VMware移行市場に起きた“変化” 大手3社の事例から見るインフラ刷新の実態「.NEXT 2026」現地レポート

BroadcomによるVMware買収後のライセンス体系変更を受け、仮想化基盤の再検討に動く企業が増えた。Nutanixの自社イベントでは、業種の異なる大手3社が移行の背景と実態を伝えた。

» 2026年04月21日 07時00分 公開
[末岡洋子ITmedia]

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 VMware製品の価格体系やライセンス体系の抜本的な見直しから約2年が経過し、ユーザー企業の関心は単なる「コスト増への懸念」から、「次世代を見据えたインフラの再定義」へとシフトしている。

 2025年4月上旬、米シカゴで開催されたNutanixの自社イベント「.NEXT 2025」では、グローバルで送金サービスを展開するWestern Union、韓国最大のテーマパークEverland、そして大手リゾートブランドのWynnが登壇。それぞれが直面した課題と、VMware環境からのマイグレーション(移行)に至った実態を明かした。

両端に並ぶユーザー企業の担当者。左はWestern UnionのBrandon Shaw氏、右はEverlandのJinyoung Woo氏(筆者撮影)

年間数千社がVMwareからNutanixに 「意思決定の方程式が変わった」

 VMwareがBroadcomに買収された当時、NutanixはVMware顧客に移行のプロモーションを積極的に展開した。買収完了から2年以上が経過した現在も、VMwareからの移行は大きなビジネスなのか。

 カンファレンス期間中のプレス向けQ&Aセッションで、NutanixのCEOのRajiv Ramaswami(ラジーブ・ラマスワミ)氏(以下、ラマスワミCEO)は、Broadcomの顧客基盤は世界で約30万社、そのうちNutanixがターゲットとするのはエンタープライズとコマーシャル、ミッドマーケットを合わせた約16万5000社だと明かした。VMware移行市場に対する積極的な取り込みを進めており、毎四半期500〜1000社のペースで新規顧客を獲得しているとのこと。直近の四半期は約1000社だったと報告した。

 移行は「波状に進む」とラマスワミCEOは分析する。Broadcom買収直後に素早く動いた「第一波」に続き、様子見をしていた企業が再契約を経て移行を開始する「第二波」が起きているという。今後は、「VMware Cloud Foundation」(VCF)の次期バージョン「VCF 9」のリリースが新たなトリガーになると見ている。

 「コストがどうなるかが明らかになった今、顧客の意思決定の方程式が変わってきた。コストだけでなく、長期的なプラットフォームとして信頼できるかという問いが加わった」(ラマスワミCEO)

Western Union 175年企業の「長期的な賭け」

 創業1851年、世界200カ国以上で送金サービスを展開するWestern Unionは現在、Nutanixへの移行を進めている最中だ。同社のエグゼクティブバイスプレジデント兼テクノロジーサービスのグローバルヘッドであるBrandon Shaw(ブランドン・ショー)氏(以下、ショー氏)は「移行開始からまだ6カ月」と語り、その決断に至る経緯を詳しく説明した。

 Western Unionは世界中に約50万カ所の取扱店を持つ。その数はスターバックス、セブンイレブン、マクドナルドの合計を上回る規模だ。ショー氏によると、稼働するサービスやアプリケーションは900〜1200個にのぼり、多くの国と地域でデータの域外持ち出しを禁じる規制への対応も求められる。世界中のデータセンターで約3900台規模のサーバ群から成るインフラを運用している。

 移行を決断した理由としてショー氏が最初に挙げたのは「経済的な変化」であり、「Broadcomが採用した新しい経済モデルが大きな要因だった」と話す。同時に、Western Union自身の変革も背景にある。

 「かつてはトランザクション中心の会社だったが、今はカスタマーファーストへと転換を進めている。その過程で、同じ機能を担う技術が5〜7種類も重複して存在するような状況を解消している」

 Nutanixを選んだ決め手は「長期的なパートナーシップ」だ。「短期的に契約を取りにくるのではなく、将来の戦略に向けてどう支援するかを最初から話し合ってくれた。われわれは次の10年、15年、そして創業200周年(2051年)を目指している。短期ではなく長期で判断する」

 移行の課題は、老朽化したアプリケーションの扱いに加え、移行の最中に新たなM&Aが発生したことで計画外の複雑さが加わったことだ。直近ではIntermexの買収が完了し、米国からラテンアメリカへの送金ルートに強みを持つ同社のシステム統合が新たな課題となっている。それでも「予想外の障壁はなく、予期していたことと一致している」とショー氏は強調した。

3カ月のタイムラインで移行、韓国のテーマパークEverland

 韓国最大のテーマパークEverlandは「VMware Cloud on AWS」からNutanixに移行している。

 年間約600万人が訪れるというEverlandは、運営システムが24時間365日稼働し続けることが前提だ。「システムが止まれば、パークは運営できない」と同社のITインフラエンジニア、Jinyoung Woo(ウ・ジニョン)氏(以下、ウ氏)は話す。

 移行検討のきっかけはBroadcomによるライセンスポリシーの変更で、運用コストが許容範囲を大きく超えたためだ。「当初は値上げを受け入れて継続する方向で検討したが、実際の値上げ幅は想定を大幅に上回るものだった」とウ氏は話す。

 移行しなければシステムが使えなくなるというリスクを前に、与えられた期間はわずか3カ月だった。「AWS EC2」へのクラウドネイティブ移行も検討したが、既存のVMware環境を作り直す時間的余裕はなかった。またコストとリスクを考慮すると、現実的ではないという判断に。そこで選んだのが「Nutanix Cloud Clusters(NC2)on AWS」だ。「既存のインフラ構成を変えずに移行できる唯一のソリューションだった」とウ氏は話す。

 結果として、全VMware環境の移行を3カ月以内に完了した。切り替えの際もサービス停止はゼロだった。ウ氏は移行を振り返り、「(Nutanixの移行ツールである)『Nutanix Move』に不安を感じた場面もあった。しかし実際に動かしてみると、正しく移行できていた」と語った。

 ウ氏は、Everlandの最重要要件は「IPアドレスやファイアウォールルールを変えないこと」と「無停止での移行」の2点と話す。「最初から要件を明確に定義することが重要」と移行プロジェクトの成功を振り返った。

ミッションクリティカル環境での完全移行を完了したWynn

 米ラスベガス、ボストン、マカオなどに施設を展開するリゾートブランドWynnも、システムへの要件が厳しい中で移行を選んだ。同社のCIO兼CTO兼CDIOでDX担当を務めるDan Regalado(ダン・リガラード)氏(以下、リガラード氏)は、「顧客の要求は厳しい。スロットマシンのチケットが出なければ、すぐにソーシャルメディアに書き込まれる」と話す。厳しいのは顧客の要件だけではない。スロットマシンなどカジノの現場では1分でもダウンタイムが生じると、膨大な規模の機会損失が生じる。

 リガラード氏の前任者が移行先に選んだのは、Nutanixのハイパーバイザー「Nutanix AHV」(以下、AHV)と管理プラットフォーム「Nutanix Prism」(以下、Prism)がベースだ。リガラード氏がCIOに着任した時点で移行プロジェクトがスタートし、「今月、ボストンの拠点を最後に、100%移行が完了した」と報告した。

 同社は現在、UAE(アラブ首長国連邦)への初進出となる約1500室規模の新施設開発を進めているところだ。リガラード氏によると、UAEの新施設はNutanixのベースのインフラを使ってオープンするという。新施設でもAHVとPrismを採用し、データレジデンシーとデータセキュリティを最優先要件として取り組むとした。

 今後はAIの活用も積極的に進める。リガラード氏によると「CEOが組織全体にAI導入を推進しており、ゲスト体験のパーソナライゼーション、業務効率化に活用していく」とのこと。AI処理については現在クラウドで実装しているが、データセキュリティや自社データの管理、コスト効率の3点を理由に、オンプレミスやハイブリッド構成への移行も検討しているという。また、ゲーミングに関するデータが州をまたいで移動することを禁じる規制への対応も、データ主権の観点から重要な要素として挙げた。

移行は「コストの問題」から「信頼の問題」へ

 NutanixのラマスワミCEOは、移行に共通する3つの課題を挙げた。第1は「リファクタリングか、リフト&シフトか」の選択で、古いシステムを刷新したいという誘惑は強いが、多くの場合「コストに見合わない」と指摘。第2はネットワークの複雑さで、特にIPアドレスの継承と無停止での移行の両立が難しい。第3はセキュリティモデルの転換で、オンプレミスの「境界防御」型から、ゼロトラストを前提とするクラウド型への根本的な発想の転換が必要だと述べた。

 日本市場でも同様の変化が起きていると、ニュータニックス・ジャパンの荒木祐介氏(執行役員 Field CTO兼システムエンジニア統括本部長)は指摘する。「最初はどうしても急に対処しなければならない部分がお客さま側でも多かった。だが、ある程度時間が経過し、次を見据えたものをどう選定するかという検討に変わってきている」。同社としても単なる移行先としてではなく、移行後の将来像を示した上で提案しているという。

(取材協力:Nutanix)

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