矢野経済研究所によると、世界ヒューマノイドロボット市場は2025〜35年にCAGR83.5%で成長し、2035年の出荷台数は約718万台に達する見通しだ。AI・ロボティクス技術の進展と各国の政策支援が市場拡大を後押しする。
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フィジカルAIへの注目が高まっている。フィジカルAIとは、カメラやセンサーなどを通じて収集した物理空間の情報を基に、AIがロボットなどの「物理的な身体」を自律的に動作させる技術だ。
多くの企業が実装に向けて動く中、「物理的な身体」であるロボットの市場の動向はどうか。矢野経済研究所のヒューマノイドロボットの世界市場に関する調査結果から探る。
同調査によると、グローバルヒューマノイドロボット市場の2025〜2035年におけるCAGR(年平均成長率)は83.5%と高成長が見込まれる。中国を中心とした新規参入企業の増加と、米国企業による商品化・量産化の進展が主因と同社は分析する。活用分野は産業領域から、家庭・個人向け、サービス分野まで拡大する見通しだ。
技術面では、AIやセンサー技術の高度化により、自律性と環境適応能力が向上する見込みだ。市場拡大に伴い、部材サプライヤーのコストは低下に向かう。加えて、各国政府による財政支援の強化が市場形成を後押しすると同社は指摘する。
2025年の世界ヒューマノイドロボット市場規模は、メーカー出荷台数ベースで前年比647.9%増の1万6580台と推計する。地域別に見ると、台数ベースで84.8%を占める中国が市場を主導している。中国政府が推進する産業育成政策を背景に、同国の参入企業は200社以上に達し、大規模プロジェクトが市場拡大をけん引している。
一方、欧州と米州は台数ベースでそれぞれ7.4%、5.9%にとどまるものの、いずれも前年比300%超の伸長を示している。研究段階から実証・現場適用段階への移行が進んでいる。日本市場は参入企業が少なく、研究・試験導入が中心で、84台にとどまった。その他地域では、教育・研究用途を中心に中国製品が導入されている。
2026年の同市場は、メーカー出荷台数ベースで前年比492.7%増の8万1690台となる見込みだ。TeslaやFigure AI、1X Technologiesなどによる量産開始に加え、中国企業の海外展開や米国家庭用市場の立ち上がり、韓国企業の参入増加が市場拡大に寄与するとみられる。
出荷台数ベースでは、中国と米州(北米大陸、南米大陸、カリブ海諸国)が市場をけん引する見通しだ。一方、金額ベースでは台数シェアに対して米州と欧州の比重が高い。米州と欧州では自国企業が生産した高スペック・高価格帯製品が普及し、中国では商業分野や中小企業を中心に低価格帯の中国製品が浸透するものと矢野経済研究所は予想する。
ヒューマノイドロボットの中でも、特に注目されるのがデクストラスハンド技術だ。デクストラスハンド技術とは、人間の手の自由度や精密制御、感覚フィードバックを再現するための核心的研究領域を指す。
ヒューマノイドロボット市場は今後、デクストラスハンド技術における原価競争力と精密動作性能の両立が拡大のカギになると同社は分析する。主要国で少子高齢化に伴う労働力不足が深刻化することを背景に、人間の作業負担を軽減する補助、代替手段として普及が進む見通しだ。
加えて、主要国における政策支援の強化を受けて、参入企業や実証導入がさらに増加する見込みだ。これに伴い、実環境での作業実現性が高まり、活用用途の拡大が期待される。
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