AIが中間管理職を駆逐する? 「的中率7割以上」の予測は今回も当たるのかCIO Dive

生成AIの活用が進む中、ビジネスとAIは切り離せない関係になった。ガートナーが予測する、AIが企業にもたらす影響を紹介する。

» 2024年11月18日 08時00分 公開
[Lindsey WilkinsonCIO Dive]

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CIO Dive

 生成AIをはじめとするAIを導入する企業が増える中、当初の予算よりも膨れ上がるコストやデータの管理など、AIはIT部門の「悩みの種」になりつつある。特に2024年に入ってから、CIO(最高情報責任者)は複雑なデータの課題に取り組み、増大するコストを管理する中でAIの目標達成に苦戦している(注1)。

 しかし、生成AIをより上手に活用しようと多くの企業はワークフローの調整を繰り返すため、この技術がすぐに消えることはないだろう。今後、AIが企業に与える影響を知っておけば、これからどのような手を打つべきか、先回りすることもできるかもしれない。

AIがあれば中間管理職はいらない? ガートナーが予測する「4つの未来」

 もちろん、技術革新のペースが速いため、AIの影響を正確に予測するのは難しい。ただし、Gartnerによると、同社が過去に発表した予測のうち約75〜80%は的中している。同社は2024年10月に開催した「Gartner IT Symposium/Xpo」で「予測トップ10」を発表した。同予測から抜粋した「AIの未来に関する4つの予測」は、次の通りだ(注2)。

1. 2026年までに5社中1社がAIを活用して組織構造をフラット化 中間管理職の半数以上を削減

 AIがより多くのタスクをより高いパフォーマンスで遂行し、下位層の従業員の効率を向上させる。これによって、企業が中間管理職を“削減”するのはさらに現実的になるだろう。

 Gartnerのダリル・プラマー氏(ディスティングイッシュト・バイスプレジデント、アナリスト)は、「より多くの価値を生み出せなければ、解雇予告などの“悪い知らせ”を耳にすることになるだろう」と語る。

 こうした変化は、スタッフ職の従業員やシニア(上級)リーダーの柔軟性を高めたり、ワークライフバランスを改善したりする可能性がある。シニアリーダーは、AIエージェントを活用することで自律的なタスクの遂行や進捗(しんちょく)管理、報告の簡易化を期待されている。また、CIOは人的資源をより効果的に活用することが求められる。

2. 2027年までに、AIによる人格表現のライセンス条項と公正な使用に関する条項が労働契約の70%に盛り込まれる

 AIは間もなく、企業の労働契約書の作成方法を変えるかもしれない。

 「『企業は従業員をAIアバターに置き換えようとしているのではないか』と誰もが考えている。しかし、あなたが不幸にも解雇されたり退職を決意したりした後、企業がそのアバターを使い続けるとしたらどうなるだろうか」(プラマー氏)

 従業員として振る舞うAIアバターを、該当する従業員の退職後も使用し続ける場合、プライバシーや報酬に関する多くの問題が引き起こされるだろう。プラマー氏は、専門知識を保有する従業員、特に戦略的な指示や指導に携わっている人に、「雇用主が自分のイメージや類似性をどのように使用したいかを考える」ことを勧める。

 AIアバターによって、ロイヤリティ収入という形で多額の報酬を得られる人が生まれる可能性がある。

3. 2028年までに、企業のセキュリティ侵害の4分の1が、外部および悪意のある内部関係者のAIエージェントの悪用により発生する

 CIOはエージェントや自律型AI機能の普及に先駆けてセキュリティ対策を強化すべきだ。これらは脅威アクターの主要な標的になる可能性が高い。

 ベンダー各社は、企業向けAI導入の次のステップとしてAIエージェントの活用を推進している。Microsoftは2024年10月21日(現地時間、以下同)、「Microsoft Copilot Studio」のAIエージェントを2024年11月から展開する予定だと発表した(注3)。SAPは、同社の生成AIコパイロット「Joule」の機能を拡張して請求書関連の問題を解決し、元帳の更新を自動化できるコラボレーションエージェントを追加した(注4)。Slackもまた、プラットフォームにエージェントを追加し、新しいインターフェースを採用した(注5)。

 「脅威の範囲は常に拡大している」(プラマー氏)

 セキュリティと正確性を維持するために人が介在するアプローチは、そう長くは通用しないとプラマー氏は言う。企業は成熟したセキュリティ環境に投資する必要があるだろう。

4. 2029年までに、世界の取締役会の10分の1が、AIの指導を取り入れながら重要な経営判断を検証することになる

 「取締役会は、次の行動を検討するためにAIを利用し始めるだろう」とプラマー氏は言う。

 現在のところ、ほとんどの取締役会はAIを効果的に活用するために必要な専門知識を持ち合わせておらず、大半はAIを管理するに当たって自身の役割をまだ把握していない(注6)。Gartnerは、数年後には取締役会がスキルを身に付け、そのプロセスにAIを組み込むようになると予測している。

 「統合は進展し、経営構造はさらにフラット化するだろう」(プラマー氏)

 CIOをはじめとする経営幹部陣は、AIを使って具体的な戦略やリーダーシップの成功を判断するようになるため、取締役会への対応を「進化」させる必要があるだろう。

 なお、これらの「4つの未来」の前提となるAIとビジネスの関係について、プラマー氏は「AIはビジネス戦略のあらゆる部分に影響を与える。AIとビジネスを切り離して考えても意味がない。全ての戦略的優先事項に対して、明確に“AIの領域”を設けるべきだ」と指摘し、Gartnerのメアリー・メサリオ氏(ディスティングイッシュト・バイスプレジデント、アナリスト)は、同イベントの2024年10月21日の基調講演で、「多くの人が日常的にAIを利用することは『ChatGPT』のように簡単だと思っていたが、そんなことはない」とその難しさに言及した。

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