NVIDIAは都市や産業インフラの安全性と効率性を向上させる「フィジカルAI」の最新技術を発表した。映像センサーとAIを活用し、危険作業の自動化や製造現場の品質管理、公共安全の強化を実現する。
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NVIDIAは都市や産業インフラにおける安全性と効率性の向上を目的とした「フィジカルAI」(物理的なAI)の技術開発に力を入れる。この技術は、物理空間の認識・推論能力をAIに持たせることで、都市や施設、産業プロセスの自動化と高度化を実現する。
同社は、Accenture、Avathon、Belden、DeepHow、Milestone Systems、Telit Cinterionなど複数の企業と協業し、フィジカルAIの開発を推進している。シミュレーションや学習、展開を循環させる開発プロセスにより、危険作業の自動化、輸送サービスや公共安全の向上、製造現場における不良品検知などが可能となる。
世界規模でニーズが高まっており、製造業の品質不良による年間損失は7兆ドル、労働災害や職業病による年間死亡者は約280万人に上る。こうした課題に対し、欧州連合では年間3000億ドルが治安維持と安全確保に費やされており、2024年には51万4000台の産業用ロボットが設置されている。また2030年には世界的に5000万人規模の労働力不足が見込まれる。
フィジカルAIは、映像センサーと先進のビジョンAI技術を基盤として構築される。NVIDIAの「Metropolis」プラットフォームは、エッジからクラウドまでの映像解析AIの開発や展開、拡張を容易にし、施設への視覚認識機能の迅速な導入を可能とする。
AccentureはBeldenと協力し、工場内の大型ロボットの周囲に仮想フェンスを設置する安全システムを開発した。このシステムはOpenUSDベースのデジタルツインと物理シミュレーションを活用し、3D空間認識による適応型の人とロボットの安全距離確保を実現する。
AvathonはMetropolisの「VSS Blueprint」(AIによる映像の検索、要約を行う機能群)を活用し、製造・エネルギー施設にリアルタイム映像解析を提供している。Reliance British Petroleum Mobility Limitedはこの技術をガソリンスタンド建設時に活用し、安全基準の順守率向上と作業時間削減を実現した。
DeepHowは作業手順を多言語の短尺映像やデジタルマニュアルに変換する「Smart Know-How Companion」を開発。Anheuser-Busch InBevはこれを使って研修期間を80%短縮し、手順理解度を向上させた。
Milestone Systemsは都市や産業用IP映像管理プラットフォームを通じて大規模な実世界コンピュータビジョンデータライブラリーを構築中だ。これにNVIDIAの「NeMo Curator」(テキスト抽出やクリーニングを実行できるマイクロサービス)や「Cosmos Reason VLM」(フィジカルAIとロボティクス向けの推論視覚言語モデル)を組み合わせ、交通管理や公共安全分野でのAI活用を進めている。
Telit CinterionはNVIDIA「TAO Toolkit 6」(AIモデルを独自データでカスタマイズするための機能群)を組み込み、欠陥検出や品質管理用の高精度AIモデルを迅速に開発・展開できるプラットフォームを構築した。
2025年8月10〜14日に開催された米国コンピュータ学会のCG関連分科会「SIGGRAPH」ではMetropolisのアップデートが発表された。概要は次の通りだ。
Cosmos Reason 1およびTAO 6.0はダウンロード可能で、VSS 2.4やDeepStream 8.0の提供も予定されている。
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