれるクラウドベースのオープンソースの高性能コンピューティングソリューションをFINOSのポートフォリオに提供したという。
また、FINOSはThe Linux Foundationがオープンソースの気候変動に取り組むコミュニティーを金融サービス部門に統合したことで、その範囲をサステナビリティにも拡大した(注8)。現在のOS-Climateプロジェクトには、気候データコモンズプラットフォーム、ESG報告仕様標準および気候リスクとレジリエンスツールキットなどがあり、これらがFINOSのポートフォリオに追加されたとThe Linux Foundationは発表の中で述べている。
The Linux Foundationによると、合併の目的は銀行と金融におけるESG報告のための共通技術と標準を作成することだ。
この合併は、オープンソースの価値を開発者コミュニティーの枠を超えて拡大するという、FINOSのより幅広い取り組みと一致している。
「われわれのオープンソースとオープンスタンダードのプロジェクトの戦略的価値は、今や金融機関の技術部門やデータエンジニアリング部門だけでなく、ビジネスの最も重要な分野で直接的に広く認識されている」(コロンブロ氏)
(注1)FINOS WELCOMES SEVEN FINANCIAL SERVICES AND TECHNOLOGY LEADERS, ACCELERATING AI, CLOUD AND INTEROPERABILITY STRATEGIC INITIATIVES(FINOS)
(注2)Can FinOps save cloud from itself in 2024?(CIO Dive)
(注3)FinOps Open Cost and Usage Specification (FOCUS) 1.0 is Generally Available, Leading Clouds Launch Native Support(PR Newswire)
(注4)FINOS moves to rationalize financial industry cloud controls(CIO Dive)
(注5)Financial Desktop Connectivity and Collaboration Consortium(FINOS)
(注6)Financial industry alliance pushes for collective AI governance framework(CIO Dive)
(注7)Why Discover went all-in on open source(CIO Dive)
(注8)OS-CLIMATE JOINS FORCES WITH FINOS TO ENABLE INDUSTRY-WIDE OPEN COLLABORATION FOR CLIMATE AND SUSTAINABILITY-ALIGNED FINANCE(FINOS)
© Industry Dive. All rights reserved.