クレジットカードの不正利用被害が激増している今、EC事業者は自社に合った適切な不正ログイン対策や不正利用対策を講じることが重要です。今回は代表的な不正ログイン対策のメリット/デメリットを徹底解説します。
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クレジットカード不正利用の現状と、改訂された「クレジットカード・セキュリティガイドライン6.0版」(以下、ガイドライン6.0)が求めるカード情報保護対策と不正利用対策のポイントを解説する本連載。
不正利用対策を講じる上で、EC事業者が特に意識すべきは「決済時」だけではなく、「決済前段階」、すなわちアカウント管理のセキュリティ強化です。ガイドライン6.0では、決済に至るまでのユーザー行動を一連の“線”と捉え、アカウント作成やログインから購入に至る全ての接点でセキュリティを確保する「線の考え方」でのセキュリティアプローチを推奨しています。今回はこの考え方をベースに、不正利用対策にフォーカスし、EC事業者が取るべき対応策を掘り下げます。
近年、特に増加傾向にあるのが「アカウント乗っ取り」を起点とした不正利用です。攻撃者はフィッシングやダークWebなどを通じて収集した個人情報を使い、正規のユーザーになりすましてECサイトにログインします。既にカード情報がひも付いたアカウントも多いため、攻撃者は新たにカード情報を盗む必要すらなく、即時に不正利用が可能になります。
このような背景から、ガイドライン6.0では以下のような不正ログイン対策の導入を推奨しています。
これらの多面的な対策を講じることで、不正利用の入り口となる不正ログインを防止し、カードの不正利用を未然に防げます。このように、カード情報の漏えいを「守る」だけでなく、不正利用される前段階で「遮断」する意識の変革が、今後のセキュリティ対策において不可欠です。
もちろん、各対策には一長一短があります。例えば多要素認証は高いセキュリティ効果を持つ一方で、ユーザーのログイン離脱を招く懸念もあります。逆に行動分析型の不正検知システムはユーザー体験を損なわずにリスクを検出できますが、初期導入やチューニングには一定の専門知識が必要です。
自社のサービス形態や顧客層、運用リソースなどを踏まえた上で、実効性とユーザビリティを両立した施策選定が求められます。
不正利用対策について、今回の改訂では以下3点がポイントになります。
これらは一過性の施策ではなく、カード情報取得から決済完了までの全プロセスに対し、「線の考え方」による一貫したセキュリティ設計が必要であることを示しています。
当社が2024年12月に実施した「EC事業者実態調査」によると、不正ログイン対策を講じていない事業者は全体のわずか3.8%であり、ほとんどの企業が何らかの対策に取り組んでいます。さらに、EMV 3-Dセキュアの導入率は62.1%まで達しており、今後ますます導入が促進されることが予想されます。
ただし、EMV 3-Dセキュアを導入することで安心感を持ってしまい、かえって当事者意識が薄れるケースも見受けられます。実際には、カード会社が負担している不正被害が続けば、決済手数料の引き上げやオーソリ承認基準の厳格化といった形で、間接的なコストが事業者に跳ね返ってくるリスクもあります。
当社の調査でも、義務化されたEMV 3-Dセキュアに加えて、事業者独自の対策として行動分析ベースの不正検知システムを併用する事業者が、前年から9ポイント増加したことが分かっています。このトレンドは「単一対策では限界がある」という業界の認識が深まっている証でもあります。
不正利用対策の本質は、「守る」だけではありません。「見つけ出す」「止める」という観点を持ち、ユーザー行動の線上に多層的な防御線を張ることが、今後のECセキュリティの鍵となるでしょう。
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