地味だが結構うれしい、ChatGPTのプログラミング関連アプデ 活用するならご準備をAIビジネスのプロ 三澤博士がチェック 今週の注目論文

OpenAIのイベント「Open AI 12 Days」で、ChatGPTに「Canvas」「Projects」、開発ツール連携といったプログラミングにうれしい新機能が追加された。

» 2025年01月22日 10時00分 公開
[三澤瑠花日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ]

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この連載について

AIやデータ分析の分野では、毎日のように新しい技術やサービスが登場している。その中にはビジネスに役立つものも、根底をひっくり返すほどのものも存在する。本連載では、ITサービス企業・日本TCSの「AIラボ」で所長を務める三澤瑠花氏が、データ分析や生成AIの分野で注目されている最新論文や企業発表をビジネス視点から紹介する。

 OpenAIは2024年12月にイベント「Open AI 12 Days」を開催しました。前編では投資判断の観点から「o1」モデルや「ChatGPT Pro」プラン、そして2つのFine-Tuning手法の意義を解説しました。後編では、より実践的な開発戦略の視点から特に「Canvas」と「Projects」、開発ツール連携といった新機能の具体的な活用方法に焦点を当てて見ていきます。

 開発環境の革新は従来のコード補完ツールとは一線を画す新しいアプローチを提示しています。「GitHub Copilot」がリアルタイムのコード補完に特化しているのに対し、OpenAIの新機能は開発プロセス全体を包括的に支援します。

長文を扱うのに便利なCanvas、プロジェクト管理、ツール連携

 Canvas機能は、左カラムでAIと相談しながら右カラムでコンテンツを編集できる新しいインタフェースです。プロンプト入力枠に追加されたツールボックスから起動でき、「画像」「検索」「理由」などの機能が利用可能です。また、Pythonコードの直接実行機能も追加され、カスタムGPTとも連携できるため、より専門的な開発支援も実現します。

photo 図1 Canvasによるコーディング支援(引用元:https://openai.com/index/introducing-canvas/)

 Projects機能は開発プロジェクトの管理に新しい可能性をもたらします。「Plus」「Pro」「Team」ユーザー向けにGPT-4oモデルを活用し、ファイルやチャット、カスタム指示を一元管理することができます。現時点では個人利用向けですが、将来的にはチーム単位でのAI活用を体系化します。また、o1などとの互換性も実現する予定であり、より高度な開発支援への発展が期待されます。

 Mac版アプリケーションでの開発ツール連携も大きく進展しています。「Xcode」との連携では実際のデモでコード解析と補助機能が実演され、その効果が具体的に示されました。他にも「VS Code」やJetbrain系との連携が発表されました。「Notion」との連携においては歴史探訪ツアーの原稿作成といった具体的なユースケースも示されています。また、Apple純正アプリの「Notes」(日本では「メモ」)、「Quip」などとの連携も可能になりました。これらの機能は近くWindows版でも提供される予定です。

 これらの機能を効果的に活用するには、段階的なアプローチが重要です。まず、既存の開発プロセスを維持しながらCanvasでのコンテンツ作成を導入し、徐々にProjects機能によるチーム管理に移行することが推奨されます。開発ツール連携については、XcodeやNotionなど、チームが普段使用しているツールから優先的に導入を進めることで、スムーズな移行が可能になります。

三澤の“目” ChatGPT活用には準備が重要

 今回のアップデートは、AI開発の実践的なアプローチを可能にします。GitHub Copilotのようなコード補完に特化したツールとは異なり、OpenAIの新機能群はコンテンツ作成からプロジェクト管理まで、開発プロセス全体を包括的に支援します。ただし、成功の鍵は段階的な展開と、チームの準備状況に応じた柔軟な対応にあります。Windows版への展開も予定されていることから、クロスプラットフォームでの開発体制の整備も視野に入れた長期的な計画が重要となるでしょう。

著者紹介 三澤瑠花(日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ)

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AIセンターオブエクセレンス本部 AIラボ ヘッド

日本女子大学卒業、東京学芸大学大学院修士課程修了(天文学) フランス国立科学研究センター・トゥールーズ第3大学大学院 博士課程修了(宇宙物理学)。

2016年入社。「AIラボ」のトップとして、顧客向けにAIモデルの開発や保守、コンサルティングなどを担当している。

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