いかにAIを使いこなせるかが企業の命運を左右すると言っても過言ではない昨今、企業は優秀なAI人材を採用しようと必死だ。学士号や修士号を持つ求職者を優遇する企業も多いようだが、学歴はどこまで現場で通用するのだろうか?
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カリフォルニア州にあるNational Universityが2024年6月に発表した報告によると、AI関連人材を探している雇用主のうち、4人中3人が修士号を持つ求職者を優遇しているという(注1)。「Indeed」に掲載された約1万5000件のフルタイムの求人情報を調査して分かった。
National Universityのリンダ・トラヴィス・マコンバー氏(准教授)は電子メールで、「企業は修士号を持つ候補者に対し、解決志向の考え方や適応力、深い技術的および分析的能力などを期待している」と述べた。
分析によると、学士号を求める企業も3分の2以上に上った。なぜ高学歴の人材が求められるのか。
セルフサービス型のAIソリューションを提供するベンダーは多いが、この技術はそれほど簡単に導入できるものではないことが分かってきた(注2)。労働市場における利用可能なスキルとIT労働力における技術格差のミスマッチは、CIO(最高情報責任者)が直面する最も根強い課題の1つだ(注3)。
一方で、IT業界団体The Computing Technology Industry Association(以下、CompTIA)が労働市場情報に詳しいLightcastの求人データを分析したところ、大学院レベルの学位がAI人材に要求される割合は少ないことが分かった。CompTIAによると、AIエンジニアなどAIに特化した職務に就く人材を採用する場合、修士号または博士号を持つ候補者を希望する雇用主は半数強だという。
CompTIAのティム・ハーバート氏(チーフリサーチオフィサー)は、「AIの進化の過程において、現時点ではこのようなAIコンポーネントの構築に重点を置くAI専門職がAI採用全体に占める割合は比較的小さい。これは新興技術によく見られるパターンで、最初は既存の職務にスキルが加わる形で登場し、その後専用の職務へと成熟していく」と話す。
ハーバート氏によると、AIコンポーネントを既存のIT資産に統合するなど、AI採用ではAIを活用するために必要なスキルや経験が重視されているという。
「修士号や博士号を指定する求人の割合が若干多いものの、採用の大半は4年制の学士号またはそれ以下の学歴の層である」とハーバート氏は言う。
人材不足により、企業のリーダーらは労働者のスキルアップに力を入れている。オンライン学習コンテンツを提供するSkillsoftが2024年6月第4週に発表した報告によると、AIはサイバーセキュリティやデータと並んで、スキルアップ投資のトップカテゴリーとなっているという(注4)。
ハイパースケーラーの先陣を走るAmazon Web Services(AWS)やMicrosoftを含むベンダーは、採用のボトルネックに対処するためにトレーニングの機会を設けている(注5)(注6)。しかし、トレーニングや正式な教育のペースを上回るスピードで技術が進化する中、CIOは困難に立たされている。
「生成AIは新しい技術であり、急速に進化していることを考えると、これらの開発より前に取得した高度な学位が現在の技術にどれほど生かせるか疑問だ。教育やトレーニング、認定プログラムは、日々変わり続ける目標に追い付こうとしている」(ハーバート氏)
(注1)New Research Shows Key Factors to Land an AI Job(National University)
(注2)AI Work Assistants Need a Lot of Handholding(Dow Jones & Company)
(注3)AI fundamentals among most-needed digital skills, job seekers say(CIO Dive)
(注4)Cyber, AI and data dominate upskilling priorities, Skillsoft finds(CIO Dive)
(注5)AWS expands cloud-based AI training portfolio, adds 2 pro certifications(CIO Dive)
(注6)Microsoft launches free AI training as enterprises grapple with skills shortage(CIO Dive)
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