生成AIの急速な普及と並行して、企業がサイバーセキュリティ投資を拡大する動きがみられる。特に中国のDeepSeekの台頭はAIの導入を促進させる一方で新たなリスクをもたらしたことが問題視されている。
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Bloomberg Intelligenceのアナリストによると、サイバーセキュリティへの世界的な支出は今後急増すると予測されている。これは、チャットbotやエージェントのようなAIツールの普及に伴い新たなリスクが生じ、企業がITセキュリティの強化を迫られているためだ。
同社のアナリストらは2025年2月20日(現地時間、以下同)の調査報告で、「2025年上半期、生成AIの導入コストが低下することで全社的な導入が進む見通しだ。その一因として中国のテック系スタートアップ企業DeepSeekが台頭してきたことが挙げられる」と指摘した。
その結果、サイバーセキュリティヘの投資が進む可能性があるという。
Bloomberg Intelligenceの報告のアナリストリーダーの1人であるマンディープ・シン氏(グローバルテクノロジーリサーチ責任者)は電子メールの中で、「DeepSeekはオープンソースのLLM(大規模言語モデル)の普及を促進し、プロンプトインジェクション攻撃などの脆弱(ぜいじゃく)性を生み出すため、企業はサイバーセキュリティの守りを強化するだろう」と述べている。
近年の生成AIの急速な普及により、CFO(最高財務責任者)はサイバーセキュリティの強化に向けて多額の投資を決意していることが、会計事務所ネットワークのGrant Thornton Internationalが発表した最近の調査で明らかになった(注1)。
回答者の69%が今後12カ月間にサイバーセキュリティ費用が増加すると予想する。2024年第3四半期と比較して16ポイント増加し、16四半期ぶりの高水準となった。
Grant Thornton Internationalのデレク・ハン氏(リスクアドバイザリーグループ、サイバーセキュリティおよびプライバシー部門プリンシパル)は「AIに関するサイバーセキュリティは非常に新しい分野だ。人々がこの分野に投資しているのはリスクを確実にコントロールしたいからだ」と指摘している。
Bloomberg Intelligenceのアナリストによると、サイバーセキュリティ全体の市場規模は2023年の約1525億ドルから2033年には3380億ドルに達する可能性があるという。
DeepSeekの影響もあり、LLMの拡大はソフトウェア監視やクラウドワークロードセキュリティ、データ損失防止などのサイバーセキュリティ分野の成長をこれまで以上に促進させる可能性があるとアナリストらは指摘している。
この分析は、DeepSeekの台頭がAI市場に衝撃を与え、企業にとって新たなチャンスとリスクの両方をもたらしている状況の中で発表された(注2)。
DeepSeekは「ChatGPT」のような米国のライバル企業と比較して低コストで構築されたと主張するオープンソースのAIモデルを発表し、世界的な注目を集めている。
Bloomberg Intelligenceの報告によると、オープンソースのLLMモデルは柔軟性とコスト削減を実現する一方で、監視やデータセキュリティ製品への支出を増やさざるを得ない脆弱(ぜいじゃく)性を抱えている可能性があるという。
サイバーセキュリティ市場の「ソフトウェア観測可能性」分野は、2023年の192億ドルから2033年には530億ドル規模になる見込みだとアナリストは予測する。
一方、職場の業務を担えるよう設計されたAIエージェントの認証の必要性はID管理の分野の成長を促進させ、その市場価値は2023年の200億ドルから2033年には約503億ドルに達する可能性があるという。
(注1)Grant Thornton CFO survey: Optimism surges post-election(Grant Thornton Advisors)
(注2)DeepSeek’s lower-cost AI model could supercharge adoption, use cases: Goldman Sachs(CFO Dive)
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