3年後、AIエージェントは「こう使われる」 ガートナー予測

最近バズワード化している「AIエージェント」。AIエージェントとチャットbotやRPAはどこが違うのか。また、近い将来、ビジネスでどのように使われるようになるのか。

» 2025年01月20日 07時00分 公開
[金澤雅子ITmedia]

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 ガートナージャパン(以下、ガートナー)は2024年1月14日、「AIエージェント」に関する最新の見解を発表した。

3年後、AIエージェントはどう使われている?

 2024年後半から「AIエージェント」というキーワードの市場認知が急速に拡大している。ガートナーは、AIエージェントを「デジタルおよびリアルの環境で、状況を知覚し、意思決定を下し、アクションを起こし、目的を達成するためにAI技法を適用する自律的または半自律的なソフトウェア」と定義する。

 このAIエージェントと、生成AIを利用したチャットbotやRPA(robotic process automation)とはどこが違うのか。また、近い将来、AIエージェントはビジネスでどのように使われるのか。これまで数々の予測を的中させてきたガートナーの見立てとは。

 まず、ガートナーはAIエージェントの定義を拡張することで、「特定の目標を達成するために、自律的に行動するAIシステム」とも捉えられるとする。AIエージェントは環境から情報を収集し、それに基づいて意思を決定し、論理的もしくは物理的なアクションを起こすことが可能になる。

 ガートナーの亦賀忠明氏(ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリスト)は、「現在のAIエージェントは初期段階にあり、多くのユーザー企業にとってその理解と実践はそれほど容易ではない。AIエージェントに関する取り組みによって試行錯誤することは、AI共生時代に求められる新たな能力(ケイパビリティ)を獲得する上で重要な人的基盤を形成する重要なきっかけになる」と説明する。

AIエージェントとチャットbot、RPAはどう違う?

 AIエージェントと、従来型のチャットbotやRPAとの違いは何か。チャットbotやRPAがあらかじめ定義された作業手順を自動化するのに対し、AIエージェントは、複雑なデータや状況に自律的に適応できる可能性があるというのがガートナーの見解だ。従来型ツールは与えられた入力事項に対し、事前に決められた通りに反応するだけだが、AIエージェントは状況を理解して自ら「気を利かせながら」、目的を達成するためにプロセスを構築する。

図 チャットbotやRPAとAIエージェントとの違い(出典:ガートナージャパンのプレスリリース)

 高度なAIエージェントには、強化学習やフィードバックを活用して、自律した学習能力(経験から学習し、行動を改善する能力)や、適応性(環境の変化や未知の状況に柔軟に対応する能力)が期待されている。しかし、現時点のAIエージェントはまだ初期段階にある。「理想のAIエージェントになるように」人間が試行錯誤をしながら育てる必要があるとガートナーは指摘する。

AIエージェントは「すぐに全てをうまく実行できる」わけではない

 これらを踏まえて、AIエージェントの導入を考える企業は何をすべきか。「企業は、AIエージェントについて『すごいAIが登場した』『導入すれば全てをうまく実行してくれるソフトウェアやシステムが登場した』と捉えてはならない。それらはあくまでも理想であり、将来的な展望やビジョンだ。ユーザーが何も設定せずに、企業ユーザーにとって気の利いた対応ができる『AIエージェント』は、現時点では存在しない。AIエージェントを試したい企業は、ベンダーが提供する『AIエージェントフレームワーク』を使って、特定のタスクに対応するAIエージェントに育つように適宜設定、もしくは開発する必要がある」(亦賀氏)

 現在市場に存在するAIエージェントフレームワークについて、ガートナーは企業での即効的な利用可能性があるものと、研究開発的な高度なものに分類している。研究開発的な高度なものは、「フレームワークで進化したもの」「LLM(大規模言語モデル)そのものが進化したもの」「マルチエージェント」に分類される。こうした高度なものは先端的なエンジニアに好まれる傾向が強いものの、今企業で利用するというよりもむしろ将来の可能性を探るものだ。先端テクノロジーを自ら触れて実験したといった企業を除き、優先的な選択肢とはなりにくいため注意が必要だとガートナーは指摘する。

 「AIエージェントを実践する前段階として、AIを推進する担当者やエンジニアは、まずはリアリティーを把握することが重要になる。理解できる、できないにかかわらず、ベンダーなどのWebサイトにアクセスすることは、そのリアリティーを知るために最初にやるべきだ。全ての企業はベンダーやSIer(システムインテグレーター)に『丸投げ的なPoC(概念実証)を依頼』しないように、自分たち自身で体験して学び、“目利き力”を強化する必要がある」(亦賀氏)

3年後、AIエージェントでタスクの自動化が実現

 ガートナーは、2028年までに日本企業の60%は、現在のAIエージェントによって機械的な業務に関するタスクの自動化を実現すると予測している。

 OpenAIの「ChatGPT」の登場をきっかけに、GoogleなどAIベンダーの勢いが増している。これから数年かけてAIのステージはAGI(汎用人工知能)やASI(人工超知能)に向かう中、企業はAIエージェントを将来的に重要な戦略要素として捉え、適切なタイミングでチャレンジすることをガートナーは推奨している。

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