富士通、SaaS事業を強化 4年で3000億円狙う:「プライベートSaaS」を訴求
富士通はSaaS事業を強化する。柱となるのは、顧客が特定の範囲でSaaSを使えるようにする「プライベートSaaS」への取り組みと、業務アプリケーションの拡充だ。
富士通は4月23日、業務アプリケーションをネットワーク経由で提供するSaaS(サービスとしてのソフトウェア)事業を強化すると発表した。企業特有の業務に特化した業務アプリケーションを開発し、グループ企業や取引先、海外拠点などで活用できるようにする。業種や業務に特化したSaaSのラインアップも拡充し、関連する事業において今後4年間で約3000億円の売り上げを目指す。
SaaS事業の強化として富士通が注力するのは、顧客企業ごとに独自の業務アプリケーションや業務システムを開発、構築するシステムインテグレーション事業。同社が提供するサービス基盤「SaaSプラットフォーム」を使い、独自の業務アプリケーションを開発したり、SOA(サービス指向アーキテクチャ)に基づき、既存システムの連携を図ったりする。
サービス基盤上で開発した業務アプリケーションは、SaaSとして利用できる。グループ会社や取引先、代理店など、利用者を限定してSaaSを活用するといった用途を想定している。「情報系アプリケーションの開発や基幹システムとの連携が柱だが、顧客の要望に応じてミッションクリティカルな業務システムの構築も手掛ける」(富士通広報)としている。
これまでに提供していた業務アプリケーションの拡充も図った。新たに、保健指導業務や電子申請など業界に特化したSaaS、問い合わせ対応や営業の商談管理などの機能を提供するSaaSなど、計11種を追加。2009年度上半期までに順次提供する。
また、グループ企業やパートナー企業のSaaSを掲載した「富士通SaaSポータル」を開設したほか、関連する開発要員を1000人育成するなど、SaaS事業の足場固めを進める。
富士通は、既存のSaaSを適用できない大規模企業の業務を独自のSaaSとして再構築し、特定の範囲で使えるようにする取り組みを「プライベートSaaS」と呼んでいる。既存のシステムインテグレーション事業の強化とSaaSのラインアップの拡充を狙い、SaaS関連の事業において今後4年間で約3000億円の売り上げを目指す。
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