苦境続くレストラン業界、AI導入で打開目指す 需要予測やセキュリティ強化に活用CIO Dive

米国のレストラン業界でAI活用が進んでいる。業務の効率化と生産性の向上を目指す3社の取り組みを業績とともに紹介する。

» 2025年08月26日 08時00分 公開
[Lindsey WilkinsonCIO Dive]

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CIO Dive

 2025年の前半、レストラン業界は全体的に厳しいスタートとなった(注1)。消費者の支出傾向が変化し、通商政策の変更が業界の勢いを脅かし続けているためだ(注2)。こうした不安定な状況で業界は打開策を模索しており、大手チェーン店は効率化と生産性向上のために自動化やAIの導入に乗り出している。

レストラン業界におけるAI活用の成果

 レストランを運営するBJ’s RestaurantsおよびCracker Barrel、Bloomin’ Brandsは、より優れた需要予測機能の実現や、顧客と従業員の両方の体験向上を目指し、AIの活用を模索し続けている。

 Cracker Barrelはリワードプログラムの一環として、AIを活用したパーソナライズ機能をテストしており、これ以外の用途でもAIの活用を進めている。Cracker Barrelのジュリー・フェルス・マシノ氏(プレジデント兼CEO)は、2025年6月10日(現地時間、以下同)に開催した2025年の第3四半期の決算説明会において次のように述べた(注3)。

 「取り組みによって、対象外だったグループと比べて会員1人当たりの平均売上高が数%増加したことから手応えを感じている。また、効率性と効果の向上を目指す広範な取り組みの一環として、他の用途でもAIを活用している」

 テネシー州に本社を置くCracker BarrelのAIを活用した交通予測モデルは、マシノ氏によると精度と労務管理を改善したという。また、顧客対応にもAIが導入された。マシノ氏によると、AIが問い合わせ内容を振り分けることで問題解決までの時間が短縮され、必要に応じて人間の担当者に素早くつながるようになったという。

 「他にもサイバーセキュリティの強化にも機械学習(ML)を活用している。これらはほんの一例に過ぎない。今後もAI技術を業務に取り入れる機会を継続的に検討し、ビジネスに良い影響をもたらしていきたい」(マシノ氏)

 Cracker Barrelは全米44州に約660店舗を展開しており、2025年の第3四半期の売上高が前年同期比で0.5%増加し(注4)、8億2110万ドルとなった。既存のレストランに関する売上高も4四半期連続でプラス成長を維持している。

顧客体験と従業員体験が交わるポイント

 他の業界と同様に、レストラン業界もこれまでさまざまな形の自動化に注目してきたが、実際に役立つものとそうでないものがあることが分かってきた。2025年5月にシカゴで開催された「National Restaurant Association Show 2025」における取材を通じて(注5)、『Restaurant Dive』は、AIへの過度な期待が薄れつつある今、業界では華やかなイノベーションよりも、実際に成果を上げる導入に重点を置く傾向が強まっていると報じた。

 勤務シフトのスケジューリングや顧客の満足度に改善が見られたことを受け、BJ’s Restaurantsは2026年に向けて、AIを活用した予測や人員計画の導入のさらなる拡大を検討している。同社は既にテキサス州と北カリフォルニアの一部店舗で試験的に導入している。

 2025年6月5日にBJ’s RestaurantsのCEOおよびプレジデントに就任したライル・ティック氏は(注6)、2025年の第1四半期の決算説明会の中で次のように語った(注7)。

 「大切なのは、チームメンバーを適切な場所に適切なタイミングで配置し、顧客に感動を与えることだ。2025年を通じて調整と拡大を続けていくが、今後に向けて確かなチャンスがあると考えている」

 BJ’s Restaurantsは31州で200店舗以上を展開しており、2025年の第1四半期の売上高が前年同期比で3.2%増加し(注8)、3億4800万ドルとなった。既存店舗の売上高も同期間に1.7%増加している。

 BJ’s Restaurantsの経営陣が注目している「顧客体験と従業員体験の交差点」はBloomin’ Brandsにとっても重要な課題だ。フロリダ州に本社を置くBloomin’ Brandsは、Outback SteakhouseおよびCarrabba’s Italian Grill、Bonefish Grill、Fleming’s Prime Steakhouse and Wine Barの4つのブランドの合計で1450店舗以上を展開している。

 Bloomin’ Brandsのマイケル・スパノス氏(CEO)は、2025年2月に開催された2024年の第4四半期の決算説明会で次のように語った(注9)。

 「われわれは常に従業員がよりシンプルに、素早く、楽に仕事をこなせるだけでなく、顧客に素晴らしい体験を提供できる技術を模索している」

 Bloomin’ Brandsは2024年9月に、ガガン・シンハ氏をシニアバイスプレジデント兼テクノロジー担当者からCIO(最高情報責任者)に昇格させた。任命を発表するプレスリリースの中でスパノス氏は、企業の体験の最適化を支援するシンハ氏の能力を高く評価した。

 Bloomin’ Brandsは、Outback Steakhouseの全店舗において新しいPOSシステムを導入し、フィードバックの迅速化と顧客や従業員の体験向上を図っている。

 2025年5月に開催された2025年の第1四半期の決算説明会において(注10)、スパノス氏は次のように述べた。

 「店舗やシフトについて店舗責任者にリアルタイムの指針を提供する上で、顧客からのフィードバックは重要な役割を果たしている。これにAIツールを組み合わせることで、店舗責任者が効率的に対処すべき具体的な課題を把握できるようにしていく」

 Bloomin’ Brandsの売上高は前年同期比で1.8%減少した(注11)。米国における既存店の売上高も同期間で0.5%減少している。

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