老朽化システムが原因で「巨額の罰金」 モダナイズせざるを得なかった銀行の事例CIO Dive

老朽化システムが抱える課題をどう解決するかは多くの企業にとって頭の痛い問題だ。ある銀行は当局に巨額の罰金を課されたことをきっかけに、ITシステムの変革に踏み切らざるを得なくなった。

» 2025年02月26日 08時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

CIO Dive

 「2025年の崖」の年を迎えた今、老朽化したシステムが残る企業はその影響を改めて考える必要がありそうだ。

 ある大手銀行は、当局から巨額の罰金を課されたことをきっかけに、ITシステム全体の変革に乗り出した。その結果、IT投資を大幅に増額したにもかかわらず業績は上昇したという。

 同行は具体的に何に投資し、ITシステムをどう変えたのだろうか。

老朽化システムが原因で「巨額の罰金」

 Citigroupのジェーン・フレイザーCEOは、現在進行しているモダナイゼーション推進の一環として3万人の開発者にコード生成AIを提供したと、2025年1月15日の2024年第4四半期決算説明会で語った(注1)。

 マーク・メイソン氏(CFO《最高財務責任者》)によると、同行は2024年に118億ドルをデジタルイノベーションや商品開発、顧客体験、サイバーセキュリティといったIT投資に費やした。ITインフラやプラットフォーム、アプリケーションやデータを含む変革プロジェクトにも追加で29億ドルを投じている。

 「ITインフラのモダナイズや業務プロセスの合理化、業務自動化のための投資がわれわれの銀行運営の方法に変化をもたらしている」とフレイザー氏は述べた。2024年にクラウドベースのリスク分析ソリューションと、2つの生成AIを利用した生産性向上プラットフォームを14万3000人の従業員に展開したことを強調した。

 Citigroupは過去3年間でモダナイゼーションを進め、その過程で2000ものレガシーなアプリケーションを廃止した(注2)。

 同行のIT投資額は2022年には110億ドルを超え、2023年には120億ドルに達したが、2024年は2%減少した。一方、変革プロジェクトへの投資は2023年には4%増の29億ドル、2024年もその水準を維持した。

 「われわれは誰もが変革を迅速かつ確実に進めたいと願っている」(フレイザー氏)

 Citigroupはこれまで数十年にわたってITインフラやリスク管理システムに積極的には投資してこなかった。「こうした背景があるため、今、積極的な変革に取り組んでいる」(フレイザー氏)(注3)。

 変革の緊急性がなぜ高まったのか。同行は2020年に米連邦準備制度理事会(FRB)からデータ品質管理の不備に関して強制措置を取られ、2024年には規制当局から1億3560万ドルの罰金を課された(注4)。

 「当行にはより進んでいる分野がある。一方で、特に2024年の規制当局による措置で再認識させられたように、データや規制当局への報告に関する多くの課題を残していた。データに関する取り組みやプロセスを包括的に管理する計画全体を見直した上で、ガバナンスや体制を変更してIT投資額も増やした」(フレイザー氏)

 銀行業界では業界最大手が膨大なデータ資産を活用して、生成AI施策や広範なDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しており、ITが業務の中心的な役割を果たしている(注5)。

 Citigroupは規制当局の期待に応えるべく、2024年に取り組みの範囲を拡大して一部の作業を効率化するために投資を増やした。中でもデータは特に取り組みが必要な分野だと認めた。

 Citigroupは4つの業務リスク管理プラットフォームを1つに統合し、規制報告プラットフォームを立ち上げてAIを使ったデータ管理ツールを導入した。2024年10月にはAI利用と分析に「Google Cloud」を活用し、同年12月にはドキュメント分析ツール「Citi Stylus」とバーチャルアシスタント「Citi Assist」を従業員に展開した(注6)(注7)。

 IT投資額が増加する中でも、同社は2024年第4四半期に純利益として29億ドルを計上した。これは前年同期の18億ドルの純損失と比べると大幅な改善だといえるだろう。年間純利益は約40%増の127億ドルとなった。

 「必要な取り組みを完遂するため、事業が今後持続可能な成長を推進できるように必要なリソースを確保するために投資を続けている」(メイソン氏)

© Industry Dive. All rights reserved.

アイティメディアからのお知らせ

注目のテーマ

あなたにおすすめの記事PR