「NetSuiteは最も先進的な中堅・中小企業向けERPとなりつつある」 アナリストが評価した理由は?

2024年9月9日の週、Oracleは「SuiteWorld 2024」を米国で開催した。さまざまな発表を受け、アナリストが「NetSuiteは最も先進的な中堅・中小企業向けERPとなりつつある」と評価するようになった理由は。

» 2024年10月24日 07時00分 公開
[Jim O'DonnellTechTarget]

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 2024年9月9日(現地時間、以下同)の週、Oracleは「SuiteWorld 2024」を米国で開催した。NetSuiteは、「Oracle Redwood Design System」(以下、Redwood Design System)を採用すると発表し、NetSuiteのアプリケーションスイート全体に展開するという。

 また、「NetSuite Enterprise Performance Management(EPM)」を含むNetSuiteのアプリケーション全体に多くのAI機能が組み込まれ、「SuiteProcurement」の導入や、NetSuiteと「Salesforce」間でリアルタイムデータを共有できる「NetSuite Connector for Salesforce」の初公開がされた。

生まれ変わったNetSuiteのUX

 Oracleが2019年にUXの近代化のために導入したRedwood Design Systemは、すでにNetSuite EPMとNetSuite Analytics Warehouseで使用されている。ダッシュボードやリスト、フォームといった一般的に使用される領域から始まり、最終的にはNetSuiteのアプリケーションスイート全体に展開される予定だという。

 NetSuiteは人事、倉庫管理、サプライチェーンなどのコアビジネスプロセスを統合し自動化するためのERPで、「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)に構築されている。NetSuiteは主に中小企業向けで、「Acumatica」や「Microsoft Dynamics」「Sage」「Unit4」などと競合している。

 NetSuiteの創設者でOracle NetSuiteのエグゼクティブ・バイスプレジデントであるエヴァン・ゴールドバーグ氏は、SuiteWorldのオープニング基調講演で「NetSuiteのUXは、ユーザーの生産性を高めるために再構築された」と語った。

 NetSuiteは、OracleのUXデザインを担当するヒレル・クーパーマン氏(シニアバイスプレジデント)を起用し、Redwood Design SystemをNetSuiteに適用させた。

 その目的は、Uberをはじめとする消費者向けアプリケーションのような直感的なUXをNetSuiteで実現することだ。クーパーマン氏は、基調講演で「これには、NetSuiteのアプリケーションにおける全ての“摩擦点”を特定し、検索機能を改善する作業が含まれていた」と述べた。

 また、UXの近代化のアプローチをAIが変えつつある。生成AIは、ユーザーがどのように会話するかをデザイナーが適切に理解してアプリケーション機能に変換するために役立つ。

 NetSuiteやOracleの他のアプリケーションには「Ask Oracle」というプロンプトが導入され、ユーザーが自然言語でクエリを入力できるようになる。

 「これは、AIを前面に押し出したインタフェースの中心的な要素であり、NetSuiteを含む全てのアプリケーションで実現される。Oracleの中でも、NetSuiteはこの技術に早く取り組んでいるリーダーのような立場にある」(クーパーマン氏)

 またNetSuiteは、プロセスの自動化とデータからより優れた洞察を得る目的で、ERP全体にAIを組み込もうとしている。

 その一例として、ゴールドバーグ氏はNetSuite EPMの新しいAI機能を挙げた。これは、財務計画および分析(FP&A)向けのアプリケーション群で、簡素化されたアカウントの調整や決算、さらに高度なレポーティングをサポートしている。

 「EPMはビジネスにける各部門のデータを考慮し、意思決定を改善する。さらにAIを導入することで、今やEPMはより効率的にインサイトを提供できるようになった」(ゴールドバーグ氏)

 ゴールドバーグ氏によると、NetSuiteは過去1年間で成長を遂げ、現在では世界中に4万社以上の顧客を有している。また、OCIに基づいているため、NetSuiteは世界17のOCIリージョンにある36のデータセンターでホストされている。

Redwood UX for NetSuiteは「ビッグニュース」

 アナリストは「NetSuiteの新機能と統合はユーザーに歓迎される可能性が高い」と語る。

 アドバイザリー企業であるTechnology Evaluation Centersのプレドラグ・ヤコブリェビッチ氏(プリンシパル・インダストリーアナリスト)は、Redwood Design Systemへの移行を「ビッグニュース」だと評した。

 ヤコブリェビッチ氏によると、Redwood Design Systemは現代的なUXを提供する。そして、ユーザーがワークフローやプロセスをカスタマイズできるようにし、IT開発者が優先順位を付けていない作業や、完了しない可能性のある作業を補完するという。また、新しい生成AI機能の提供手段として働く可能性もある。

 ヤコブリェビッチ氏は「NetSuiteの他の新機能も顧客にとって価値があり、競合他社への優位性の獲得につながるだろう」と述べた。例えば、SuiteProcurementは間接購買体験を提供し、SAP AribaやCoupaといった調達領域における大手企業と競争できる可能性がある。

 また、ヤコブリェビッチ氏によると、FP&A向けのNetSuite EPMの機能は、AcumaticaやMicrosoft DynamicsといったクラウドERPの競合他社に対する優位性をもたらす可能性もあるという。

 調査企業であるIDCで中堅・中小企業のリサーチを担当するケイティ・エバンス氏(シニアディレクター)は「NetSuiteの顧客基盤の大部分を占める中堅・中小企業では、テクノロジーに精通した従業員が不足する傾向がある。そのため、UXや従業員体験に再び焦点を当てたことは注目に値する」と述べた。

 「NetSuiteはOracleという大きな存在を活用して、プラットフォームにさまざまな機能を迅速に実装している。Oracleの技術を取り込んでスケールダウンし、ときにはNetSuiteに直接組み込む場合もある」(エバンス氏)

 エバンス氏によると、NetSuiteはアプリケーションにAIを組み込んでいるが、価格が明確になっていないため、顧客からは疑問の声も挙がっているという。

 「中堅・中小企業はAIに予算を割く必要があり、それに対する答えが必要だ。また、AIをアプリに組み込むためにリソースを移行する際に、AIに特化した新しい技術的専門知識が顧客に必要かどうかについても明確にしてほしい」(エバンス氏)

 エバンス氏によると、中堅・中小企業はAIについて何から始めるべきか分からず支援を必要としている。そのため、新機能の一つである「NetSuite Advanced Customer Support AI Playbooks」は賢明な動きだという。NetSuiteのパートナーは、プレイブックやAIの新機能を使って顧客をサポートする上で重要な役割を果たすだろう。

 「これは多くのERPにも当てはまる。中堅・中小企業のリーダーは事業運営に忙しく、プラットフォームを調査する時間やスタッフがいないため、便利なツールや機能を十分に活用できていない。機能や機能性を広めることで、NetSuiteの収益も向上するだろう」(エバンス氏)

 エバンス氏は、Salesforceに向けたNetSuiteのコネクターは、Salesforceプラットフォームに構築されたクラウドERPである「Certinia」および「Rootstock」に対抗するものだと述べた。同氏は、ERPにCertiniaを選択した中堅・中小企業にとって、Salesforceに構築されていることが重要な要素だったことを示す独自の調査結果を挙げた。

 コンステレーション・リサーチのアナリスト、ホルガー・ミューラー氏は、「NetSuiteがAIを中心に機能を強化しており、現在はOCIへの参加によるメリットを享受している」と述べた。

 「調達やEPM、プロジェクト管理の発展により、NetSuiteは最も先進的な中堅・中小企業向けERPシステムとなりつつあり、HCM側に最も顕著なギャップがある。Redwood Design Systemが承認され、採用されたことで、Oracle Cloud FusionアプリとNetSuiteを同じUXで並行して使用するという、異機種混在の未来が実現するかもしれない。ここで勝利するのは顧客とユーザーだ」(ミューラー氏)

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