Linuxへの“敵意と配慮”入り交じる、Solaris 10発表イベント(1/2 ページ)

オープンソース版のSolarisを1月末までにリリースし、「オープンソースベンダー」として売り込みをかけるSun。だが過去の経緯から、懐疑的なデベロッパーも多い。(IDG)

» 2004年11月17日 19時36分 公開
[IDG Japan]
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 米Sun Microsystemsの幹部らは、Solarisの2年以上ぶりのメジャーアップグレードを発表した11月15日のローンチイベントで、人気が高まるLinuxに、Sunがどう応じていくかの概略も示した。SunのLinux対策の鍵は、新たな年間契約制の下、Solarisをオープンソースライセンスで提供するという計画と、LinuxベンダーのRed HatやNovellが提供しているようなソフト更新システムを採用するという点だ。

 Sunの幹部らによると、オープンソース版のSolarisに同社が採用するソフトライセンスの種類はまだ決まっていない。だがSunは、45〜60日以内には発表するとしている。同社は、Solarisのソースコードをリリースするのに加え、そのバイナリ版を、来年1月までに無償リリースする計画だ。ソースコードは、マシンリーダブルなバイナリコードに変換して初めて利用可能となる。

 4プロセッサ以下のシステムの場合、Solarisの収益は、年間契約料から上がる仕組みとなる。年間契約料は、サポートのレベルに応じて1プロセッサ当たり120〜360ドル。また「Sun Update Connection」という、年間契約したSolarisユーザー向けのソフト自動更新システムも、1月に利用可能になる見通し。2005年末までには、ユーザーがSolarisのアップデートを作成してプロキシサーバ経由で配布できる更新システムも提供するという。

 プロセッサ数が4個を超えるシステムでのSolaris 10の料金体系は、まだ決まっていない。

 自らをオープンソースベンダーとして売り込もうというSunの試みに対し、多くのデベロッパーは懐疑的だ。それは一つには、SunがこれまでLinuxに対する敵意を示してきたため。Sun幹部らは15日のイベントでも、Linuxを軽視しながら、同時にLinuxとの相互運用性を約束するという、いつもながらの態度だった。

 Sunは1月に予定されているSolaris 10の最初のリリースで、標準Linuxコンパイラ「GNU(GNU's Not Unix)C Compiler」のSolaris版をサポートする。また2005年のその後のリリースに、Linuxブートローダ「GNU GRUB(Grand Unified Boot Loader)」のSolaris版を追加する。同ブートローダにより、x86マシン上でのSolarisのブートプロセスが高速化される。同社はまた、Janusという、LinuxアプリケーションをSolaris上でそのまま動かせるようにする技術を準備中だ。

 Sunの社長兼COO、ジョナサン・シュワルツ氏によれば、LinuxからSolarisへのアプリケーションの移行を容易にするため、Sunは近々SolarisがLinux Standard Base(LSB)に準拠していると発表する予定だ。LSBはもともとは、特定のLinuxディストリビューション用に書かれたアプリケーションが、別のLinuxディストリビューションでも実行可能になるようにと設計された仕様。「Red Hat用に書かれたアプリケーションを、当社の環境に、とても簡単に移すことができる」とシュワルツ氏は語った。

 15日のイベントでは、Linuxとの相互運用性がうたわれる一方で、オープンソース批判も展開された。ハードメーカー各社は彼らが提供したコードが、Linuxカーネルに採用されるために必要な承認を得られないことにいらだっている――とシュワルツ氏は指摘した。

 シュワルツ氏によると、Sunは、Java Community Process(JCP)をつくったときの経験を基に、オープンソース版Solarisの採用モデルを選ぶという。JCPは、Javaプラットフォームの標準化と開発促進のために設置された機関。「Linuxのコミュニティーモデルの方が、現状、はるかに自由度は高いが、そこには道が1本しかない」とシュワルツ氏。Linuxカーネルプロジェクトの創始者であるリーナス・トーバルス氏が、Linuxカーネルにどのソフトを追加すべきかの最終権限を握っていることを指しての発言だ。「両方の世界の良いところを合体させることが課題だ」とシュワルツ氏は語った。

 同氏は、Red HatのOpen Source Assuranceプログラムにも批判的だ。これは、Linuxソースコードをめぐって知的財産権(IP)論争が起きた場合にRed Hatの顧客を保護するというプログラム。「Red Hatのやっていることといったら、製品を出荷しておきながら、『IP訴訟回避の保証はありません』と言っているようなものだ」と同氏。Sunの場合は、各種のソフト特許とクロスライセンス契約を有しており、これを、オープンソース版Solarisのユーザーを守る目的で利用できるという。

 「当社はオープンソースを安全なものにする計画だ。それがRed Hatに対する競争上の優位性になると思うかって? もちろんだ」(シュワルツ氏)

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