CISA崩壊の危機? 前代未聞の大規模離職の詳細Cybersecurity Dive

トランプ政権が積極的な政府縮小キャンペーンを展開する中、CISAの事業部門や地域事務所の幹部の大半が既に離職したか、2025年5月中に離職する予定だという。匿名の従業員によると、組織内でも不安が広がっているようだ。

» 2025年06月13日 08時00分 公開
[Eric GellerCybersecurity Dive]

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Cybersecurity Dive

 『Cybersecurity Dive』が入手した電子メールによると、米国土安全保障省サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)の幹部のほぼ全員が既に離職したか、2025年5月中に離職する予定であり、外国の敵対勢力との緊張が高まる中、政府の主要なサイバー防衛機関における専門知識とリーダーシップの空白がさらに拡大している。

CISA崩壊の危機? 前代未聞の大規模離職の詳細

 CISAの新たな副長官であるマドゥ・ゴトゥムカラ氏は2025年5月22日(現地時間、以下同)に従業員向けの電子メールで、同年5月末までにCISAの6つの事業部門のうち5部門と(注1)、10の地域事務所のうち6の事務所がトップを失うことになると伝えた。

 ゴトゥムカラ氏は、インフラセキュリティ部門の暫定責任者であるスティーブ・ハリス氏が2025年5月16日に離職し、ステークホルダーエンゲージメント部門の暫定責任者であるトレント・フレイジャー氏が同年5月2日に離職したことを明らかにした。また、緊急通信部門のナンバー2であるヴィンス・デローレンティス氏が同年5月30日に退任する予定であることも記している。さらに、サイバーセキュリティ部門のナンバー2であるマット・ハートマン氏と、統合オペレーション部門の責任者であるボイデン・ローナー氏の退任についても、これまでに報じられた通りであることを確認した(注2)(注3)。

 専門家によれば、これらの幹部の離職は(電力やガス、鉄道、空港などの)重要インフラ事業者や民間のセキュリティ企業、海外の同盟国、州政府、地方の緊急対策担当者との連携における、CISAの効率性と戦略的明確性を損なう可能性があるという。

 近く離職する、あるいは最近離職したCISAの地域チームの責任者には、第2区域のディレクターであるジョン・ダーキン氏、第4区域のディレクターであるジェイ・ギャンブル氏、第5区域のディレクターであるアレックス・ジョヴズ氏および副ディレクターのキャシー・ヤング氏、第6区域のディレクターであるロブ・ラッセル氏、第7区域のディレクターであるフィル・カーク氏、第10区域のディレクターであるパトリック・マッシー氏が含まれる。

 これらの地域責任者とその配下のチームは、全国におけるCISAの存在感を強化し、提供するサービスに関するパートナーの理解を深め、専門知識と支援を提供する信頼できる機関としての評価を高める上で重要な役割を果たしてきた。

 内部の緊張状態について語るために匿名を求めたCISAのある従業員は、次のように述べている。

 「これほど多くの幹部が離職し、しかもその中にはUS-CERTの時代から在籍していたリーダーたちも含まれている(注4)。組織の中では、いつになったら人員削減と離職が終わり、機関として前に進めるのかという不安が広がっている」

 CISAの管理部門の幹部も多くが離職している。最高戦略責任者のヴァル・コフィールド氏と最高財務責任者のタレク・アブーシ氏は2025年5月30日に退任予定であり、最高契約責任者のフアン・アラティア氏は同年5月16日に、最高人事責任者のブレア・ダンカン氏は同年5月2日にそれぞれ退任した。

 CISAの事務局長であるブリジット・ビーン氏は声明で次のように述べた。

 「CISAは、国家の重要インフラを守り、全体のサイバー防衛を強化するという法定任務の遂行に全力で取り組んでいる。私たちは国家のサイバーセキュリティ機関として設立されており、その使命を果たし、敵対勢力からのさまざまなサイバー脅威に備えるための適切なチームを整えている」

 CISAの従業員の離職に関する詳細の一部は『The Washington Post』が最初に報じた(注5)。

CISAの将来に対する不安の高まり

 2025年5月19日に着任し(注6)、ビーン氏から暫定長官の職務を引き継いだゴトゥムカラ氏は、着任の最初の週に従業員に対して「当機関が日々している重要な業務に感銘を受けた」と語った。しかしCISAの内外では最近の幹部の離職により、既に高まっていた将来への不安がさらに増幅しているという(注7)(注8)。

 自由な発言のために匿名を求めたCISAの別の従業員は「本来去るべきでない人たちが離職していると感じている。これだけ多くの離職が続くと、皆が使命を捨てて、組織に空白が生まれているように思ってしまう」と話した。

 2011〜2017年まで国土安全保障省内でCISAの前身組織を率いていたスザンヌ・スパルディング氏は、「これほど多くの専門知識と組織的知見が外部に流れていく様子を見るのは、悲しくもあり腹立たしくもある」と語った。

 「重要インフラの所有者や運営者と日々連携している全国各地のリーダーたちを含む幹部の喪失は、国家の安全性とレジリエンスを低下させることになるだろう」(スパルディング氏)

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