インテルが半導体業界の首位から陥落した理由 現CEOが見据える勝ち筋CIO Dive

長い伝統を持つチップメーカーのIntelが急速に地位を失ったのはなぜか。同社CEOのリップ・ブー・タン氏が語る今後の戦略とは。

» 2025年09月05日 08時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

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 2025年7月24日(現地時間、以下同)に開催された決算説明会で(注1)、Intelの経営陣は「2025年第2四半期はPCおよびサーバ部門に注力し、ファウンドリー部門の損失の一部を相殺した」と述べた。チップメーカーである同社は、2025年第2四半期(同年6月28日終了)にクライアントコンピューティンググループ部門で21億ドルの営業利益を計上したが(注2)、ファウンドリー部門は30億ドル超の営業損失を計上していた。

インテルが半導体業界の首位から陥落した理由

 Intelは苦境に立たされている。同社のデータセンターおよびAI部門の売上高は4%増の39億ドル、ファウンドリー部門の売上高は3%増の44億ドルであったが、全体の売上高の成長に目を向けると2回の四半期で連続して前年同期比で横ばいとなっている。PC用のチップセットやプロセッサを含むクライアントコンピューティンググループ部門の売上高は前年同期比で3%減の79億ドルとなったが、それでも同社の最大の収益源であった。

 2025年の第2四半期、業界のベテランであるリップ・ブー・タン氏が同年3月にCEOに就任したことを契機に(注3)、Intelは大規模な改革に着手した。タン氏は同年7月24日に従業員向けに発表した書簡の中で「当社は従業員数を約15%削減する計画を進めており、2025年の年末までに世界全体で約7万5000人の体制にする予定だ」と述べた(注4)。また、マネジメント層を50%削減するなどの大幅な人員削減の多くは同年第2四半期中に完了したと明かした。

 2024年にAIの導入競争が激しくなるにつれてIntelは急速に地位を失った。調査企業であるGartnerによると(注5)、創業57年になるIntelは半導体業界における売上高首位の座をNVIDIAに明け渡し、Samsung Electronicsにも抜かれて2024年は業界3位に転落したという。

 Gartnerのガウラヴ・グプタ氏(バイスプレジデント・アナリスト)は報告書の中で「このような順位の変動が起こった背景には、AIインフラの構築に関する世界的な動きによるGPUの需要高騰と(注6)、メモリチップ市場の急騰がある」と述べた。

 タン氏は2025年7月24日に投資家たちに向けて次のように語った。

 「従来型のコンピューティングを支えるCPUの市場において、Intelは依然として支配的な地位を維持しているものの(注7)、製造分野で大きな野心を持ち過ぎた。直近数年間の設備投資は需要を大きく上回るものであり、賢明ではなく過剰なものだった。私は『作れば顧客が増える』という考え方を採用しない。私のリーダーシップの下では、顧客が必要とするときに必要なものを作り、着実な実行を通じて信頼を築いていく」

 タン氏によると、Intelはドイツとポーランドにおける工場建設の計画を中止し、オハイオ州の施設の建設ペースを落としたという。また、現在コスタリカで行っている組み立ておよびテストの業務をベトナムとマレーシアに移管する予定だ。

 オハイオ州の製造工場は、Intelが受け取ることになった「CHIPS and Science Act」(CHIPSおよび科学法)に基づく78億6000万ドルの補助金の対象となった複数の拠点のうちの一つだ(注8)。本補助金は2024年11月に正式決定されたが、わずか数日前にCEOのパット・ゲルシンガー氏が退任し(注9)、暫定共同CEOのデビッド・ジンスナー氏とミシェル・ジョンストン・ホルタウス氏に経営が引き継がれた。連邦政府による補助金は、オハイオ州だけでなく、Intelによるアリゾナ州およびニューメキシコ州、オレゴン州の工場拡張計画にも充てられることになっている。

PC市場の回復が追い風となるか

 Intelがファウンドリー部門の再編を進める中、低迷していたPC市場は2025年の前半に回復の兆しを見せた。Gartnerが同年7月の初めに発表したレポートによると(注10)、第2四半期のPC出荷台数は、企業による需要の高まりや米国の貿易政策の変化を背景に、前年同期比で4.4%増加したという。

 Gartnerのリシ・パディ氏(リサーチ・プリンシパルアナリスト)は、レポートの中で次のように述べている。

 「米国では関税の影響による在庫積み増しの前倒しが2025年前半に起こると見られており、これに加えて『Windows 11』への買い替え需要が続くことから、2025年のPC出荷台数は前年比2.4%の増加が見込まれている」

 世界のPC市場の約3分の2を占めるLenovoおよびHP、Dellの3社は、2024年にIntelのAI対応型プロセッサ「Core Ultra」を自社製品に採用した主要サプライヤーの一部だ(注11)。Intelは同年12月に企業向けのArc GPUやアクセラレーターチップを追加し、AIプロセッサの製品群を拡充した(注12)。

 タン氏によると、AIに関連するさらなる強化も進行中だという。

 「これまで当社はAIに対して、従来型のシリコンを重視したトレーニング中心の発想で取り組んでおり、統合されたシリコンシステム・ソフトウェアのスタックや戦略を持っていなかった。現在、われわれはより抽象度の高いレイヤーであるシステムやソフトウェアの領域へ進出する必要があると認識している。これらの領域は、Intelが伝統的に弱かった領域であり、全く手を付けてこなかった領域だ」(タン氏)

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