IVRyは「アイブリー AI Contact Center」の提供開始を発表した。既存ベンダーが先行する市場において、業界が抱える構造的な課題の解決を目指す。
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IVRyは2026年3月2日、「アイブリー AI Contact Center」の提供開始を発表した。これまで対話型音声AI SaaS「アイブリー」を提供してきた同社にとって、本格的なコンタクトセンター領域への参入となる。
既存ベンダーが先行する市場において、同社は「AIネイティブな設計」と、システムインテグレーション(SI)に依存しない「SaaS型モデル」を強みに、業界が抱える構造的な課題の解決を目指す方針だ。
IVRyの山田聡氏(BizDev Solution Architect)は、コンタクトセンター市場を取り巻く現状について、「2030年に国内で644万人、うちサービス業で約400万人の労働力が不足する」という予測を挙げ、コンタクトセンターは「人材制約の最前線」にあると指摘した。人員を増やせば回るという従来の前提が揺らいでおり、採用難や応答率の低下、オペレーターの疲弊という運営の三重苦が事業継続性リスクとなっているという。
また、2026年10月には企業におけるカスタマーハラスメント(カスハラ)対策の義務化が予定されており、従業員の安全配慮や負担軽減の実装が急務と話す。
これに対し、今回発表したアイブリー AI Contact Centerは、人間のオペレーターを効率的に支援するという設計ではなく、AIによる一次対応を前提とした「AIネイティブな設計」を採用している。まず着信をAIが受け、応答率100%の体制を維持する。AIのみで完結できる定型業務はそのまま処理し、人でなければ対応できない複雑な案件のみを、AIがヒアリングした内容とともに人間のオペレーターに引き継ぐ。
IVRyの岩間悠太氏(CSO補佐 コンタクトセンター事業統括責任者 Sales&Partner Alliance)は、「世の中に出ているシステムは『人のオペレーションを効率的に支援する』ために作られている。われわれはAIネイティブの発想で、AIが受けて必要なものだけをオペレーターに渡す」と話す。
通話内容は自動でテキスト化、要約され、「IVRy Analytics」や「IVRy Data Hub」を通じて客観的なデータとして経営層や事業部門の分析に活用される。特定ワードの通知機能により、現場のトラブルを管理者がリアルタイムに把握することも可能だ。
IVRyの対話型音声AI SaaSは全国98業種、累計5万アカウントの導入実績を持ち、近年は大企業での導入や実証実験も進んでいる。ただし、大規模なセンターを持つ企業については、既に海外ベンダーや国内大手のコンタクトセンターサービスを導入済みなことが多く、IVRyのコンタクトセンターサービスは後発の参入となる。初期投資なしで即座に立ち上げられる同社のSaaS型アプローチが効果を発揮するのは、既存システムの硬直性に悩む層や、これまでコスト面から導入をちゅうちょしていた中堅・中小市場とも考えられる。
既存ベンダーが先行するこの市場でIVRyによる「AIネイティブ」な手法がどこまで受け入れられ、定着していくのか。その実効性が注目される。
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