SunのマクニーリーCEO、カナダでも吠える

「リーナス・トーバルズのおむつが取れる前に、われわれはバークレー版UNIXに対してRed Hatのような立場にあった」――Sunのマクニーリー氏はカナダの会合でオープンソースへの貢献を主張した。(IDG)

» 2004年11月12日 20時31分 公開
[IDG Japan]
IDG

 米Sun Microsystemsの会長兼CEO(最高経営責任者)スコット・マクニーリー氏は先週、カナダのマスコミとの会合で、オープンソースに関する同社の実績を擁護した。

 11月5日のトロントでの会合に顧客とマスコミを招いたマクニーリー氏は、Sunが最新版Solarisをオープンソース開発者に公開するよう圧力をかけられているとの意見に怒りを見せた。

 「圧力だって? 世間の人たちが世界がどう動いていると思っているのかは興味深い。私は公職選挙に立候補した政治家のようなものだ。絶対的な法の問題がある」と同氏は語り、SunはSolarisをオープンソース化する前に、同OSからプロプライエタリなコードを取り除かなくてはならないと指摘した。

 同社は15日にSolaris 10を発表する予定だ。オープンソースで提供されるSolarisの最初の例となる。このOSでは「Dynamic Tracing(DTrace)」と呼ばれる技術が目玉になる。DTraceは、管理者がプラットフォームを調整して最大パフォーマンスを実現するための手段だ。また同OSは、アプリケーションを隔離してさらに性能を向上させる「コンテナ」や、新しいTCP/IPスタックも備える。このスタックは、効率的な通信処理を行うとSunは説明している。

 マクニーリー氏は、Solaris 10は、Sunの長期にわたるオープンソースコミュニティーへの貢献における最新の動きにすぎないと語った。

 「われわれはオープンソースコミュニティーに世界で一番コードを寄贈している」とマクニーリー氏。「われわれが圧力を受ける必要があると言うのは――われわれはオープンソースを生んだのだよ、皆さん――それはちょっとアル・ゴア的だ。オープンソースコードの一番の寄贈者は(カリフォルニア大学)バークレー校だ。そのすべてのコードの出所を知っているかね? (元Sunの主任科学者)ビル・ジョイは、バークレー校在籍中にBSDライセンスでオープンソースを生み出した。リーナス・トーバルズのおむつが取れる前に、われわれはバークレー版UNIXに対してRed Hatのような立場にあったわけだ」

 同氏はまた、OSの運用コストの高さについてIBMを非難した。SunはSolaris 10をCPU 1個当たり1時間1ドルで提供でき、顧客は同プラットフォームに60分間アクセスするのに、1ドル払うだけで済むと主張した。

 「IBMには30万人の社員がおり、彼らはそれをさらに増やしている」と同氏は語り、なぜIBMがSunの基準に対抗できないと思うのかを説明した。「IBMのCPU・時間当たりの料金はどこにあるのか? 彼らにはそうした課金ができないのだ。彼らが年金方式にすると、CPU・時間当たりがコストは1ドルを超えるからだ」

 マクニーリー氏は、SunはSolarisのコンテナをアプリケーションサービスプロバイダー(ASP)モデルで提供すると話した。このモデルでは、データセンターを介してOSパッケージを提供し、企業はオンラインでコンテナにアクセスする。

 このデータセンターは「N1」環境で動く。N1はSunのサーバロードバランシング・仮想化モデルで、サーバの利用率改善を目的としている。業界アナリストは、ほとんどのサーバはキャパシティの15%しか使っていないと指摘してきた。N1環境のサーバは80%の利用率を達成できるとSunは主張する。

 マクニーリー氏は、ASP Solarisモデルは一時的なものであり、Bell CanadaやTelus Corp.などのサービス会社を説得して独自のN1データセンターを構築させ、Solarisコンテナを提供させるために「市場を刺激する」手段にすぎないとしている。これまでのところ、Sunと契約したカナダのサービス会社はない。

 「われわれはとうとう『なにくそ、やってやる』と言った」と同氏は語り、SunはCanuck telcosとN1-Solarisによりオンラインに移行する計画についてCanuck telcosと話し合っていると言い添えた。

 Sunの目的は、最前線のITプロバイダーよりもバックグラウンドオペレータになることだとマクニーリー氏は語り、Sunの将来を特定の機器メーカーのビジネスのやり方にたとえた。「スイッチ環境としてNortelやAlcatelを選ぶ人はいない。ただ契約するだけで、バックエンドで何が動いているかは知らないのだ」

 Sunは最近、幾つかの問題に直面した。4月には1〜3月期に7億6000万ドルの赤字を出したことを報告した。3500人の人員を削減し、ローエンドサーバ担当の執行副社長ネイル・ノックス氏、ハイエンドサーバ担当執行副社長クラーク・マスター氏、戦略・マーケティング最高責任者マーク・トリバー氏を追放した。

 4〜6月期には事態が改善し、Sunは7億9500万ドルの黒字となったが、10月にの7〜9月期決算発表では1億7400万ドルの赤字を報告した(10月15日の記事参照)

 マクニーリー氏は直近の業績を前向きに解釈して、Sunには銀行に74億ドルの金があり、7〜9月期はEastman Kodakとの訴訟の和解金9200万ドルなどの特別費用がなければ黒字だっただろうと指摘した。

 「Sunは順調にやっている。この数四半期の間成長しており、過去2四半期連続で業績が伸びた。とてもいい感じだ。そう言えるようになるまでにはしばらく時間がかかった。売上高の拡大は、コストを削減しようとするよりも簡単に問題を解決してくれる」(同氏)

Copyright(C) IDG Japan, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ