Microsoftは今後のソフトウェアアップデートが顧客の業務に支障をきたさないようにするため、Windowsのセキュリティを大規模に刷新した。この取り組みはセキュリティパートナーと連携して進められている。
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CrowdStrikeが不具合のあるソフトウェアアップデートを実施したことで2024年に発生した世界的なIT障害を受けて、Microsoftは「Windows」のプラットフォームにより高い運用上の耐障害性を組み込むことを目的とし、2025年7月に主要なプラットフォームのアップグレードを展開すると発表した。
今回の変更には、マシンの迅速な復旧を実現する機能や「Microsoft 365」のユーザーが保護された環境でクラウドへのアクセスを継続できるようにする機能などが含まれており、これらはMicrosoftが2024年11月に発表したWindowsの大規模な刷新の一環だ。
これらの変更はソフトウェアのアップデートによって企業の業務が大きく妨げられることを防ぎ、より安全な環境を構築することを目的としている。なお、2024年9月にはこの度の刷新がどのように機能するかを話し合う目的で、Microsoftは主要なセキュリティ企業と会合を設けた。
Microsoftで企業向け製品およびOSのセキュリティを担当するデイビッド・ウェストン氏(コーポレートバイスプレジデント)は2025年6月26日(現地時間)に公開されたブログ投稿の中で次のように述べている(注1)。
「私たちは自社製品がどのように動作し、アップデートし、障害に対応するかといった情報を積極的に共有することで、システムのレジリエンスを高めるという共通の責任があると認識している」
Microsoftのパートナー企業は今回の変更を歓迎しており、それによって顧客にとってより安全な環境が実現されると考えているようだ。
CrowdStrikeのアレックス・イオネスク氏(チーフ・テクノロジー・イノベーション・オフィサー)は、2024年9月に開催された「Windows Endpoint Security Ecosystem Summit」で講演した後、「プラットフォームの耐障害性を高める取り組みに対して、顧客から大きな関心が寄せられている」と述べた。
イオネスク氏は『Cybersecurity Dive』に対して電子メールで声明を送付し、その中で次のように述べた。
「この度の連携を通じて、WESP(Windows Endpoint Security Program)に予定されていた機能を大きく向上でき、より統合された高性能なセキュリティソリューションへの道が開かれた」
「MVI 3.0(Microsoft Virus Initiative 3.0:Microsoftが推進するWindowsのエンドポイントセキュリティに関する強化プログラム)の導入により、私たちは全ての新しい基準を満たすことに成功し、これらの厳格な要件が全体のエコシステムを強化すると認識している」
サイバーセキュリティ事業を営むTrellixでエンジニアリングを担当するジム・トライネン氏(シニアバイスプレジデント)は、Cybersecurity Diveに対して電子メールで「MicrosoftのWESPは、協力的で透明性の高い環境の構築を促進し、全ての顧客のサイバー耐性を強化することにつながる」と述べた。
2024年7月に発生した障害では、約850万台のWindowsのシステムが正常に動作しなくなり、さまざまな業種の重要インフラ事業者に大規模な混乱を引き起こした。緊急サービス提供者や大規模病院、航空企業、銀行などがいずれも深刻な問題を報告した。
社内調査の結果、CrowdStrikeはこの問題が同社のプラットフォーム「Falcon」における不具合のあるソフトウェアアップデートに起因していたと発表した(注2)。
この障害によって、生産性の低下やその他の問題に直面した企業には数十億ドル規模の損失が生じた(注3)。
(注1)The Windows Resiliency Initiative: Building resilience for a future-ready enterprise(Windows Blogs)
(注2)CrowdStrike blames mismatch in Falcon sensor update for global IT outage(Cybersecurity Dive)
(注3)CrowdStrike disruption direct losses to reach $5.4B for Fortune 500, study finds(Cybersecurity Dive)
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