関税の影響でPCの出荷台数が急増 Windows 10移行の未対応企業はコストアップか?CIO Dive

世界のPC出荷台数は、米国における関税の導入を見越してベンダーが在庫を積み増したことから、前年比で4.8%増と大きく伸びた。ベンダーがPC在庫を増やすことによる企業への影響とは。

» 2025年05月16日 07時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

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 調査企業であるGartnerが2025年4月14日(現地時間、以下同)に発表した速報によると(注1)、2025年の最初の3カ月間における世界のPC出荷台数は、米国における関税の導入を見越してベンダーが在庫を積み増したことから、前年比で4.8%増と大きく伸びた。2024年の市場はわずか1.3%の成長にとどまっていた(注2)。

 2024年に「Windows 10」のデバイスの更新を見送った企業は厳しい状況に置かれる可能性があるという。ベンダーがPC在庫を増やすことによる企業への影響とは。

関税を巡るPC市場の動き Win10未対応企業に影響か?

 PC出荷台数の急増は米国で特に顕著で、前年比12.6%増となった。Gartnerによると、第1四半期に出荷された推定5900万台のうち、4分の1以上が米国での出荷だったという。

 Gartnerのリシ・パディ氏(リサーチ・プリンシパル)によると、最近の米国の貿易政策による世界経済への影響が懸念されているにもかかわらず、エンドユーザーは依然として慎重な姿勢を保っているという。関税の導入時期や範囲、その深刻度に対する不透明感が、企業のIT支出の動向に影を落としているためだ(注3)。

 ドナルド・トランプ大統領が2025年4月2日に広範な輸入関税制度を打ち出し、世界的な貿易戦争を引き起こすリスクが懸念されるようになる前から、関税を巡る議論は企業の予算に悪影響を及ぼしていた。同年4月7日の週、関税の多くが一時的に停止されたが、状況はさらに複雑になった。同年4月11日、政権は、スマートフォンやコンピュータ用モニターなどの一部の電子機器を報復関税の対象から一時的に除外すると発表したためだ(注4)。

 調査企業であるIDCによると、IT部門のリーダーたちは、想定される関税のシナリオに基づいた緊急対応計画に既に着手しており、重要な投資を守る一方で、裁量的な支出を削減しているという。関税を巡る不透明感を考慮した結果、同社は2025年のIT支出の成長予測を数ポイント引き下げた。

 IDCのカスタマーインサイト&アナリシス部門に所属するスティーブン・ミントン氏(プログラムバイスプレジデント)によると、企業がハードウェアの調達において迅速なコスト削減を実現しようとしたため、PCをはじめとするデバイスが購入延期の影響を最も強く受けたという。一方、CIO(最高情報責任者)たちは、AIやアナリティクス、セキュリティ、IT最適化といった戦略的な投資について、より慎重な姿勢を見せていた。

 IDCが2025年4月7日の週に発表した第1四半期の市場分析の速報によると(注5)、PCの出荷台数は前年比で約5%増加した。ベンダー各社がAI対応型のPCを投入したにもかかわらず(注6)、2024年の市場はほぼ停滞しており、2023年と比べて成長率はわずか1%にとどまったとIDCは指摘している(注7)。

 「購入の時期が前倒しされている。想定よりも早い時期にPCを購入する企業が現れており、ベンダーの在庫が積み上がっているのは明らかだ」(ミントン氏)

 米国最大のPCサプライヤーであるHPは、2025年2月の決算説明会で(注8)、トランプ政権の貿易政策が自社の戦略に与える影響を認めた。

 HPのカレン・パークヒル氏(最高財務責任者)は、決算説明会で次のように述べている。

 「関税への対応策の一環として、意図的に追加の在庫を生産し、戦略的な仕入れの機会を活用した」

 Microsoftが2025年10月にWindows 10のサポートを終了する準備を進める中、2024年にデバイスの更新を見送った企業は厳しい状況に置かれる可能性がある。

 ミントン氏は「在庫には限りがある。関税により発生するコストは、今後2〜3カ月の間に購入者に転嫁されるだろう」と指摘し、中国製品に対する米国の関税に対応して、PCメーカーであるASUSやAcerがすでに製品の単価を引き上げていることに言及した。

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