ネオクラウドがAIインフラの勢力図を変える? 成長の背景と課題CIO Dive

2025年、大手テクノロジー企業によるAI基盤構築が追い風となり新興クラウドプロバイダーへの需要が高まった。それらの事業者は今後、より幅広い顧客層が視野に入れてビジネスを展開する可能性がある。

» 2026年02月28日 07時00分 公開
[Makenzie HollandCIO Dive]

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マッケンジー・ホランド(Makenzie Holland)(「CIO Dive」シニアニュースライター)

2015年に米国インディアナ州立大学ブルーミントン校でジャーナリズムの学士号を取得。米連邦政府の技術政策担当記者、『Wilmington StarNews』記者、『Wabash Plain Dealer』記者(犯罪・教育担当)を経て現職。

 2025年もオンプレミスとクラウドを組み合わせるハイブリッドクラウドは主流のままだった(注1)。その流れの中で、AI処理に本格的に対応できる専用型の「AIクラウドプロバイダー」や「ネオクラウドプロバイダー」に注目が集まった。

 これらは、「Amazon Web Services」(AWS)や「Microsoft Azure」のような「何でもそろう汎用型クラウド(ハイパースケーラー)」とは異なる。最大の特徴は、AIの学習や推論に不可欠な高性能GPU(画像処理装置)のリソース提供に特化している点にある。

規模を拡大するネオクラウド事業者

 調査企業であるSynergy Research Groupが2025年10月に発表したレポートによると、ネオクラウドプロバイダーの売上高は2025年第2四半期に前年同期比205%増となり(注2)、通年では230億ドルを超える見通しだ。同調査企業は、ネオクラウドプロバイダーの売上高が2030年までに約1800億ドルに達し、年平均69%の成長率で拡大すると予測している。

 特定の分野に特化したAIクラウドプロバイダーの分野は(注3)、2026年に激しい市場競争に直面しており、大企業への本格的な参入をさらに強化する必要がある。大企業は、ネオクラウドプロバイダーが提供する価値に一段と関心を高めている。2025年2月に公開されたInternational Data Corporation(IDC)の調査「Cloud Pulse」によると、クラウドを購買した大企業の80%超が、自社のクラウド戦略をモダナイズしたいと考えている(注4)。

 IDCでリサーチを担当するデイブ・マッカーシー氏(バイスプレジデント)によると、ネオクラウドは、積極的な価格設定とシンプルなサービスによってハイパースケーラーよりも低コストを実現でき、クラウドを購買する大企業にとって魅力的かつ代替的な選択肢になるという。

 マッカーシー氏は「企業は用途に応じて最適なクラウドを選び、各プロバイダーにはそれぞれ強みと弱みがあることを理解するようになってきた」と述べた。こうした戦略の転換がネオクラウドプロバイダーによる市場への参入余地を生み出している。

 「ネオクラウドプロバイダーは差別化されたサービスを提供し続けられれば、長期的に維持できるビジネスの一角を見つけられるだろう」(マッカーシー氏)

AI導入が計算リソースに対する需要を増大させる

 McKinsey & Companyのパンカジ・サチデバ氏(シニアパートナー)によると、ネオクラウドはもともと独立系のGPU as a Serviceのプロバイダーとして誕生し、GPUのリソースが深刻に不足していた直近2年ほどの間に台頭してきたようだ。

 「GPUを保有するには、相当額の初期投資が必要になる。多くの企業は、AI向け計算資源の利用がどのように拡大するのかについて、明確なロードマップや予測モデルを持っていなかったため、その時点では購入よりもリースの方が適した選択肢だったのだ」(サチデバ氏)

 AIエージェントや高度な推論能力を持つAIモデルの導入が進み、計算リソースへの需要が急増する中で、ネオクラウドプロバイダーは供給の不足を補う存在として台頭した。サチデバ氏によると、ネオクラウド業界は、提供内容および顧客層、契約期間、市場全体の構造といった点で進化を遂げているという(注5)。

 サチデバ氏は次のように語る。

 「ネオクラウドプロバイダーは、当初はGPUを貸し出すだけの存在だったが、提供できるサービスや機能が進化し、AI関連の実証実験(PoC)に取り組むCIO(最高情報責任者)を中心に、企業にとってより現実的で価値のある選択肢になってきた」

 サチデバ氏によると、AIの展開はまだごく初期の段階にあり、一般的な大企業の場合、5〜20件あるプロジェクトのうち、実際に本番導入に至るのは1〜3件にとどまっているようだ。

 サチデバ氏は次のように述べた。

 「パイロット段階から本格的にスケールさせる転換点において、企業は『ここからはAIワークロードについて戦略的に考えなければならない』と意識し始め、さまざまな選択肢を検討するようになる」

 サチデバ氏によると、選択肢としては、パブリッククラウドプロバイダーの利用を引き続き拡大することも考えられる。また、一部のAIワークロードをオンプレミスに残し、残りをクラウドで運用するハイブリッド型のアプローチを採用するケースもある。さらに、新たなクラウドプロバイダーとの協業を検討する企業もあるだろう。

 「ネオクラウドプロバイダーは価格を含む明確な価値提案を持っており、それが大企業にとって魅力的な代替案として浮上してきている」(サチデバ氏)

2026年は存続に関わる根本的な問いに直面

 Synergyの市場分析によると、ネオクラウドプロバイダーのCoreWeaveはハイパースケーラーに対抗する最大の競合企業とされている。

 ただし、CoreWeaveが大企業における採用を拡大するには、まだ先の展開が必要だ。現在の主要顧客にはMicrosoftやOpenAIといった企業が含まれているためだ。MicrosoftはCoreWeaveの計算資源へのアクセスのために数十億ドルを投じており、OpenAIもこのネオクラウドのサービスについて220億ドル超の契約を結んでいる(注6)。

 マッカーシー氏によると、CoreWeaveをはじめ、VultrやFluidStack、DataCrunchといった他のネオクラウドプロバイダーは、2026年に向けてさらに勢いを増すAIインフラに対する需要を支えているという。

 「こうしたタイプの企業は、注目を集めつつある次世代のクラウドプロバイダーの象徴だ。汎用(はんよう)性が非常に高かった従来のクラウドとは異なるアプローチだ」(マッカーシー氏)

 CoreWeaveでプロダクトマネジメントを担当するコリー・サンダース氏(シニアバイスプレジデント)によると、同社はAI機能の提供と支援に注力しているという。同氏によると、CoreWeaveはAI研究者や開発者を主な顧客としてきたが、近年は大企業や金融サービス分野からの関心も徐々に高まっているとのことだ。

 サンダース氏は「AIに重点を置いた取り組みを進めている顧客にとって、トレーニングや研究、推論はビジネスの重要性が高く、コストが大きくなるものだ」と述べている。その上で、それらの顧客は既存のクラウドプロバイダーだけでなく、他の選択肢にも目を向ける意欲を持っているのだ(注7)。

 マッカーシー氏によると、ネオクラウドの弱点は特定の分野に特化し過ぎている点にある。一部のネオクラウドは、大企業が求める幅広いニーズを満たすだけの網羅性に欠けている。一方で、Vultrのようなネオクラウドプロバイダーは、汎用クラウドとAI特化型クラウドの中間に位置しており、その結果、より多様な顧客基盤を獲得している。

 サチデバ氏によると、ネオクラウド市場は2026年を迎えるに当たり、存続に関わる根本的な問いに直面している。

 同氏によると、ネオクラウドプロバイダーは、ハイパースケーラーやAI研究機関といった1社または2社の大口顧客を中心にビジネスを構築し続けることで、市場成長の維持自体は可能だという。しかし、将来の成長と成功の基盤となるのは大企業だ。

 ネオクラウドプロバイダーは大企業にとって十分な価値を有する提案ができるものの、さらなる普及を実現するには幾つかの障壁を乗り越える必要があるという。具体的には、GTM(Go-to-Market)や流通戦略の見直し、エンタープライズ向けにすぐ使える機能の拡充、業務上クリティカルなアプリケーションに対応したサービスレベルでの契約の最適化などが求められている。

 「最終的に、ネオクラウドモデルの長期的な持続可能性は、何らかの形で大企業に採用されるかどうかにかかっている」(サチデバ氏)

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