ストレージ関連からITインフラ全体を管理するソフトウェア企業へ、変貌と遂げようとしてきたベリタス。一貫して、ITインフラが柔軟になることの重要性を訴えてきた。12月半ばにセキュリティソフトの大手シマンテックとの合併が決まったばかりだが、同社の技術は、今後もITインフラに柔軟性をもたらすための重要コンポーネントとして、新会社に引き継がれる。
ITmedia ビジネスに対してITインフラは柔軟でなければ、と訴えてきました。2004年は浸透を感じていますか?
木村 日本のITの役割が少しずつ変わってきていると感じます。日本は保守性の強い国民性もありますから、いままで作ってきたITインフラをこのまま使っていこうと考えているところが多くありました。つまり、組織ごとに作られるITシステムという意味合いが非常に強かったわけです。しかし、いまの体制を基にして作ったシステムでは、ダイナミックでグローバルな世界の中で戦うことは難しくなります。企業はこのことに皮膚感覚で気づき始めてきたと感じています。
組織はダイナミックに変わり、経営の動きも激しく変化しています。その中では、われわれの得意としている分野、ストレージハードウェアやOSが混合しているシステムをまとめ上げていくことの役割が大きくなってきています。
一般的に日本は、欧米に比べて2、3年遅れているといわれます。確かにその通りだと思いますが、技術的にはそんなに遅れていません。ただ、いまの組織を守ろうとか、いまの仕組みを守ろうとか、ITそのものを丸投げしてしまおう、という体勢が強すぎました。ここにきて、こういった考え方だけでは戦えないということが分かってきたようです。
そのような流れに伴って、今年はわれわれのソリューションが登場した年になりました。12月の発表でプロビジョニング製品もそろい、自動化、プロビジョニング、ストレージの管理、アベイラビリティに至るまで、ソリューションをすべて出すことができました。
勝ち組み、負け組みという言葉をあまり使いたくはないのですが、IT業界の中でも伸びている企業は社内のITシステムを質的に変化させています。自社のITそのものを武器にし、ビジネスモデルとしている企業も出始めています。この辺が本格的に動いてくれば、まだ元気のないといわれる日本も元気になっていくんだろうなと思います。また、そうならなければなりません。
柔軟なITインフラへ向けて、一歩一歩
ITmedia 国民性もそうですが、日本企業はこれで10年近くの不景気を乗り越えているわけで、変わりきれないところもあるのかもしれません。
木村 変わるか、変わらないかの判断の問題ではありません。グローバルの波はいやおうなしにやってきています。規模をきちっとマネージできなければ、ビジネスは難しくなってきていますし、インターネットが世界の距離を大きく縮めました。むしろ国内を前提して動くことの方が少なくなっています。
スピードの問題もあります。これをしっかり管理することも大切です。いろいろな組織が将来にわたって、すべてそれで良いということはありません。企業をまたがった連携なども頻繁になってきます。このような環境では、望むと望まないに関わらず、対応を迫られます。ここで一歩でも二歩でも先に出れば、その企業はコアのビジネスに集中できるようになれるのです。
しかし、いまのシステムをばっさりあきらめて、また作り直すわけにはいきません。われわれのソリューションが使われ始めてきているのには理由があります。柔軟なITインフラへ向かって、一歩一歩近づけるからなわけです。例えば、いま使っているSolarisとLinuxをつなぐなど、バラバラだったものを一つのものとして管理できます。こういったことが、業務プロセスの改革を加速していくことになるのです。
プロセスの改革というのは、日本が遅れている部分だと思います。いかにプロセスをシンプルにして、プロセスを経営の要求に合うように変えていく、そういう企業文化や動きが求められています。それでなければ、日本の経済はこれ以上、成長しないんじゃいでしょうか。
ITインフラと日本独自の長所を結びつける
ITmedia 欧米には、実際にそこまで到達している企業が多いのでしょうか?
木村 業種業態によると思います。また、ビジネスそのものの強みに関しても実力値はさまざまですから、一概には言えません。しかし、ITがサポートすることで、コアのビジネスを生かす能力は米国が強いところでしょう。全体の仕組みを、ITの力で合理的にゴールへ向かわせることはうまいと思いますね。
ITを合理的に使うためには、メインフレームに囲い込まれてはいけない。オープンな世界が牽引してくのですと木村氏
とはいっても、日本にもいいところはいっぱいあるわけです。製造業の技術もそうですし、特に日本のチーミングの強さは目を見張るものがあります。一度、コンセンサスをとったら、ものすごい力で一丸となって動いていきます。日本はこの部分を生かしていかなければなりません。私が強く思うのは、こういった力を生かすために、ITがしっかりサポートしなければ、ということです。
日本のITの仕組みは、組織ごとのITを新しいビジネスモデルに無理やり対応させているのですから、本当の意味で合理的になっているとはいえません。一部を除けば、このようなことを行えている日本企業はまだこれからのところが多いと思います。お話した日本人の潜在的なチーミング能力からすると、本当に欧米のようにITを合理的に動かせれば、もっともっと経済は活性化していいはずです。それだけのファンダメンタルな能力を日本人は備えています。そこはベリタスにとっても大きな課題で、プロモーションしていかないといけませんね。
ITmedia 2005年、注目している分野はありますか?
木村 グローバルな流れの中で、日本にもコンプライアンス(法令順守)の動きというのが強まってくると思います。米国では、バブルの崩壊といわれているときに、さまざまな不幸な問題が起こりました。そのため、先駆けて動いているわけですが、この分野には規模の問題やスピードの問題が大きく集約されてきます。
コンプライアンスというのは、リスク管理という大きな流れの一部なのですが、ストレージのアーカイビングをはじめする技術が強く求められてきます。IT業界だけの問題ではありませんが、IT業界が大きな役割を果たしていける分野でもあります。
入り口はセキュリティ機能で守り、長期保管はストレージの分野になります。しかし、ここでも重要なのは、データの流れ全体を管理していくことです。言い換えれば、全体の管理なしにコンプライアンスにたどりつくことはできないのです。全体のデータの価値は、時間とともに変化します。そういう点で、入り口の単なるセキュリティや、保管しておくための単なるストレージという個別の動きに終わるのでなく、IT全体の動きが必要です。この部分で、われわれのソリューションを強めていかなければいけないと考えています。
今年も元旦は、母校の浦和高校で剣道の初稽古です。この予定だけは毎年変わってないですね。ほかには、ゴルフもしなければならないです。根は体育会系なんですよ。実は、先日もフルマラソンに参加してきました。
[ITmedia]