サンがSolaris 10を無償提供、ユーティリティーコンピューティングを加速

サンはSolarisを無償化とオープンソース化を発表した。狙いはLinuxに奪われた失地を回復するのにとどまらず、水道や電気のようなユーティリティーコンピューティングを視野に入れたものだ。

» 2004年11月30日 16時58分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 「LinuxはSolarisの敵ではない、Powerプロセッサもやがて消え去る」── サンから久々に威勢のいいコメントが飛び出した。

 サン・マイクロシステムズは11月30日、「Solaris 10」を国内でも正式発表し、1月31日から無償でダウンロード提供することを明らかにした。米国でも今月中旬、四半期ごとに開催されているNetwork Computingカンファレンスで発表されたばかり。ユーティリティーコンピューティングへと市場を動かしたい同社が、そのための基盤たり得るOSとして、安定性や管理性、セキュリティ、そしてパフォーマンスを追求した2年ぶりのメジャーアップグレードだ。

 「われわれはここ数年、かつてないほど研究開発に投資を行い、力を蓄えてきた」と日本法人のダン・ミラー社長は話す。

ミラー社長(左)と営業を統括する末次朝彦専務

 年間延べ3000人の開発者と5億ドルの研究開発費を投じられたSolaris 10は、システムの自己修復機能や、運用中でもパフォーマンスのボトルネックを容易に発見できるダイナミックトレース機能、ソフトウェアパーテショニングによってシステムリソースの使用率を最大80%まで改善できるSolarisコンテナ機能など、新機能がふんだんに盛り込まれた。また、従来は別製品だったTrusted Solarisを統合し、外部から侵入するウイルスなどへの防御機能も強化されている。

 これらはどれも次世代のユーティリティーコンピューティングを睨んだもの。同社は9月、1時間99セントで使った分だけ支払えばいい「Utility Computing for Grid」サービスを発表したばかりだ。ニューヨークでの記者発表会でジョナサン・シュワルツ社長兼COOは、Linuxに奪われたウォール街の顧客を取り戻すべく、一連の製品やサービスによってSolarisがLinuxよりも優れた性能とシステム管理機能を提供できることを証明していくと話している。

 国内でもCSKNTTデータとユーティリティーコンピューティング分野で相次いで提携を発表している。特に後者のケースでは、ファイナンスプログラムを利用した擬似的な形態ではあるものの、ユーティリティーモデルによってNTTデータに機器を提供する新しい取り組みだ。

 「初期コストを大幅に引き下げることによって、ユーティリティーコンピューティング事業に参入したいサービスプロバイダーらを後押ししたい」と営業統括本部長の末次朝彦専務は話す。

無償化、オープンソース化と矢継ぎ早

 Solaris 10は、SPARCとx86系を軸に270種類以上のハードウェアで動作する。x86系ではAMD64およびEM64Tという64ビットプロセッサにも対応を広げた。「いずれPowerプロセッサは消え去る」(末次氏)という読みから、「マルチベンダー対応OS」をうたう。

 ハードウェアやストレージと同じように使用量に応じたユーティリティーモデルの料金体系を模索した結果、使用権はその目的にかかわらず無償とし、サポートをCPU当たりの年額で提供する。サポートのレベルに応じて価格は異なるが、1万4400円から4万3200円(税別)と、Red Hatなどとは比較にならないほど低く抑えた。

 ミラー氏は、「そもそも企業のバックエンド領域においてLinuxはSolarisの敵ではない。Solaris 10でLinuxアプリをそのまま実行できるようにし、さらにオープンソース化することによってエッジでも最良の選択となる」と自信を示す。

 記者からオープンソース化に際して採用するモデルを問われ、「まだ決まっていない」としたものの、Java Community Process(JCP)をつくったときの経験を生かすとミラー氏は話した。

 「JavaではJ2EEからJ2MEまで幅広く開発が進んだ。これと似たことがSolarisでも期待できる」とし、組み込み市場向けのスケールダウン版が登場することへの期待感も示した。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ