クラウド化したLotusで未開拓市場を掘り起こすIBM:Lotus Spring Forum 2009 レポート
Lotusの機能をネットワーク経由で提供する「LotusLive」をぶち上げたIBMは、2009年の中旬以降に同サービスを国内でも提供する。LotusLiveは、IBMがこれまで開拓しきれていなかった中小規模の企業を取り込む可能性がある。
「いよいよLotusもSaaS(サービスとしてのソフトウェア)の分野に本格的に商品を投入する」――。3月4日に日本IBMが開催したイベント「Lotus Spring Forum 2009」の基調講演で、Lotus事業部の澤田千尋事業部長はこう宣言した。米IBMが打ち出したコラボレーション機能を統合したクラウド型サービス「LotusLive」を紹介し、新規顧客開拓のエンジンにする考えを明らかにした。
IBMは、電子メールやWeb会議、インスタントメッセージングなど、業務の効率化につながる機能を提供するソフトウェア「Lotus」を販売している。これはユーザー企業がLotusを導入して運用する「自社保有(オンプレミス)型」のモデルで、ライセンスの契約や運用・保守サービスが利益になっている。
Lotusの売り込みで同社が得意としてきた対象は、従業員規模が5000人を超える大規模の企業だ。これらの企業は景気の悪化に伴うコスト削減の要請が求められている中、ライセンスの取得数を見直したり、M&A(企業の吸収・合併)で分散状態にあるコミュニケーション基盤を統合したりする動きが出ている。これがLotus事業の収益アップの下支えをしているという。
Lotus事業に磨きをかけ、さらなる利益を拡大するために、IBMが新たに狙うのは「新規市場」と位置付ける中小規模の企業だ。国内におけるグループウェア市場はサイボウズなどの国産ベンダーが好調。そこに割って入り、シェアを獲得していくことが求められている。
ここでSaaSが鍵になる。具体的には米IBMが1月19日に発表したLotusLiveというサービスだ。これはLotusの機能であるWeb会議やソーシャルネットワーク、電子メールをネットワーク経由で提供するもの。LotusLiveを構成するソフトウェア機能の柱になるのは、録画再生や投票機能を有する「LotusLive Meeting」、アンケート調査やライブチャットなどの機能が付いた「LotusLive Engage」、電子メールが使える「LotusLive Notes」だ。
米国では既にLotusLiveの一部を提供しているが、日本での展開は「2009年の中旬以降に開始する予定」(澤田氏)。国内の企業がLotusの機能をSaaSとして使えるようになるのは、もう少し先の話になる。澤田氏は「大規模な企業では既存のシステムを最適化したほうが業務効率の改善につながる場合もある。逆に、早くシステムを導入したい場合はSaaSが向いている」と述べ、これまでリーチできていなかった中小規模の企業の開拓に期待を寄せていた。
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