Ridge-iは、日本マイクロソフトと連携し、生成AIと地球観測データを統合した次世代プラットフォーム構築に着手した。JAXAとの共同実証を基に、自然言語で衛星データ解析が可能な対話型AIを開発し、Azure基盤でのグローバル展開を目指す。
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Ridge-iは2025年8月12日、日本マイクロソフトと連携し、生成AIと地球観測データを融合した次世代プラットフォームの開発に着手したことを発表した。「Microsoft Planetary Computer Pro」と「Microsoft Azure」(以下、Azure)を利用し、地球デジタルツインの実用化を推進する。Microsoft Planetary Computer Proは衛星画像やリモートセンシングデータなどの地理空間データをAzureで管理、分析するためのサービスだ。
今回の連携は、Ridge-iが2025年3月に宇宙航空研究開発機構(JAXA)と発表した地球デジタルツイン研究用AI実証を土台としている。この実証では生成AIと「JAXA Earth API」「Google Earth Engine API」、JAXAの衛星データプラットフォーム(「Earth-graphy」や「サテナビ」など)を接続し、衛星データ解析の専門知識を持たない利用者でも自然言語で地球環境データの取得と解析ができる対話型AIプロトタイプを開発している。
JAXAとの共同開発により、自然言語による衛星データ取得や画像取得の自動化を可能にした他、「AI on TOP」(Ridge-iが提唱する、AIをインタフェースとすることで衛星データの分析を容易にする仕組み)を実現し、容易にデータ取得と解析を実行できる仕組みを構築した。関東地域の地表面温度やシンガポール海域の衛星画像など、具体的な質問に対し解析結果や画像を即座に提示できる。
新たに開発に着手するプラットフォームではこの成果を拡張し、Microsoft Planetary Computer Proと統合することで、地球観測データへの効率的なアクセスと処理を可能にする。加えて、Azureの利用により、世界各地から安定したサービスを提供できる体制を整える。ユーザーインタフェース面では「Microsoft Power BI」などほかの製品とのシームレスな連携により利便性の向上を図る。「AI on TOP」を多様なデータソースに対応させ、エンタープライズレベルのセキュリティ環境を提供する構想となっている。
Microsoft AsiaのDigital Natives & Startups担当バイスプレジデントを務めるジョニー・ティエン氏は「衛星データの活用は災害対策、農林水産業、運輸、エネルギーなど幅広い分野で革新をもたらす可能性がある」と述べ、「Ridge-iの技術とマイクロソフトのクラウド技術を組み合わせることで、衛星データの利用拡大と高度化が進む」との見解を示している。
Ridge-i代表取締役の柳原尚史氏は、同社の生成AIと地球観測データ解析技術が、日本マイクロソフトの基盤と融合することで、より高度で実用的な衛星データ活用が実現するとし、災害対応や環境シミュレーションなどの分野への応用とグローバル展開に意欲を示している。
Ridge-iは、AI・ディープラーニング技術を用いた経営・社会課題の解決を目的とするテックイノベーション企業であり、画像解析や異常検知、最適化AIなどを組み合わせたマルチモーダルAIに強みを持つ。衛星画像を活用した環境変化の把握事業「GRASP EARTH」などで複数回の宇宙開発利用大賞を受賞するなど、宇宙分野でも実績を有する。
今回の取り組みにより、Ridge-iは国内での技術検証を基に国際市場での展開を加速させ、地球観測データの活用領域拡大への基盤づくりを本格化させるだろう。
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