ある調査によると、AIの活用によって従業員は週11時間の削減に成功した。だが、そこで生まれた時間の多くが結局、「AIの世話」に消えているという。6000人を対象とした調査で判明した、「週11時間」の内訳と、「AIの世話」の具体的な内容とは。
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エンタープライズAI分野を担当。2019年からスタートアップから大企業までテクノロジー業界を取材している。
企業向けのAIプラットフォームを提供するGleanの調査部門Work AI Instituteは2026年6月10日(現地時間、以下同)、AIの業務利用に関する調査レポート「Work AI Index」を公開した(注1)。同レポートによると、知識労働者の4分の3はAIによって生産性が向上したと回答している。一方で、AIによって会社の業績が大幅に向上したと答えたのはわずか13%にとどまっている。
同調査によると、AIを利用した業務自動化によって節約できた作業時間は、平均して週当たり約11時間に上る。だが従業員は、「節約できた時間の大部分をAIの管理に費やしている」と回答した。では、従業員はAIとのやりとりで具体的に何をしているのか。
同調査によると、AIとのやりとりに費やした時間のうち、AIを使って業務を進める時間よりもツールを管理する時間の方がわずかに多かった(編注1)。ツールの使い方を学んだり、エージェントを構築したりする時間は全体の27%を占めた。
(編注1)同レポートによると、従業員がAIに関わる時間の内訳は「AIの管理」が37%、「AIを使った実作業」が36%、「ツールの学習とエージェント構築」が27%だった。
「企業のAI活用が成功するかどうかは、AIを支える人的インフラに左右される」と同レポートは指摘する。ユースケースを改善するために、リーダーはAIに企業固有のコンテキストを与え、従業員にユースケースの研修を実施し、シャドーAIを「会社が承認したツールが不十分であることを示す兆候」として捉え、日々の意思決定にガバナンスを組み込む必要がある。
AIはこれまで人間が担っていた作業を引き受けつつある。だが、従業員は今、AIの出力を業務で利用できるレベルに引き上げるための“目立たない作業”に時間を割いている。AIエージェントにコンテキストを与え、作業内容を確認し、間違いを指摘し、回答を修正するといった作業だ。
同レポートによると、従業員はこうした保守作業に週当たり6時間半近くを費やしている。単調な作業はミスにつながりやすい。従業員が出力結果を注意深く確認したり、AIの推奨内容が妥当かどうかを検証したりすることを仮に取りやめた場合、ミスは見過ごされる。実際に69%の従業員が、「内容を検証していない成果物を提出したことがある」と認めている(注1)。
「多くの企業がAIの導入を、ライセンス数やプロンプト数、利用率の増加といった見かけだけの指標として扱っている」。Gleanのレベッカ・ハインズ(Rebecca Hinds)氏(Work AI Institute責任者)は、同レポートでこう述べる。
「AIの利用が増えても、それが生産性やテクノロジーによる変革につながるわけではない」とハインズ氏は指摘する。同レポートによると、従業員はAIから有用な出力を得るために1時間を費やした後、それを提出できる状態にするためにさらに1時間かけている。AIとのセッションの3分の1以上は完全に失敗するため、従業員は最初からやり直すか、タスクを大幅に作り直す必要が生じるという。
「従業員がAIの管理に時間をかけすぎているなら、その企業は(これまで人間が担っていた)業務を削減できたのではない。新しい種類の業務と、従業員や管理者にとって余分な負荷を生み出しただけだ」(ハインズ氏)
「AIを実際の業務の進め方の一部として組み込んでいる企業は、AIを使うこと自体が目的化している企業よりも成功する可能性が高い」とハインズ氏は述べる。成功している企業は、AIの利用を支える人的インフラをより多く整備している。AIをどのように、どのタイミングで使うのか、さらに利用に当たってのガードレールについて従業員に研修を実施している。
「AI活用に成功する企業は、できるだけ多くAIを使おうとするのではなく、AIによって浮いた時間を、より質の高い人間中心の仕事や、より強固なAIスキルに再投資する方法を身に付けている」と同レポートは述べる。企業が成果を得られるかどうかは、個人、チーム、組織のそれぞれのレベルで基盤を築けているかどうかに左右される。
「適切なコンテキストに基づき、実際の成果によって評価され、品質の基準を下げることなく従業員が速く動けるように統制されている状態だ」(ハインズ氏)
なお、Gleanの調査部門Work AI Instituteによる調査は6000人のデジタルワーカーを対象に実施した。レポート「Work AI Index」を作成するに当たって、Gleanのプラットフォームを利用するAI活用のリーダー層からの知見も加えた(注2)(編注2)。
(編注2)調査は米国3000人、英国1500人、オーストラリア1500人のフルタイム勤務者を対象として、2025年12月〜2026年1月に実施された。日本は調査対象に含まれていない。
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