業務におけるAIエージェントの投資優先順位をどう決めればよいか。業務・業種別のAIエージェントはどう進化していくか。ガートナージャパンの著名アナリストである亦賀忠明氏のWebセミナーから探る。
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多種多様な業務に向けてAIエージェントが投入される中、自社のどの業務からAIエージェントを導入すべきかといった投資優先順位はどのように決めればよいのか。そして、業務・業種別のAIエージェントはこれからどう進化するのか。
米Gartnerの日本法人ガートナージャパンの亦賀忠明氏(ディスティングイッシュトバイスプレジデント、アナリスト)が2026年6月23日に開いたGartner Webinar「生成AIとAIエージェントトレンド:2026」で興味深い話を聞いたので、今回はその内容を紹介してAIエージェントの生かし方について考察したい。
「AIは新たな産業革命だ。ゴールを見据えて“AI筋力”を鍛え、果実を得よう。その際、人間がAIを生かすために最も重要なのは、“自らの意思”をAIにしっかりと伝えることだ」
亦賀氏はトレンドの話に入る前に、こう切り出した。AIによる産業革命のプロセスを「山登り」になぞらえ、「AI筋力」を鍛えながら、より高い山を目指していこうと訴えた。
同氏は日本企業でのAI活用の現状について、次のように6つのタイプに分けて説明した。
以上が、日本企業におけるAI活用の現状だ。AIについては最先端の動きばかりが注目されがちだ。しかし、企業ユースについては上記のような現状をしっかりと踏まえて、地に足の着いた議論をし、取り組んでいきたいものだ。
ここからは、亦賀氏の今回のWebinarで、筆者が特に注目した2つの疑問を取り上げていく。
まずは、企業の業務においてAIエージェントの投資優先順位をどう決めればよいかだ
亦賀氏は、次のような計算式を提案した。
・AIエージェント投資スコア=(F×D×V×A)/C
「F」はFeasibility(実現可能性)、「D」はData Readiness(データ準備度)、「V」はValue(業務価値)、「A」はAdoption(利用定着度)、「C」はCost(導入・運用コスト)だ。
この計算式を基に、業務領域ごとのユースケースで、AIエージェントと投資評価(5段階)を示した例が、表1だ。
一番上のソフトウェア開発領域でのコード分析・テスト生成ではF、D、V、Aとも「5」と高評価が並んでいる。一方、Cは「2」と低く抑えられるという評価から、全社展開へ向けた優先度が「高い」という判定になる。
これに対し、一番下の経営企画領域での市場分析・意思決定支援ではDとAが「2」、FとCが「3」で投資スコアが低いことから、「継続モニタリング」となっている。
同氏によると、「とりわけDのデータが準備できるかどうかが、AIエージェントを生かす重要な要素となる」とのこと。その上で「自社でこのスコリングを自らの評価として実施し、AIエージェントの投資優先順位を決めるための参考にしていただきたい」と呼びかけた。
筆者が注目したもう一つの疑問は、業務・業種別のAIエージェントがこれからどう進化するかだ。
亦賀氏はAIにおける最新トレンドの一つとして「職業AIエージェントの勃興」を挙げた。同氏は業務・業種を「職業」と表現しているので、以下ではそれに準じる。
職業AIエージェントについては、さまざまなベンダーから既に多くのサービスが提供されている(表2)。
表2で筆者が注目したのは、「業務アプリケーション型」「職種特化型Co-worker」「ナレッジワーカー型」「Agentic Automation型」「オペレーション/意思決定型」「Agent Builder型」といったベンダーグループの分け方だ。業務プリケーション型以外の分類がなかなか難しいが、こうした捉え方は今後のAIエージェントの適用にも参考になりそうだ。
同氏は職業AIエージェントのロードマップについて「2026年は職業特化型の勃興期となる。2027年から2028年にわたってシングルエージェントが成熟する。2029年にマルチエージェント連携が活発になる。2030年には職業AIエージェント群によるAIワークフォースが当たり前になる」との見方を示した。その上で、「職業AIエージェントはこれから実現可能性が一層高まり、成熟度が増す。導入した企業では、人間とAIの協働による大幅な生産性向上が進むだろう」と予見している。
さらに、そうしたロードマップに伴って、企業および業界はどのように変わるのか。同氏はこうした観点から、次の3つのステージを提示した。
また、AIは「ASI」(人工超知能)となっていく。こうしたステージにおいて金融や製造、流通・小売の各業界はどのように変わるかを示したのが、表3だ。
スレージ3では、金融は「AIがマクロ経済や社会を自律的に運用・構築する次世代金融基盤」、製造は「AIが製造計画・設計・稼働まで完全自律化する自己進化型工場」、流通・小売は「AIが需要・設計・環境負荷を統合して動かす自律型流通エコシステム」が形成される。すなわち、AIエージェントが金融基盤や工場、流通エコシステムを自律的に動かす世界に入っていく。
そのとき、人は何をやっているのか。表3には記されていないが、そうした仕組みを何のために構築し、動かしているのか。人は、その意思をAIに対して明確に示す立場であり続けなければならない。そのために、AIがトレーニングし続けるように、人もそのAIを使いこなす「筋力」を鍛え続けなければならないのである。
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
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