Workdayが、ホーム画面をAIとの会話で操作するSanaに切り替えた。ClaudeやSlackからもデータを使えるようにし、課金も「AIがこなした仕事の量」に応じる形へ広げる。製品トップのゲリット・カズマイヤー氏に、その狙いを聞いた。
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人事系SaaSでグローバル大手のWorkdayが、ホーム画面を自然言語ベースの「Sana」に置き換えた。創業21年目で初の大規模なUI改革となる。刷新は、AIを前提としたERPの再構築の一環に位置付けられる。AIは同社に新たな事業機会ももたらしており、人事、財務に続いてITサービスマネジメント(ITSM)分野にも乗り出す。
2026年10月に米ラスベガスで開催された同社の年次イベント「Workday Rising 2026」で、Workdayのゲリット・カズマイヤー(Gerrit Kazmaier)氏(製品およびテクノロジー担当プレジデント)に、AI時代にWorkdayがどこへ向かうのかを聞いた。
──製品およびテクノロジー担当プレジデントに就任して2年が経過します。この期間はSaaS業界の激動と重なりますが、プレジデントとして最も優先してきたことは何ですか。
カズマイヤー氏: 最大の優先事項は、Workday自身と顧客のAI変革を推進することです。
取り組みは3つに集約できます。1つ目は、AIが適法(lawful)で、信頼でき(trusted)、安全(secure)であること。2つ目は、AIを前提にあらゆるプロセスを再設計し、顧客に届けること。3つ目は人材で、人をAI時代の成長の最大の原動力にすることです。AIを使いこなす人が成果を生むという考え方で、これはWorkday社内だけでなく、顧客企業にも当てはまります。顧客の従業員にAIの使い方を教えるだけでなく、一人一人がAIの可能性を引き出せる体験とツールを提供したいと考えています。
私たちはAIを、単なる効率化の手段ではなく成長の機会と捉えています。成長のために人を採用するのではなく、チームを再配置して成長につなげるということです。今年のRisingでは、これを支援する「Work Intelligence」を発表しました。職務をタスクに分解し、AIが自動化できるもの、AIが支援できるもの、人間が担うべきものに仕分ける機能です。
製品面では、AIによって全てのプロセスが変わる以上、ERPの定義も見直す必要があります。Workdayは、次世代のERPを2つの観点で捉えています。
一つは、人材がAI時代の成長の源だということです。優れた人材がAIで素晴らしい成果を生むことは調査でも分かっています。
人材の力を引き出すために、Risingでは幾つかのことを発表しました。まず、Sana(2025年に買収したSana Labsのプラットフォーム)は、Workdayの全てのアプリに自然言語でアクセスできる、新しいホーム体験になりました。入社、退社、異動に伴う手続きやアクセス権限の管理をチケットなしでAIが自動化する「Sana Concierge」も発表しました。「Sana in Claude」では、Claudeを使う従業員もHRと財務の知識に裏打ちされたWorkdayのAIを使えます。こうして、従業員がAIを使いこなせるようにします。
先ほどお話しした「Work Intelligence」は、その前提になる機能です。
もう一つは、本来の仕事の妨げになる雑務をAIエージェントが引き受けることです。従来のERPは硬直的で、変化が遅いものでした。次世代のERPは、組織が優先事項に合わせて、人や仕事の配置を絶えず組み替えていける仕組みだと考えています。それを担うのが、HRと財務のデータを基に選択肢を比較して意思決定から実行までを支える「Decision Intelligence」、そして「Work Intelligence」「Sana Concierge」で、これらが連動して動きます。
──昨年のRisingで、「エージェントはアプリケーションを置き換えず、強化する」と話していました。今年はTrusted Agent Platformがヘッドレス(編注:画面を介さず、外部のツールやエージェントから機能やデータを利用できる形態)になり、Sanaがデフォルトのホームになりました。アプリケーションはどこに残るのでしょうか。
カズマイヤー氏: 昨年からの進化は2つあります。
1つ目は、ユーザー体験です。昨年、私たちはSanaでWorkdayのユーザー体験を再構想すると言いました。今年、SanaがWorkdayのホーム体験になったことで、Workdayの全てのアプリケーションに、AIファーストの会話型インタフェースからアクセスできるようになりました。
AIによって、UIの在り方が変わりつつあります。決まった項目を入力する「フォーム」から、一緒に仕事を進める「知的な同僚」へと変わっていく。全ての顧客にとってWorkdayが使いやすくなります。さらに「Sana Enterprise」を使えば、「Salesforce」や「Slack」など、Workday以外のシステムでも、同じAIの体験で仕事を進められます。
2つ目は、Workdayの外からも使えるようにしたことです。顧客からは、Workdayの人事・財務データを、営業やサービスのデータなど、他のデータと一緒に見たいという要望が数多くありました。組織全体を見るには、それらを同じ場所で見る必要があるからです。
そこで、Claudeからアクセスできる「Sana in Claude」のように、Workdayの画面を開かなくても顧客が自社のツールやエージェントからWorkdayのデータを使えるようにしました。データはコピーせず、そのまま照会できます。さらに「Agent Harness」で、顧客が自社で作るAIエージェントも、Workdayと同じ権限管理や承認、監査の下で動かすことができます。
──ヘッドレス戦略はユーザーとSaaSの関係を変える可能性があります。Workdayは自社を現在でもSaaS企業と捉えているのでしょうか。SaaSはどのように進化していくのでしょうか。
カズマイヤー氏: 私たちはWorkdayを(市場の定義ではなく)顧客の目線で見ています。その目線から見て、現在WorkdayはAIカンパニーです。
顧客がWorkdayのAIを使う方法は、大きく2つあります。
一つは、先ほどお話ししたように、顧客が既に使っているツール(ClaudeやChatGPTなど)の中から、WorkdayのAIを使う方法です。今回のRisingでは、Anthropic、OpenAI、音声のElevenLabs、Sanaの画面を動的に作るモデル「Jev」を提供するTypeSafe AIなどとの提携を発表しました。顧客がどこで働いていても、私たちのAIがそこに届くようにするのが狙いです。
もう一つは、WorkdayのSanaから直接使う方法です。Sanaは、HRと財務のあらゆるワークフローを想定して設計しているので、コンテキストも、支えるワークフローも、HRと財務の担当者に最適化されています。汎用のAIよりはるかに優れた体験になると考えていて、顧客にとって、AIを使う最良の方法だと思っています。
──Workdayのホーム画面であるSanaか、Claudeなど外部のツールか、利用のバランスをどう見ていますか。
カズマイヤー氏: どちらの利用が多いのかは私たちにとっては問題ではありません。どちらの“道”からでもWorkdayのAIとインテリジェンスにつながっていて、同じ結果にたどり着くからです。今日、既に多くの人がSlackからWorkdayを使っています。Slackで仕事をするなら、WorkdayがSlackに現れる。Claudeで仕事をするなら、WorkdayがClaudeに現れる、という状態です。
ただ、HRと財務には、Sanaが最良の体験になると信じています。その理由は、AIはドメインの理解に大きく依存し、コンテキストの質が重要だからです。
また、全てのタスクで会話型のインタフェースが向くわけではありません。例えば、応募者の表を見る採用担当者や、データの表を扱う財務アナリストには、別の操作方式が必要です。Sanaは、HRと財務のために作られたもので、汎用のツールではありません。ただし、Sanaと外部のツールは対立しません。共存できると考えています。
──AIエージェントのセキュリティ問題が話題になっています。安全性をどのように保つのでしょうか。
カズマイヤー氏: セキュリティの問題は、モデルがどれだけ賢いかではありません。問題は、制約のない、境界のない実行権限を持つことです。モデルが予測不能に振る舞うこと、トークンの消費が猛スピードで進むことです。ルールに縛られずに動くAIは、企業では使えません。企業に必要なのは、私たちが“lawful AI”と呼ぶものです。
lawful AIとは、定義したワークフローやプロセスの中で動き、顧客のデータとコンテキストに根差し、全てのアクションが監査可能で、追跡可能で、安全であるAIです。AIがプロセスを動かすのではなく、決定論的なプロセスの中で、AIの判断を使える要所に限ってAIを使う設計です。再現性、監査可能性、追跡可能性は、保証したいものだからです。その要所では、人間のオペレーターを待つ代わりにAIが判断します。
そのために、強力なガードレールが必要で、「Trusted Agent Platform」があります。企業が考えるべきなのは、AIを使うかどうかではなく、どのようなガードレールの下で使うかです。
安全性には、もう1つの柱があります。どこまでAIに任せ、どこに人を残すか、という設計です。
Workdayでは「ヒューマン・イン・ザ・ループ」の下、人の関与はプロセスの重要性と、それが人に及ぼす影響で分けています。例えば、収入や雇用に実質的に影響することは、人が最終的に監督します。Workdayは採用の意思決定を自動化しません。最終的には常に人が判断すべきだと考えているからです。一方、面接の調整やスケジューリングは自動化します。応募する人は、たいてい今の仕事を終えた後に応募しますが、そのとき採用担当者も仕事を終えています。1日、場合によっては週末をまたいで待つことになり、最良の人材を逃しかねません。ここは、人が関与しなくてよい例です。取引のサンプリングや、会計記録の財務コンプライアンスも同様です。AIは人間よりはるかに正確で、リアルタイムでできて、人の機会へのアクセスに直接影響しないからです。
──Workdayは今年、HR、財務に続いてITSM(ITサービスマネジメント)も柱に加えました。ServiceNowと競合することになりますか。
カズマイヤー氏: 私たちは、AIがあらゆるものを変えると根本から考えています。その中で、Workdayには顧客のために引き出せる価値がたくさんあります。例えば、人が組織に入り、去り、チームを移るとき、そこで必要になる情報は全てWorkdayの中にあります。誰が何にアクセスしてよいか、いけないか、という知識も、Workdayのデータモデルの一部です。
AIによって、この仕事を、チケットを起こさずに自動化できるようになりました。それが「Sana Concierge」です。顧客は、Sana Conciergeで、ITサービスの自動化の多くを実現できます。
──課金体系では、2025年にFlex Creditsを導入しました。これについて教えてください。
カズマイヤー氏: Flex CreditsはAIが実行した作業の量に応じて支払う、従量課金のモデルです。顧客は、必要なクレジットをあらかじめ購入し、Workdayが提供するあらゆるエージェントやAI機能に、共通して使えます。既に多くの顧客が使っています。
従来のように、従業員1人当たり、あるいは権利(ライセンス)だけで課金するのではありません。システムが顧客に代わって行った仕事に応じて課金します。顧客にとっては、成果と費用を結び付けやすくなります。私たちにとっても、AIエージェントの利用を把握し、その価値を測る方法になります。
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