SPARC、Solaris、Javaなど、サンを代表するカテゴリーは数多い。Linuxに対し差別化点の強調で攻勢を仕掛けてきたサンは、自社プロダクトの多くをオープンソース化するという大きな賭けに出た。コミュニティの原動力を味方にすべく、SolarisでもJavaと同様なコミュニティプロセス形成を目指す2005年、どのような動向が見られるのか。

 サンにとって2004年は、上期には下降修正が続きレイオフのニュースが飛び交い、同社の行方とJavaそのものがオーバーラップするような見方もあった。しかし、下期にはオープンソース化という商用としてはドラスティックな戦略を発表し、ユーザーからの支持が回復への兆しとも捉えられている。2004年末にはSolaris 10のオープンソース化戦略も発表、JavaだけでなくOSでもコミュニティ相乗に期待する構えだ。SolarisでもJavaのようなベンダー参入が期待できるのか。その成果が2005年から見え始めるだろう。Java相乗による動向を中心に、ミラー氏に聞いた。

Javaは利益あるベンダーが増えたことに喜びを感じる

ITmedia 2004年、サンを取り巻く業界事情をどのように見ましたか。

ミラー 2004年も引き続きIT業界は全体的に厳しい経済状況だったと感じます。ITへのシステム投資は1%の伸びというデータがあります。このような経済状況下では、企業内の情報システム管理者は相当なプレッシャーを感じていることでしょう。ITシステムについて見直しを行う姿勢は、引き続き崩すことができません。

 しかし、不安定な経済情勢でもサンは一貫したものを持ち続けてきました。重要な点は2つであり、「革新」と「コミュニティ重視」です。そして、この2つの戦略から実現できたものが「Java」だと言えます。現在では、Javaこそが革新的だという意見が多いのも事実です。開発者数は世界中で約400万人、そしてデバイス数は約17億という状況です。

 Javaとサンの関係で注目してほしい点は、1995年以来、長期的な研究開発に注力してきたからこそJavaが成功していることです。発表当時はPC向けという業界からの見方でしたが、サンはコミュニティに向けたものという点を貫いてきました。そして、革新が加わったことこそが現在のように活性化した所以だと考えています。

ITmedia 2004年のJavaは、サンの見方として健全な歩みだったということですか。

ミラー Javaの登場以来、最も大きな変革があった年だったと感じています。振り返ってみると、Javaにとってグローバルなデバイス数が増え、J2EEにおけるJCPの標準化も進み、報われる年でした。特に喜ばしく感じるのは、Javaによって利益を得るベンダーが増えていることです。数百社にも上り、パーソナルベースでは何千もの規模でJavaに関わるプロダクトが世界中にあふれています。そしてJavaそのもののコントロールはサンだけではなく、多くの影響を受けていることも相乗でしょう。サンがJavaへ与える影響力は、マイノリティでさえあります。

 事例として挙げるとすれば、国内の通信業界においては、インフラでJavaの依存度が高くなり、その恩恵を受けているとも言えます。NTTドコモ、ボーダフォン、au(KDDI)などの通信ベンダーを見ていると、コスト削減が急務でありながら、サポートや新たなサービス展開も重要な課題だという状況にあります。一般消費者は、料金プランが安価になるなどの恩恵として受けられているでしょう。しかし、日本のキャリアはコスト削減や低価格実現だけではなく、次世代型のサービスを模索していかなければならないと理解しているはずです。その場合には、新サービスでオープンスタンダードがキーポイントであることは、もはや疑う余地がありません。

ITmedia サービス指向のひとつとしてSOAをどのように捉えていますか。

ミラー ネットワーク、ソリューション、インフラへの需要が高まってきているように感じます。相互接続性が重要視されてきていることが明らかです。

 今後の動向を見るうえで、IBMのPC部門売却もとても興味深く感じました。PCが5〜10年後も重要だと考えていれば、IBMは売却をしなかったでしょう。PCベンダーの多くが恐竜のように巨大化し過ぎてしまったという感があります。

Solarisへの協調理由をどこから得るのか

ITmedia サンとして、Sun Ray、RFIDなど柱はほかにも多々ありますが、2005年の幕開けからSolaris 10への取り組みがサンにとって大きなことだと思います。しかし、Linux開発コミュニティのように多くからの理解が得られるのでしょうか。

ミラー さまざまな計画があります。見解として話しておきたいのは、大変興味深いと感じているものとして、LinuxコミュニティとJavaコミュニティは似ている面はあるものの、実は大きく異なっているということです。まず最初に言えることは、Linuxコミュニティは、従来からのUnixコミュニティの延長線ということです。つまりSolarisが形成するコミュニティとマージする面が大きいということです。サンは、これまでもLinuxにソースコードでの貢献をしてきました。そして、Solaris 10ではLinuxの実行環境も用意することが大きなアドバンテージでもあります。

 そしてもうひとつ見逃してはならない点としては、エンタープライズ利用において、コミュニティのコア部がRed HatやNovellなどのディストリビューションと異なっている点です。例えば、通信業者が基幹にLinuxを採用したいと考えた場合、大きな問題点(課題)があります。それは、Linuxディストリビューションのサービス提供元として、コード利用が法的に合法であることが保証されるのか? ということです。


Javaの成功はSoalrisでも実現できるはず。コミュニティプロセスの相乗を語るダン・ミラー氏

 オープンソースソフトウェア(OSS)は、自由に利用可能という面がクローズアップされがちですが、そのコード内に何らかの知的所有権が紛れ込んでいたとしたら、法的に訴訟を受ける危険性があります。そして、自らが持つ知的所有権侵害の回収先はコミュニティではなく、企業を対象としてくることが事例からも明らかです。企業の多くは、Red HatやNovellに対し保護要求をしています。しかし、ディストリビュータは仕組み(立場)上保証することが難しいわけです。

 一方で、Solarisであればサンが100%保証することができます。そしてその背景には、今後オープンソース化を行いコミュニティ形成するとしても、Javaと同じように最終的なコード反映には保証に値する品質を保つ努力をしていくことを表明します。

 Linuxコミュニティの開発形態はうまく機能しているといえます。自由に開発環境をダウンロードして参加ができます。しかし、この形態はJavaも同じです。さらに、基幹業務に利用する場合にはセキュリティ面も大きな点です。これに対しても優先度高で保証することができます。このようにトータルな保証をすることで、システム管理者からの観点としてもコスト削減につながるはずです。最適化、調和して動作することの強みがあるわけです。

ITmedia SoalrisでもJCPのようなコミュニティプロセスを作り上げていくような予定があるのですか。

ミラー 1〜2月くらいに発表を行う予定です。2004年12月の時点でも、Solaris 10のプレリリースやアーリーアクセスのダウンロード数は、毎月伸び続けています。需要は確実に高いと確信しています。12月には教育、研究開発に関わるカンファレンスを開催したのですが、その場での興味の中心はオープンソースSolarisでした。

 唯一の苦情は、何でもっと早く始めなかったのか? という意見でした。従来バージョンでも大学、教育機関でのSolarisを通したやり取りは活発でしたが、すでにコミュニティ形成についても話し合いをしています。

2004年の四半期にはやるべきことがたくさんありました。年末までは仕事づくしですが、以降は家族と親戚がいるカリフォルニアで過ごすことになると思います。

[ITmedia]

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